1.4. 無線LAN

1. 概要

 無線LAN(Wireless Local Area Network)は、電波を使用してデータの送受信を行うネットワーク方式です。有線LANのケーブル接続に代わり、無線通信技術を利用することで、より柔軟なネットワーク構築を可能にします。近年のモバイルデバイスの普及やIoTの発展に伴い、無線LANの重要性はますます高まっています。

2. 詳細説明

2.1. 無線LANの仕組み

 無線LANは、主に電波(無線周波数)を利用してデータの送受信を行います。通信には、IEEE 802.11規格に基づいたプロトコルが使用されており、複数のデバイス間でデータのやり取りが可能です。

2.2. 無線LANの構成要素

2.2.1. 無線LANアクセスポイント

 無線LANアクセスポイントは、無線LANネットワークの中心となる機器です。有線LANと無線LANを橋渡しする役割を果たし、無線クライアントからの通信を受け取り、有線ネットワークに転送します。

2.2.2. 無線LANクライアント

 ノートPC、スマートフォン、タブレットなど、無線LAN機能を搭載した端末がクライアントとなります。

2.3. 無線LANの動作モード

2.3.1. インフラストラクチャモード

 無線LANアクセスポイントを中心として、複数のクライアントが通信を行うモードです。一般的なオフィスや家庭での無線LAN利用形態がこれにあたります。

2.3.2. アドホックモード

 無線LANアクセスポイントを使用せず、クライアント同士が直接通信を行うモードです。臨時的なネットワーク構築に適しています。

2.4. SSIDとセキュリティ

 SSID(Service Set Identifier)は、無線LANネットワークを識別するための名前です。セキュリティ対策としては、SSIDの隠蔽よりも、WPA3などの最新の暗号化方式の利用が推奨されます。また、強固なパスフレーズの設定や定期的なパスワード変更なども有効なセキュリティ対策です。

2.5. 無線LANの課題

2.5.1. 隠れ端末問題

 無線LANアクセスポイントの電波が届く範囲内にあるが、お互いの電波が届かない端末同士が同時に通信を試みることで衝突が発生する問題です。

2.5.2. さらし端末問題

 無線LANネットワークにおける「さらし端末問題(Exposed Terminal Problem)」は、ある端末が隣接する別の通信を検知して送信を控えるが、実際にはその通信が自分の送信先には影響を与えない場合に発生します。この問題により、必要以上に通信が抑制され、ネットワークの効率が低下することがあります。

3. 応用例

3.1. オフィス環境

 フリーアドレス制のオフィスで、社員が自由に席を選んで仕事ができる環境を実現します。

3.2. 教育機関

 大学や学校で、学生がノートPCやタブレットを使用して、柔軟に学習環境を構築できます。

3.3. 公共施設

 図書館や空港などの公共スペースで、来訪者にインターネット接続サービスを提供します。

3.4. IoTデバイス

 スマートホームシステムやウェアラブルデバイスなど、様々なIoT機器の接続に利用されます。また、IoTデバイスはセキュリティリスクが高い分野であるため、適切な暗号化方式や認証技術の導入が必要です。

4. 例題

例題1: 無線LANの動作モードに関する問題

 以下の説明文の空欄に当てはまる適切な用語を選びなさい。

 無線LANアクセスポイントを介して通信を行う方式を( A )モードという。一方、無線LANアクセスポイントを使用せず、端末同士が直接通信を行う方式を( B )モードという。

選択肢:
a) インフラストラクチャ
b) アドホック
c) ピアツーピア
d) クライアントサーバ

正解: A: a, B: b

解説: インフラストラクチャモードは無線LANアクセスポイントを中心とした通信方式、アドホックモードは端末同士の直接通信方式を指します。

例題2: 無線LANのセキュリティに関する問題

 無線LANのセキュリティ対策として、不適切なものはどれか。

a) SSIDの隠蔽設定を行う
b) WPA2による暗号化を実施する
c) 電波の出力を最大にして、通信範囲を広げる
d) MACアドレスフィルタリングを設定する

正解: c

解説: 電波の出力を最大にして通信範囲を広げることは、むしろセキュリティリスクを高めることになります。適切な出力設定で必要最小限の範囲をカバーすることが望ましいです。また、MACアドレスフィルタリングは補助的な対策であり、より強固な暗号化方式の利用が重要です。

5. まとめ

 無線LANは、電波を利用してデータ通信を行うネットワーク方式です。主な構成要素として無線LANアクセスポイントと無線LANクライアントがあり、インフラストラクチャモードとアドホックモードの2つの動作モードがあります。セキュリティ対策として、SSIDによるネットワーク識別の設定だけでなく、最新の暗号化方式の利用や適切な認証手段の導入が重要です。また、隠れ端末問題やさらし端末問題などの課題も理解しておく必要があります。無線LANは様々な場面で活用されており、IoTの発展とともにその重要性は今後さらに高まっていくでしょう。