1.1.2. 分散処理システム

1. 概要

 分散処理システムとは、複数のコンピュータを通信ネットワークで接続し、処理機能や負荷を分散させることで全体として一つのシステムとして機能するコンピュータシステムの形態です。このシステムでは、複数のコンピュータがネットワークを介して連携し、データや処理を分散することで、システム全体の効率性、拡張性、信頼性を高めることができます。現代の情報システムにおいて、分散処理システムは基幹技術として重要な役割を担っており、クラウドコンピューティングやマイクロサービスアーキテクチャなど、最新のIT基盤の基礎となっています。特にTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)の削減や、組織の変化に対応するための情報資源の柔軟な配置など、ビジネス面でも大きなメリットをもたらします。

graph TB
    subgraph "分散処理システム"
        A[クライアント] -- "リクエスト" --> LB[ロードバランサー]
        LB -- "負荷分散" --> B[サーバー1]
        LB -- "負荷分散" --> C[サーバー2]
        LB -- "負荷分散" --> D[サーバー3]
        B <--> E[(分散データベース)]
        C <--> E
        D <--> E
    end
    
    style A fill:#f9f,stroke:#333,stroke-width:2px
    style LB fill:#bbf,stroke:#333,stroke-width:2px
    style B fill:#bfb,stroke:#333,stroke-width:2px
    style C fill:#bfb,stroke:#333,stroke-width:2px
    style D fill:#bfb,stroke:#333,stroke-width:2px
    style E fill:#fbb,stroke:#333,stroke-width:2px

図1:分散処理システムの基本構成

2. 詳細説明

2.1. 分散アーキテクチャの基本概念

 分散アーキテクチャとは、システムの構成要素を物理的・論理的に分散配置し、それらを連携させる設計手法です。従来の集中型システムと異なり、処理能力やデータを複数のノードに分散させることで、システム全体の柔軟性と堅牢性を高めます。分散アーキテクチャでは、機能配分の方法によって、システムの特性が大きく変わります。機能配分とは、システム全体の機能をどのように各コンピュータに割り当てるかを決定することです。

 分散アーキテクチャの主な特徴は以下の通りです:

  • 物理的に分散したコンピュータリソースの統合利用
  • 複数ノードによる処理の並列化
  • ノード間通信による協調動作
  • 単一障害点の排除による信頼性の向上
  • 段階的な拡張性の確保

2.2. 分散処理システムの形態

2.2.1. 水平機能分散システム

 水平機能分散システムとは、同じ機能を持つ複数のコンピュータを並列に配置し、処理を分散させるシステム形態です。例えば、Webサーバーを複数台設置し、アクセス要求を分散して処理することで、全体としての処理能力を向上させます。この形態は特に、処理の対話型処理において有効で、ユーザーからの要求に対する応答性を高めることができます。

 水平機能分散システムの具体的な実装方法としては、リクエストを複数のサーバーに振り分けるDNSラウンドロビンや、専用のロードバランサーを用いる方法があります。複数のサーバーが同じ機能を持つため、一部のサーバーに障害が発生しても、システム全体としては機能を維持することができます。

2.2.2. 水平負荷分散システム

 水平負荷分散システムは、水平機能分散の一形態で、同一機能を持つ複数のサーバーにロードバランサーを使って負荷を均等に分散させるシステムです。これにより、特定のサーバーに負荷が集中することを防ぎ、システム全体の安定性と性能を確保します。クラウドサービスなどで広く採用されており、需要の増減に応じて柔軟にリソースを増減できるスケーラビリティも特徴です。

 ロードバランサーは、各サーバーの負荷状況を監視し、最適なサーバーにリクエストを振り分ける重要な役割を担います。振り分け方法には、ラウンドロビン方式、最小コネクション方式、応答時間による方式など、様々なアルゴリズムがあります。

2.2.3. 垂直機能分散システム

 垂直機能分散システムとは、システムの機能を階層的に分割し、異なる層に配置するシステム形態です。一般的には、プレゼンテーション層(ユーザーインターフェース)、アプリケーション層(業務ロジック)、データ層(データベース)などに分割されます。この設計は、各層の独立性を高め、変更の影響範囲を限定することができるため、システムの保守性や拡張性が向上します。また、層ごとに最適なハードウェアを選択できるため、コスト効率も高まります。

