2.1.1. 画面設計

1. 概要

 画面設計は、ソフトウェア開発においてユーザーインターフェースを構築する重要な過程です。適切な画面設計により、ユーザーの操作性を向上させ、業務効率を高めるだけでなく、エラーレートの低減や操作時間の短縮を通じてシステム全体の品質と信頼性にも大きく貢献します。本記事では、画面設計の考え方、手順、手法、および代表的な入力チェックの方法について解説します。また、入出力項目とデータベースの対応、入出力項目の処理の対応についても理解を深めていきます。

2. 詳細説明

2.1. 画面設計の考え方

 画面設計では、以下の点を考慮することが重要です:

  1. 画面構成:情報を効果的に配置し、ユーザーが直感的に操作できるレイアウトを設計します。例えば、重要な情報は目立つ位置に配置し、操作ボタンは一貫性のあるデザインで配置します。
  2. 情報の検索:必要な情報に素早くアクセスできるよう、検索機能や階層構造を適切に設計します。例として、ECサイトの検索バーを常に上部に配置することで、ユーザーが簡単に商品を探せるようにします。
  3. 情報の関係性:関連する情報を適切にグループ化し、ユーザーの理解を促進します。例えば、ユーザーの購買履歴と関連商品の提案を一緒に表示することで、追加購入の可能性を高めます。
  4. 利用者の用語:ユーザーが理解しやすい用語を使用し、専門用語は必要に応じて説明を付けます。例えば、「ログイン」ボタンではなく「サインイン」と表示する場合、必要に応じてその違いを説明します。

2.2. 画面設計の手順

  1. 要件分析:ユーザーのニーズと業務要件を把握します。例えば、ECサイトでのユーザーの購入プロセスを理解し、どのような情報が必要かを明確にします。
  2. 情報提示ストーリーの作成:ユーザーの作業フローに沿った画面遷移を設計します。例えば、検索から商品詳細、カート、そして購入確認画面までの流れを計画します。
  3. ストーリーボードの作成:各画面の概要をラフスケッチで表現します。例えば、手書きのスケッチや簡単なツールを使って、各画面の構成と要素を視覚化します。
  4. 詳細設計:各画面の詳細なレイアウトと機能を設計します。色、フォント、ボタンの配置、フィードバックメッセージの内容など、具体的な要素を決定します。
  5. プロトタイプ作成:設計した画面をプロトタイプとして実装し、ユーザーフィードバックを得ます。実際の使用感をテストすることで、ユーザーエクスペリエンスを最適化します。
  6. 改善と最終化:フィードバックを基に設計を改善し、最終版を作成します。

2.3. 画面設計の手法

  1. 穴埋め方式:フォームに直接データを入力する方式です。ユーザーが迅速に入力できる利点があります。
  2. メニューインプット方式:選択肢から項目を選ぶ方式で、入力ミスを減らせます。例えば、プルダウンメニューやチェックボックスを使用して、入力内容を制限します。
  3. 部分送信:画面全体ではなく、必要な部分のみを更新する技術で、応答性を向上させます。これにより、データ送信時間が短縮され、ユーザーの待ち時間が減少します。

2.4. 代表的な入力チェックの方法

  1. ニューメリックチェック:数値のみが入力されているかを確認します。例:電話番号や郵便番号の入力。
  2. フォーマットチェック:日付や電話番号などの形式が正しいかを確認します。例:「YYYY/MM/DD」の形式で入力された日付。
  3. リミットチェック:入力値が許容範囲内にあるかを確認します。例:商品の数量が1〜100の範囲内であることをチェック。
  4. 組合せチェック:複数の入力項目間の関係が正しいかを確認します。例:開始日が終了日より前であること。
  5. 照合チェック:入力された値がマスターデータと一致するかを確認します。例:顧客IDがデータベース内に存在するか。
  6. バランスチェック:数値の合計が正しいかを確認します。例:注文合計金額が各商品の合計金額と一致するか。
  7. チェックキャラクター:入力データの正確性を検証するための特殊文字を使用します。例:ISBNコードのチェックディジット。

