1. 概要
ネットワークは現代の情報社会において欠かせない基盤技術です。特に、LAN(Local Area Network)とWAN(Wide Area Network)は、企業や組織のIT基盤として重要な役割を果たしています。本記事では、LANとWANの仕組み、特徴、構成要素、運用費用について解説します。また、WANを構成する際に利用する電気通信事業者が提供するサービスの種類と特徴についても触れます。
2. 詳細説明
2.1. LANの仕組みと特徴
LANは、限られた地理的範囲内(通常は同一建物内や同一敷地内)でコンピュータやネットワーク機器を接続するネットワークです。
2.1.1. 主な特徴
- 高速な通信が可能(通常1Gbps以上)
- 低遅延
- 比較的安価な構築・運用コスト
- セキュリティ管理が容易
2.1.2. 構成要素
- ネットワークインターフェースカード(NIC)
- スイッチ
- ルーター
- ケーブル(UTPケーブル、光ファイバーケーブルなど)
- IDF(Intermediate Distribution Frame):フロアごとの通信機器を収容
- MDF(Main Distribution Frame):建物全体の通信機器を収容
2.2. WANの仕組みと特徴
WANは、地理的に離れた地点間を接続するネットワークです。インターネットも一種のWANと考えられます。
2.2.1. 主な特徴
- 広範囲の通信が可能
- 高速な通信も可能だが、遅延や帯域幅の制約がLANに比べて大きい場合がある
- 比較的高い運用コスト
- セキュリティ管理に注意が必要(データ盗聴や不正アクセスのリスクがあるため、適切なセキュリティ対策が重要)
2.2.2. 構成要素
- ルーター
- モデム
- 専用線
- 回線終端装置
2.2.3. SD-WANの導入
SD-WANは、ソフトウェアによってWANの制御と管理を行う技術です。複数の回線を効率的に利用し、コスト削減とネットワークの柔軟性向上を実現します。
2.3. 電気通信事業者が提供するWANサービス
WANを構築する際には、多くの場合、電気通信事業者が提供するサービスを利用します。主なサービスには以下のようなものがあります。
2.3.1. インターネット接続サービス
- インターネットサービスプロバイダ(ISP)が提供
- 従量制や月額固定料金などの課金方式がある
2.3.2. 専用線サービス
- 特定の2地点間を常時接続
- 高速で安定した通信が可能
2.3.3. IP-VPNサービス
- 電気通信事業者の閉域IPネットワークを利用して、セキュアな仮想的な専用線を構築
- インターネットを経由しないため、高いセキュリティと安定性が確保される
- コストパフォーマンスに優れる
2.3.4. 広域イーサネットサービス
- イーサネット技術を用いてLANをWAN規模に拡張
- 高速かつ柔軟なネットワーク構築が可能
2.3.5. インターネットVPN
- インターネットを経由して拠点間をVPNで接続
- コストを抑えつつ、柔軟なネットワーク構築が可能
- セキュリティや通信品質の面でIP-VPNより劣る場合がある
3. 応用例
3.1. 企業ネットワークの構築
多くの企業では、本社や支社内にLANを構築し、それらをWANで接続しています。例えば、東京本社、大阪支社、福岡支社がある企業の場合、以下のような構成が考えられます。
- 各拠点にLANを構築
- スイッチやルーターを使用して社内ネットワークを構築
- MDFやIDFを利用して効率的なケーブル配線を実現
- 拠点間をWANで接続
- IP-VPNサービスを利用して拠点間を安全に接続
- インターネット接続には、ISPのサービスを利用
- センサーネットワークの導入
- 工場や倉庫などにIoTセンサーを設置し、LANを通じてデータを収集
- 収集したデータをWAN経由で本社のサーバーに送信し分析
3.2. クラウドサービスの利用
近年では、クラウドサービスの利用が一般的になっています。この場合、以下のようなネットワーク構成が考えられます。
- 社内LANの構築
- 従来通り、社内にLANを構築
- インターネット接続
- ISPのサービスを利用してインターネットに接続
- できるだけ高速な回線を選択(光ファイバーなど)
- クラウドサービスへのアクセス
- インターネット経由でクラウドサービスにアクセス
- 必要に応じて、専用線やVPNを利用してセキュアな接続を確立
4. 例題
例題1: LANとWANの違いに関する問題
以下の記述のうち、LANとWANの違いについて正しく説明しているものはどれか。
a) LANは広域ネットワーク、WANは局所的なネットワークである。
b) LANは通常WANよりも高速な通信が可能である。
c) LANの方がWANよりも運用コストが高い。
d) WANはパケット交換網のみを使用し、LANは回線交換網のみを使用する。
回答例:
正解は b) です。
解説:
a) 誤りです。LANは局所的なネットワーク、WANは広域ネットワークです。
b) 正しいです。LANは通常、WANよりも高速な通信が可能ですが、WANでも高速な通信が可能な場合があります。
c) 誤りです。一般的に、WANの方がLANよりも運用コストが高くなります。
d) 誤りです。WANはパケット交換網と回線交換網の両方を使用することがあり、LANも主にパケット交換技術を使用します。
例題2: WANサービスに関する問題
ある企業が全国5拠点を接続するWANを構築しようとしています。コストを抑えつつ、セキュアな通信を実現したい場合、最も適切なWANサービスはどれか。
a) 専用線サービス
b) IP-VPNサービス
c) インターネットVPN
d) 公衆回線サービス
回答例:
正解は b) です。
解説:
a) 専用線サービスは高セキュアですが、コストが高くなりがちです。
b) IP-VPNサービスは、セキュリティと経済性のバランスが良く、この要件に最適です。
c) インターネットVPNはコスト面で有利ですが、公衆インターネットを経由するため、通信品質や遅延の面で不確実性があります。また、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。
d) 公衆回線サービスは経済的ですが、セキュリティ面で課題があります。
5. まとめ
本記事では、LANとWANの仕組み、特徴、構成要素、運用費用について解説しました。また、WANを構成する際に利用する電気通信事業者が提供するサービスの種類と特徴についても触れました。
主なポイントは以下の通りです:
- LANは局所的で高速、WANは広域をカバーするネットワークである。
- LANの主な構成要素には、NIC、スイッチ、ルーター、ケーブル、IDF、MDFなどがある。
- WANサービスには、インターネット接続、専用線、IP-VPN、広域イーサネット、インターネットVPNなどがある。
- WANの課金方式には、従量制や月額固定料金などがある。
- 企業ネットワークでは、LANとWANを組み合わせて利用するのが一般的である。
- クラウドサービスの普及により、インターネット接続の重要性が増している。
- WANでは、セキュリティ管理が重要であり、適切な対策が必要である。
- SD-WANなどの新しい技術により、WANの柔軟性と効率性が向上している。