 3層アーキテクチャやMVCモデルは、垂直機能分散システムの代表的な例です。各層は独立して開発・テスト・デプロイが可能なため、大規模システムの開発効率が向上します。

graph TB
    subgraph "水平機能分散システム"
        A1[クライアント] --> B1[サーバー1\n同一機能]
        A1 --> C1[サーバー2\n同一機能]
        A1 --> D1[サーバー3\n同一機能]
    end
    
    subgraph "水平負荷分散システム"
        A2[クライアント] --> LB[ロードバランサー]
        LB --> B2[サーバー1\n同一機能]
        LB --> C2[サーバー2\n同一機能]
        LB --> D2[サーバー3\n同一機能]
    end
    
    subgraph "垂直機能分散システム"
        A3[クライアント] --> B3[プレゼンテーション層\nUI]
        B3 --> C3[アプリケーション層\n業務ロジック]
        C3 --> D3[データ層\nデータベース]
    end
    
    classDef client fill:#f9f,stroke:#333,stroke-width:2px
    classDef server fill:#bfb,stroke:#333,stroke-width:2px
    classDef lb fill:#bbf,stroke:#333,stroke-width:2px
    classDef layer fill:#fbb,stroke:#333,stroke-width:2px
    
    class A1,A2,A3 client
    class B1,C1,D1,B2,C2,D2 server
    class LB lb
    class B3,C3,D3 layer

図2:分散処理システムの種類の比較図

2.3. 分散処理システムの特徴

2.3.1. 情報資源の組織への対応性

 分散処理システムの大きな特徴の一つは、情報資源の組織への対応性の高さです。組織の変化や拡大に応じて、柔軟にシステムリソースを追加・削除・再配置することができます。例えば、新しい部門が設立された場合、その部門専用のサーバーを追加するだけで対応できるため、組織構造の変化に迅速に対応することが可能です。

 また、各部門や拠点の特性に合わせて、システムをカスタマイズすることも容易です。部門ごとに異なる業務要件に対応しつつ、全体としての一貫性も維持できる柔軟性が、分散処理システムの大きな利点となっています。

2.3.2. 管理責任の分散

 分散処理システムでは、管理責任も分散されます。各部門や拠点がそれぞれのシステムを管理することで、ローカルなニーズに合わせた柔軟な運用が可能になります。ただし、管理が分散することによる一貫性の欠如やセキュリティリスクも考慮する必要があります。適切な権限委譲と中央管理のバランスが重要です。

 管理責任の分散によって、意思決定の迅速化や現場のニーズへの対応力が向上する一方で、全社的なポリシーの徹底やシステム間の整合性確保には課題があります。このため、分散と集中のバランスを考慮したガバナンス体制の構築が不可欠です。

2.3.3. TCOへの影響

 TCO(Total Cost of Ownership)とは、システムの導入から運用、廃棄までにかかる総コストを指します。分散処理システムは初期投資を抑えつつ段階的な拡張が可能なため、TCOの最適化に貢献します。一方で、複数のシステムを管理・運用するためのコストも発生するため、適切な設計と運用管理が必要です。

 TCOの観点では、以下の要素を考慮する必要があります:

  • ハードウェア・ソフトウェアの調達コスト
  • システム導入・構築コスト
  • 運用・保守コスト
  • ネットワーク・通信コスト
  • セキュリティ対策コスト
  • 教育・トレーニングコスト
  • システム更新・廃棄コスト
種類 主な利点 課題・欠点 適した用途
水平機能分散システム ・処理能力の向上
・冗長性による可用性の向上
・障害に対する耐性強化
・一貫性の維持が困難
・管理の複雑さ
・データ同期の課題
・高負荷処理
・対話型システム
・並列処理が適したタスク
水平負荷分散システム ・スケーラビリティ
・負荷の均等分散
・ピーク時の性能安定性
・ロードバランサーの設計
・統一されたセッション管理
・単一障害点(ロードバランサー)
・Webサービス
・クラウドサービス
・アクセス数の変動が大きいシステム
垂直機能分散システム ・機能の独立性
・各層の最適化
・変更影響範囲の限定
・層間の通信オーバーヘッド
・設計の複雑さ
・層間の依存関係管理
・エンタープライズアプリケーション
・3層アーキテクチャ
・基幹業務システム