2.5. 入出力項目とデータベースの対応

 画面の入出力項目とデータベースのフィールドを適切に対応させることで、データの整合性を保ち、効率的なデータ処理が可能になります。例えば、ユーザーが入力した情報をリアルタイムでデータベースに保存し、後で利用する際のエラーを最小限に抑えます。

2.6. 入出力項目の処理の対応

 各入出力項目に対して、適切な処理(バリデーション、変換、計算など)を対応させることで、システムの信頼性と機能性を向上させます。例えば、ユーザーの入力内容を正確に確認した後でしか次の処理に進まないようにすることで、エラーの発生を防ぎます。

3. 応用例

  1. ECサイトの商品検索画面:ユーザーが効率的に商品を探せるよう、検索条件や結果表示を最適化します。例えば、検索結果のフィルタリングやソート機能を追加し、ユーザーが簡単に目的の情報にたどり着けるようにします。
  2. 銀行ATMの操作画面:セキュリティと使いやすさを両立させた画面設計で、多様なユーザーに対応します。例えば、視覚障害者向けの音声ガイドや高齢者向けの大きな文字サイズを取り入れます。
  3. 医療情報システム:患者情報を適切に表示し、医療従事者の意思決定をサポートする画面設計を行います。例えば、患者の既往歴やアレルギー情報を一目で確認できるようなインターフェースを設計します。

4. 例題

例題1

問題:フォーマットエラー、論理エラー、シーケンスエラーについて、それぞれ具体例を挙げて説明してください。

回答例:

  1. フォーマットエラー:日付入力で「2024/04/31」と入力した場合。4月は30日までしかないため、フォーマットとして不正です。
  2. 論理エラー:商品の在庫数に「-5」と入力した場合。在庫数がマイナスになることは論理的にありえません。
  3. シーケンスエラー:注文確定前に支払い処理を実行しようとした場合。正しい処理順序に反しているため、シーケンスエラーとなります。

例題2

問題:以下の要件に基づいて、簡単な画面設計の概要を説明してください。
要件:ユーザーが商品を検索し、結果一覧から詳細を確認できる ECサイトの画面

回答例:

  1. 検索画面:
  • キーワード入力欄とカテゴリ選択のドロップダウンを配置
  • 検索ボタンを目立つ位置に

配置

  1. 検索結果一覧画面:
  • 商品名、価格、サムネイル画像を一覧表示
  • ページネーション機能を追加
  • 各商品に「詳細」ボタンを配置
  1. 商品詳細画面:
  • 大きな商品画像
  • 商品名、価格、在庫状況、詳細説明を表示
  • 「カートに追加」ボタンを目立つ位置に配置
  • 関連商品の推奨を下部に表示  この設計では、ユーザーの情報検索を容易にし、商品の関係性を示しながら、直感的な操作が可能な画面構成を実現しています。

5. まとめ

 画面設計は、ユーザビリティとシステムの機能性を橋渡しする重要な役割を担っています。適切な画面構成、情報の検索性、関係性の明示、そしてユーザーに馴染みのある用語の使用が重要です。また、情報提示ストーリーやストーリーボードを活用し、ユーザーの作業フローに沿った設計を行うことが効果的です。

 入力チェックの実装では、様々な方法(ニューメリックチェック、フォーマットチェックなど)を組み合わせて使用し、データの正確性を担保します。さらに、入出力項目とデータベースの適切な対応付けや、各項目に対する適切な処理の実装により、システム全体の品質と信頼性を向上させることができます。

 これらの概念と技術を理解し、実際の開発現場でどのように適用されるかを考察することが重要です。試験の過去問を通じた反復練習や実際のプロジェクトでの適用経験を積むことで、画面設計の基本原則を押さえつつ、より使いやすく効果的なシステムを構築することができるでしょう。