2.9.1. プロセス中心設計

1. 概要

 プロセス中心設計(Process-Centered Design)は、ソフトウェア設計手法の一つで、システムの機能をプロセスの観点から捉えて設計を行うアプローチです。この手法は、ビジネスプロセスや業務フローを中心に据え、それらのプロセスを効率的に支援するシステムを設計することを目的としています。

 プロセス中心設計の重要性は、以下の点にあります:

  1. ビジネス要求との整合性確保
  2. 業務フローの可視化と最適化
  3. システムの柔軟性と拡張性の向上
  4. ユーザーの作業効率向上

2. 詳細説明

2.1. プロセス中心設計の基本概念

 プロセス中心設計では、以下の基本概念が重要です:

  1. プロセス:一連の関連する作業や活動の流れ
  2. アクティビティ:プロセスを構成する個々の作業単位
  3. ロール:プロセスやアクティビティを実行する担当者や役割
  4. フロー:プロセスの実行順序や条件分岐

図1:プロセス、アクティビティ、ロール、フローの関係

2.2. プロセス中心設計の手順

 プロセス中心設計は、以下の手順で進められます:

  1. 業務プロセスの分析と可視化
  • 業務フローを詳細に分析し、プロセス全体を可視化します。これにより、プロセス内で無駄な部分や改善すべき箇所が明らかになります。

図2:BPMNを用いて作成した業務フローの例

  1. プロセスの最適化と再設計
  • 分析結果に基づき、プロセスを効率化し、必要に応じて再設計を行います。最適化には、プロセスの簡素化や自動化が含まれます。
  1. システム要件の定義
  • 最適化されたプロセスを支えるために必要なシステム機能や要件を定義します。ここでは、ビジネスプロセスを支援する具体的なシステム機能を決めます。
  1. プロセスモデルの作成
  • BPMNやUMLのアクティビティ図を用いて、プロセスのモデルを作成します。これにより、システムとビジネスプロセスの整合性を可視化し、設計の基盤とします。

図3:UMLのアクティビティ図の例

  1. システム機能の設計
  • プロセスモデルに基づき、システムの各機能を詳細に設計します。この段階で、システムがどのように業務を支援するかが明確化されます。
  1. ユーザーインターフェースの設計
  • システムの使い勝手を向上させるために、ユーザーインターフェース(UI)を設計します。UIは、業務プロセスに適合し、ユーザーが効率的に操作できるようにすることが求められます。
  1. データモデルの設計
  • 業務プロセスに関わるデータの管理を効率化するために、データモデルを設計します。データの流れをプロセスに組み込み、情報の一貫性を保つようにします。
  1. システムアーキテクチャの設計
  • 最終的に、システム全体のアーキテクチャを設計します。アーキテクチャは、システムの柔軟性や拡張性を考慮して設計されます。

2.3. プロセス中心設計で使用されるツールと技法

 プロセス中心設計では、次のようなツールや技法が使用されます:

  1. BPMN(Business Process Model and Notation):業務プロセスを視覚的に表現するための標準化された記法。プロセスの流れや分岐条件を明確に示すのに適しています。
    (※図表挿入例:BPMNの簡単なプロセス図)
  2. UML(Unified Modeling Language)のアクティビティ図:業務プロセスの各アクティビティを詳細に表現するための図。複雑なプロセスを可視化するのに役立ちます。
  3. DFD(Data Flow Diagram):システム内でのデータの流れを示す図。プロセスとデータのやり取りを視覚的に表現します。
  4. ワークフロー図:業務プロセスを視覚化し、各アクティビティの実行順序を示します。
  5. IDEF(Integrated Definition):複雑なシステムやプロセスを分解して可視化するための手法。

3. 応用例

 プロセス中心設計は、様々な業界や状況で応用されています。以下にいくつかの代表的な応用例を示します。

3.1. 製造業

 生産管理システムの設計では、原材料の調達から製品の出荷までのプロセスを可視化し、各工程を効率的に支援するシステムを設計します。これにより、生産効率が向上し、無駄な工程が削減されます。

3.2. 金融業

 金融業では、融資申請処理システムにプロセス中心設計を適用し、申請受付から審査、承認、資金提供までのプロセスを最適化します。これにより、手続きの迅速化や顧客満足度の向上が期待できます。

3.3. 医療業界

 医療業界では、患者管理システムをプロセス中心設計で構築し、受付から診察、検査、処方、会計までのプロセスを効率化します。これにより、医療スタッフの業務負担が軽減され、患者対応の質が向上します。

4. 例題

例題1

問題:ある会社の休暇申請システムをプロセス中心設計で設計する際の最初のステップとして、業務プロセスの分析と可視化を行います。この休暇申請プロセスの主要なアクティビティを5つ挙げ、それぞれの実行順序を示してください。

回答例

  1. 社員による休暇申請入力
  2. 直属上司による申請内容確認
  3. 人事部門による休暇残日数確認
  4. 上司による承認または却下
  5. 社員への結果通知

実行順序:1 → 2 → 3 → 4 → 5

例題2

問題:プロセス中心設計において、BPMNを使用してプロセスモデルを作成する利点を3つ挙げてください。

回答例

  1. 標準化された表記法により、関係者間でプロセスの理解が容易になる
  2. プロセスの流れや条件分岐を視覚的に表現できる
  3. ビジネスアナリストとIT開発者の間のコミュニケーションツールとして機能する

5. まとめ

 プロセス中心設計は、ビジネスプロセスを中心に据えたソフトウェア設

計手法です。この手法の主な特徴は以下の通りです:

  1. 業務フローの可視化と最適化を重視
  2. システムの機能をプロセスの観点から設計
  3. ユーザーの作業効率向上を目指す
  4. BPMNなどの標準化されたツールや技法を活用
  5. ビジネス要求とシステム機能の整合性を確保

 プロセス中心設計を適切に実施することで、ビジネスニーズに合致した効率的なシステムを設計することが可能になります。この設計手法の考え方と手順を十分に理解し、実践できるようになることが重要です。