表1:分散処理システムの利点と課題の比較表

3. 応用例

3.1. クラウドコンピューティング

 クラウドコンピューティングは分散処理システムの代表的な応用例です。AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウドプロバイダーは、巨大な分散処理システムを構築し、コンピューティングリソースをサービスとして提供しています。これらは水平負荷分散システムの特性を活かし、需要に応じて自動的にリソースをスケールアップ・ダウンする機能を備えています。

 クラウドサービスは一般的に以下の形態で提供されています:

  • IaaS(Infrastructure as a Service): 仮想マシンやストレージなどのインフラを提供
  • PaaS(Platform as a Service): アプリケーション開発・実行環境を提供
  • SaaS(Software as a Service): アプリケーションそのものを提供

 これらのサービスは分散処理システムの原理に基づいており、複数のデータセンターに分散配置された膨大な数のサーバーによって支えられています。冗長構成による高可用性の確保や、負荷に応じた自動スケーリングなど、分散処理システムの利点を最大限に活用しています。

graph TB
    User[ユーザー] --> LB[ロードバランサー/APIゲートウェイ]
    
    subgraph "リージョンA"
        LB --> AZ1[アベイラビリティゾーン1]
        LB --> AZ2[アベイラビリティゾーン2]
        
        subgraph "アベイラビリティゾーン1"
            AZ1 --> A1[Webサーバー]
            AZ1 --> B1[アプリサーバー]
            B1 --> C1[(データベースレプリカ)]
        end
        
        subgraph "アベイラビリティゾーン2"
            AZ2 --> A2[Webサーバー]
            AZ2 --> B2[アプリサーバー]
            B2 --> C2[(データベースプライマリ)]
        end
        
        C1 <-.レプリケーション.-> C2
    end
    
    subgraph "リージョンB (災害復旧用)"
        LB -.フェイルオーバー.-> DR[スタンバイシステム]
    end
    
    subgraph "グローバルサービス"
        LB --> CDN[コンテンツ配信ネットワーク]
        LB --> Storage[分散ストレージ]
        LB --> Cache[分散キャッシュ]
    end
    
    classDef user fill:#f9f,stroke:#333,stroke-width:2px
    classDef lb fill:#bbf,stroke:#333,stroke-width:2px
    classDef az fill:#ddd,stroke:#333,stroke-width:1px
    classDef server fill:#bfb,stroke:#333,stroke-width:1px
    classDef db fill:#fbb,stroke:#333,stroke-width:1px
    classDef dr fill:#ffd,stroke:#333,stroke-width:1px
    classDef global fill:#dff,stroke:#333,stroke-width:1px
    
    class User user
    class LB lb
    class AZ1,AZ2 az
    class A1,A2,B1,B2 server
    class C1,C2 db
    class DR dr
    class CDN,Storage,Cache global

図3:クラウドコンピューティングにおける分散処理の実装例

3.2. マイクロサービスアーキテクチャ

 マイクロサービスアーキテクチャは、アプリケーションを小さな独立したサービスに分割し、それらを連携させるアーキテクチャパターンです。各サービスは独立して開発・デプロイ・スケーリングが可能であり、垂直機能分散システムの考え方を発展させたものといえます。Netflix、Amazonなどの大規模Webサービスで採用されています。

 マイクロサービスの主な特徴は以下の通りです:

  • 単一責任の原則に基づく小規模なサービス
  • サービス間の疎結合
  • APIを介した通信
  • サービスごとの独立したデータ管理
  • サービスごとの独立した開発・デプロイサイクル
  • 異なる言語やフレームワークの混在が可能

 マイクロサービスアーキテクチャでは、サービス間の通信にはRESTful APIやメッセージキューなどが用いられ、サービスディスカバリやAPI管理のための専用コンポーネントも導入されます。また、コンテナ技術(Docker)やオーケストレーションツール(Kubernetes)と組み合わせることで、より効率的な運用が可能になります。

graph TD
    Client[クライアント] --> Gateway[APIゲートウェイ]
    
    Gateway --> Auth[認証サービス]
    Gateway --> User[ユーザー管理サービス]
    Gateway --> Catalog[商品カタログサービス]
    Gateway --> Order[注文サービス]
    Gateway --> Payment[決済サービス]
    Gateway --> Shipping[配送サービス]
    Gateway --> Notification[通知サービス]
    
