4.4. 誤り検出・訂正

1. 概要

 「誤り検出・訂正」は、データ通信において非常に重要な役割を果たす技術です。データがネットワークを通じて送信される際、様々な理由でビットの反転やエラーが発生する可能性があります。これにより、送信された情報が受信側で正確に復元できない場合があります。誤り検出・訂正技術は、このようなエラーを検出し、必要に応じて訂正するために設計されています。信頼性の高いデータ通信を実現するため、これらの技術は不可欠です。偶数パリティや奇数パリティ、CRC、ハミング符号、ECC(誤り訂正コード)、チェックサムなどの手法が代表的です。

2. 詳細説明

2.1. パリティチェック

 パリティチェックは、最も基本的な誤り検出の手法の一つです。パリティとは、データビットに付加される1ビットの付加情報で、偶数パリティと奇数パリティの2種類があります。偶数パリティでは、1のビットの総数が偶数になるようにパリティビットを設定します。奇数パリティでは、1のビットの総数が奇数になるようにします。これにより、1ビットのエラーが発生した場合、そのエラーを検出することができます。

2.2. CRC(Cyclic Redundancy Check)

 CRCは、ブロックデータの誤り検出に広く使用される技術です。送信側では、データブロックに対して特定の生成多項式を用いてCRCコードを計算し、データに付加します。受信側では、受信したデータに同じ多項式を適用し、計算結果がゼロでない場合、誤りが検出されたと判断します。CRCは、単純なパリティチェックよりも強力な誤り検出能力を持ちますが、訂正機能は持ちません。

2.3. ハミング符号

 ハミング符号は、エラーを検出するだけでなく、訂正する能力も持つコードです。基本的なハミング符号では、各データビットに複数のパリティビットを追加し、これによりエラーの位置を特定します。1ビットのエラーであれば、その位置を特定して訂正が可能です。ハミング符号は、データ通信やメモリ保護など、多くのシステムで使用されています。

2.4. ECC(誤り訂正コード)

 ECCは、複数ビットのエラーを検出し、訂正できる高度な誤り訂正技術です。ハミング符号の拡張として考えられることが多く、特にメモリシステムで使用されます。ECCを使用することで、データの信頼性が大幅に向上し、データ破損のリスクを最小限に抑えることができます。

2.5. チェックサム

 チェックサムは、データの誤りを検出するための簡単な手法です。データブロックの全てのビットを加算し、その結果の一部(通常は下位ビット)をチェックサムとして保持します。受信側で同じ計算を行い、送信側と一致しない場合、誤りが発生したと判断されます。チェックサムは、特にファイル転送やパケット通信などで使用されますが、複数ビットのエラーに対しては十分な検出能力を持ちません。

3. 応用例

 誤り検出・訂正技術は、さまざまな分野で広く応用されています。たとえば、インターネット通信におけるデータパケットの送受信や、ディジタル記録メディアのデータ保護、宇宙探査機からのデータ送信などが挙げられます。

  • インターネット通信: TCP/IPプロトコルでは、データパケットの一部にチェックサムを使用してデータの整合性を確認します。エラーが検出されると、パケットが再送信されます。
  • ディジタルメモリ: ECCは、コンピュータのメモリ(特にサーバー向け)で使用され、メモリビットの反転によるデータ破損を自動的に検出・訂正します。
  • 宇宙通信: 宇宙探査機が地球にデータを送信する際、エラーが発生しやすい環境下で信頼性を確保するため、ハミング符号や他の高度なECC技術が使用されます。

4. 例題

例題1: 偶数パリティを使用して、以下の8ビットデータにパリティビットを追加してください。

  • データ: 10110010

回答例: 偶数パリティでは、1の数が偶数になるようにパリティビットを追加します。この場合、1の数は4つ(偶数)なので、パリティビットは0になります。よって、パリティビットを含めたデータは 101100100 です。


例題2: 次のデータに対してCRCを計算する生成多項式が x^3 + x + 1 の場合、CRCコードを求めてください。

  • データ: 1101

回答例: 生成多項式を使用して、データビットにCRCコードを付加します。計算過程を省略して得られるCRCコードは 100 です。よって、送信するデータは 1101100 となります。


例題3: ハミング符号を使って以下の4ビットデータを符号化してください。また、符号化後のデータの2ビット目がエラーになったと仮定して、エラーを訂正してください。

  • データ: 1011

回答例: ハミング符号を計算すると、符号化後のデータは 1011010 になります。2ビット目にエラーがある場合、エラー訂正の結果は 1111010 となりますが、正しいデータは 1011010 です。

5. まとめ

 誤り検出・訂正技術は、信頼性の高いデータ通信を実現するための基本的かつ重要な技術です。パリティチェック、CRC、ハミング符号、ECC、チェックサムなど、さまざまな手法が存在し、それぞれ異なる用途や環境で使用されています。これらの技術を理解し、適切に応用することで、システム全体の信頼性とデータの保全性を大幅に向上させることが可能です。