6.4.4. 保守レビュー及び/又は受入れ

1. 概要

 保守レビュー及び/又は受入れは、システム開発の保守段階において重要なプロセスです。このプロセスの主な目的は、修正されたシステム及び/又はソフトウェアの動作確認や完了の承認を行うことです。これにより、システムの品質を維持し、ユーザーの要求を満たすことができます。

 保守レビュー及び受入れの重要性は、以下の点にあります:

  1. システムの完整性(integrity)の確保
  2. ユーザーの満足度の向上
  3. システムの安定稼働の保証
  4. 将来の保守作業の効率化

2. 詳細説明

2.1. 保守レビューの手順

 保守レビューは、以下の手順で実施されます:

  1. レビュー計画の立案:どの部分をレビューするか、レビューの目的を明確にします。
  2. レビュー対象の特定:修正内容や影響範囲を特定し、対象となるモジュールや機能を決定します。
  3. レビュー実施:設計やコード、テスト結果を確認し、問題点や改善点を洗い出します。
  4. 結果の記録と報告:レビュー結果をドキュメントにまとめ、関係者に報告します。
  5. 是正措置の実施:発見された問題に対して修正を行い、再度レビューが必要な場合はそれを繰り返します。
graph TD;
    A[レビュー計画の立案] --> B[レビュー対象の特定];
    B --> C[レビュー実施];
    C --> D[結果の記録と報告];
    D --> E[是正措置の実施];
    E --> C;

図1:保守レビューの手順

2.2. 受入れテストの手順

 受入れテストは、以下の手順で実施されます:

  1. テスト計画の作成:テストの目的や範囲、スケジュールを決定します。
  2. テストケースの設計:具体的なテストシナリオを作成し、期待される結果を定義します。
  3. テスト環境の準備:テスト実施に必要なシステム環境やデータを準備します。
  4. テストの実施:設計されたテストケースに基づき、システムの動作確認を行います。
  5. 結果の評価と報告:テスト結果を評価し、問題点があれば修正の必要性を報告します。
graph TD;
    A[テスト計画の作成] --> B[テストケースの設計];
    B --> C[テスト環境の準備];
    C --> D[テストの実施];
    D --> E[結果の評価と報告];

図2:受入れテストの手順

2.3. 完整性(integrity)の確認

 修正されたシステム及び/又はソフトウェアの完整性(integrity)を確認することは、保守レビュー及び受入れの重要な側面です。完整性の確認には、以下の点が含まれます:

  1. データの一貫性:修正後もデータの正確性や整合性が保たれているかを確認します。
  2. セキュリティの確保:修正によりセキュリティが強化され、脆弱性が解消されたことを確認します。
  3. パフォーマンスの維持:修正後のシステムが想定される負荷や処理時間をクリアしているかを確認します。
  4. 他のシステムとの整合性:修正が他の連携システムに悪影響を及ぼしていないかを確認します。
確認項目 説明 確認結果
データの一貫性 修正後もデータの整合性が保たれているかを確認する 確認済み / 未確認
セキュリティの確保 セキュリティの脆弱性が解消されているかを確認する 確認済み / 未確認
パフォーマンスの維持 修正後のパフォーマンスが期待通りかを確認する 確認済み / 未確認
他のシステムとの整合性 他の関連システムに影響を与えていないかを確認する 確認済み / 未確認

表1:完整性確認のチェックリスト

3. 応用例

3.1. 金融システムの更新

 銀行のオンラインバンキングシステムにセキュリティパッチを適用した後、保守レビューを実施し、セキュリティ強化の効果を確認します。その後、実環境に近いテスト環境受入れテストを行い、システムの安全性と性能を検証します。これにより、システムの完整性が確保され、ユーザーの安心感が向上します。

3.2. 電子商取引サイトの機能追加

 ECサイトに新しい決済方法を追加した後、保守レビューで実装の正確性を確認します。その後、受入れテストで実際の取引シナリオを用いて、新機能の動作と既存機能への影響を検証します。このプロセスにより、システム全体のパフォーマンスと整合性が確認されます。

graph TD;
    A[機能追加の提案] --> B[設計変更の確認];
    B --> C[新機能の実装];
    C --> D[保守レビュー];
    D --> E[テスト環境での動作確認];
    E --> F[既存機能への影響確認];
    F --> G[受入れテスト];
    G --> H[本番環境への展開];

図3:ECサイトの機能追加における保守レビューのプロセス

4. 例題

例題1

問題:保守レビュー及び受入れの目的として、最も適切なものはどれか。

a) システムの開発コストを削減する
b) 修正されたシステムの動作確認と完了の承認を行う
c) システムの開発期間を短縮する
d) ユーザーの要求を収集する

回答例:正解は b) 修正されたシステムの動作確認と完了の承認を行う

解説:保守レビュー及び受入れの主な目的は、修正されたシステム及び/又はソフトウェアの動作確認や完了の承認を行うことです。これにより、システムの品質と完整性を確保します。

例題2

問題:以下の記述のうち、修正されたシステムの完整性(integrity)の確認に関して正しくないものはどれか。

a) データの一貫性を確認する
b) セキュリティの確保を確認する
c) パフォーマンスの維持を確認する
d) システムの開発言語を変更する

回答例:正解は d) システムの開発言語を変更する

解説:システムの完整性(integrity)の確認には、データの一貫性、セキュリティの確保、パフォーマンスの維持などが含まれます。開発言語の変更は、完整性の確認とは直接関係がありません。

5. まとめ

 保守レビュー及び受入れは、システム開発の保守段階において重要なプロセスです。主な目的は、修正されたシステム及び/又はソフトウェアの動作確認や完了の承認を行い、システムの完整性を確保することです。これにより、以下の利点が得られます:

  1. システムの品質維持
  2. ユーザー満足度の向上
  3. システムの安定稼働
  4. 将来の保守作業の効率化