    User --> UserDB[(ユーザーDB)]
    Catalog --> ProductDB[(商品DB)]
    Order --> OrderDB[(注文DB)]
    Payment --> PaymentDB[(決済DB)]
    Shipping --> ShippingDB[(配送DB)]
    
    Order --> Payment
    Order --> Shipping
    Order --> Notification
    Payment --> Notification
    Shipping --> Notification
    
    subgraph "サービスディスカバリ"
        Registry[サービスレジストリ]
    end
    
    Auth -.登録.-> Registry
    User -.登録.-> Registry
    Catalog -.登録.-> Registry
    Order -.登録.-> Registry
    Payment -.登録.-> Registry
    Shipping -.登録.-> Registry
    Notification -.登録.-> Registry
    
    Gateway -.サービス検索.-> Registry
    
    classDef client fill:#f9f,stroke:#333,stroke-width:2px
    classDef gateway fill:#bbf,stroke:#333,stroke-width:2px
    classDef service fill:#bfb,stroke:#333,stroke-width:1px
    classDef db fill:#fbb,stroke:#333,stroke-width:1px
    classDef registry fill:#dff,stroke:#333,stroke-width:1px
    
    class Client client
    class Gateway gateway
    class Auth,User,Catalog,Order,Payment,Shipping,Notification service
    class UserDB,ProductDB,OrderDB,PaymentDB,ShippingDB db
    class Registry registry

図4:マイクロサービスアーキテクチャの構成例

3.3. 分散データベースシステム

 データベースを複数のノードに分散させる分散データベースシステムも、分散処理システムの重要な応用例です。Google BigTable、Amazon DynamoDB、Apache Cassandraなどが代表的な例で、膨大なデータを効率的に処理・保存するために水平機能分散の原理が応用されています。

 分散データベースシステムには、大きく分けて以下の種類があります:

  1. 水平分割(シャーディング)型:データを複数のノードに分割して保存する方式。各ノードは異なるデータセットを管理する。
  2. レプリケーション型:同じデータを複数のノードに複製する方式。読み取り性能の向上と可用性の確保が目的。
  3. ハイブリッド型:水平分割とレプリケーションを組み合わせた方式。スケーラビリティと可用性の両方を確保。

 分散データベースシステムでは、データの一貫性(Consistency)、可用性(Availability)、分断耐性(Partition tolerance)のトレードオフ(CAP定理)が重要な課題となります。システムの要件に応じて、強い一貫性を重視するか、高い可用性を重視するかを選択する必要があります。

4. 例題

例題1

 ある企業の基幹システムを分散処理システムで設計する際、以下の要件がある。最も適切な分散アーキテクチャを選び、その理由を説明せよ。

要件:

  • 業務処理の負荷が時間帯によって大きく変動する
  • システムの可用性が最も重視される
  • 将来的なユーザー数の増加に柔軟に対応したい
  1. 集中処理システム
  2. 水平機能分散システム
  3. 水平負荷分散システム
  4. 垂直機能分散システム

【解答】 c. 水平負荷分散システムです。

【解説】水平負荷分散システムは、同一機能を持つ複数のサーバーに負荷を分散させるシステムであり、時間帯によって変動する負荷に対して、ロードバランサーを用いて効率的に対応できます。また、冗長構成を取ることで可用性を高めることができ、ユーザー数の増加に対してもサーバーを追加することで柔軟に対応可能です。さらに、一部のサーバーに障害が発生しても、残りのサーバーで処理を継続できるため、システムの可用性要件も満たします。

例題2

 以下の分散処理システムに関する記述のうち、誤っているものを選べ。

  1. 垂直機能分散システムでは、プレゼンテーション層、アプリケーション層、データ層などの階層に機能を分割する。
  2. 水平機能分散システムは、管理責任が集中するため、一元的な管理が容易である。
  3. 分散処理システムでは、情報資源の組織への対応性が高く、組織変化に柔軟に対応できる。
  4. TCOの観点からは、分散処理システムは初期投資を抑えつつ段階的な拡張が可能という利点がある。

【解答】b. 水平機能分散システムは、管理責任が集中するため、一元的な管理が容易である。

【解説】水平機能分散システムを含む分散処理システム全般では、管理責任も分散される傾向があります。各サーバーやサブシステムごとに管理者が異なる場合が多く、一元的な管理は集中処理システムと比較して困難になることがあります。この特性は、分散処理システムの欠点の一つとして考慮する必要があります。

例題3

 ある企業では、複数の拠点にオフィスを持ち、それぞれに情報システムを導入している。この企業の情報システムに関する以下の要件と課題に対して、最も適切な分散処理システムの形態を選び、その理由を説明せよ。

要件と課題:

  • 各拠点の業務内容が大きく異なる
  • 拠点ごとに独自のシステム要件がある
  • 全社的なデータの一元管理も必要
  • システム障害が全社に波及することを防ぎたい
  1. 水平機能分散システム
  2. 水平負荷分散システム
  3. 垂直機能分散システム
  4. クライアントサーバーシステム

【解答】c. 垂直機能分散システムです。

【解説】垂直機能分散システムでは、システムの機能を階層的に分割するため、拠点ごとの独自要件に対応するプレゼンテーション層とアプリケーション層を拠点単位で構築しつつ、全社データを一元管理するデータ層を共通化することが可能です。各拠点のシステムは機能的に独立しているため、一部の拠点のシステム障害が全社に波及することを防ぐことができます。また、業務内容が大きく異なる拠点ごとに最適化された機能を提供しつつ、データの整合性を保つという要件にも適しています。

例題4 (計算問題)

 あるWebサービスの分散処理システムにおいて、以下の条件でTCOを計算せよ。

条件:

  • サーバー1台あたりの初期導入コスト:100万円
  • サーバー1台あたりの年間運用コスト:20万円
  • ロードバランサーの初期導入コスト:150万円
  • ロードバランサーの年間運用コスト:30万円
  • 必要なサーバー台数:初年度は3台、2年目以降は毎年1台ずつ追加
  • 計画期間:5年間

 5年間のTCOを計算します。

  1. 初期導入コスト(初年度):
    • サーバー3台:100万円 × 3台 = 300万円
    • ロードバランサー1台:150万円
    • 初年度導入コスト合計:450万円
  2. 追加サーバーの導入コスト:
    • 2年目:100万円 × 1台 = 100万円
    • 3年目:100万円 × 1台 = 100万円
    • 4年目:100万円 × 1台 = 100万円
    • 5年目:100万円 × 1台 = 100万円
    • 追加サーバー導入コスト合計:400万円
  3. 年間運用コスト(サーバー):
    • 1年目:20万円 × 3台 = 60万円
    • 2年目:20万円 × 4台 = 80万円
    • 3年目:20万円 × 5台 = 100万円
    • 4年目:20万円 × 6台 = 120万円
    • 5年目:20万円 × 7台 = 140万円
    • サーバー運用コスト合計:500万円
  4. ロードバランサー年間運用コスト:
    • 年間30万円 × 5年 = 150万円
  5. 5年間のTCO:
    • 初期導入コスト + 追加サーバー導入コスト + サーバー運用コスト + ロードバランサー運用コスト
    • 450万円 + 400万円 + 500万円 + 150万円 = 1,500万円

 よって、5年間のTCOは1,500万円となります。

5. まとめ

 分散処理システムは、複数のコンピュータを通信ネットワークで接続し、処理機能や負荷を分散させる形態のシステムです。分散アーキテクチャに基づき、水平機能分散システム、水平負荷分散システム、垂直機能分散システムなどの形態があります。

 分散処理システムの特徴として、対話型処理の効率化、情報資源の組織への対応性の高さ、管理責任の分散化、TCOの最適化などが挙げられます。これらの特徴により、組織の変化に柔軟に対応でき、段階的なシステム拡張が可能になります。

 現代の情報システムでは、クラウドコンピューティング、マイクロサービスアーキテクチャ、分散データベースシステムなど、多くの技術が分散処理システムの考え方を応用しています。これらの技術は、スケーラビリティ、可用性、耐障害性といった要件を満たすために、分散処理の原理を活用しています。

 分散処理システムの設計・導入にあたっては、業務要件や組織構造を十分に理解し、最適な機能配分を行うことが重要です。また、分散によるメリットを最大化しつつ、管理の複雑さやデータの一貫性確保などの課題にも適切に対応することが求められます。

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