1.7.1. 実記憶管理

1. 概要

 実記憶管理は、コンピュータシステムにおける重要な概念の一つです。これは、オペレーティングシステム(OS)が主記憶装置(RAM)を効率的に管理するための方法を指します。実記憶管理の主な目的は、限られた物理メモリリソースを最大限に活用し、複数のプログラムやプロセスが同時に実行できるようにすることです。

2. 詳細説明

2.1. 実アドレス方式

 実アドレス方式は、プログラムが直接物理メモリアドレスを使用する方式です。この方式では、プログラムは実際の物理メモリ上の位置を直接指定してデータにアクセスします。

2.2. 記憶領域の割当て方式

2.2.1. 単一連続割当て方式

 単一連続割当て方式は、メモリ全体を一つのプログラムに割り当てる最も単純な方式です。この方式は、一度に一つのプログラムしか実行できないため、現代のマルチタスクシステムでは使用されません。

2.2.2. 固定区画方式

 固定区画方式は、メモリを固定サイズの区画に分割し、各区画にプログラムを割り当てる方式です。この方式は実装が簡単ですが、内部フラグメンテーションの問題が発生する可能性があります。

2.2.3. 可変区画方式

 可変区画方式は、プログラムのサイズに応じて動的にメモリを割り当てる方式です。この方式では、外部フラグメンテーションの問題が発生する可能性がありますが、メモリの利用効率は向上します。

2.3. 記憶域管理アルゴリズム

 可変区画方式では、以下のようなアルゴリズムを用いて空き領域を探索します:

  1. ファーストフィット:最初に見つかった十分な大きさの空き領域に割り当てる
  2. ベストフィット:最も適したサイズの空き領域に割り当てる
  3. ワーストフィット:最も大きな空き領域に割り当てる

2.4. フラグメンテーションとその対策

 フラグメンテーションは、メモリ空間が小さな断片に分割される現象です。これには内部フラグメンテーションと外部フラグメンテーションがあります。

 対策として、メモリコンパクションがあります。これは、使用中のメモリ領域を連続した領域に移動させ、空き領域を一つにまとめる操作です。

2.5. スワッピングとオーバーレイ

 スワッピングは、実行中のプログラムを一時的に二次記憶装置に退避(スワップアウト)し、必要に応じて再びメモリに読み込む(スワップイン)技術です。

 オーバーレイは、大きなプログラムを複数の部分に分割し、必要な部分だけをメモリに読み込む技術です。これにより、物理メモリより大きなプログラムの実行が可能になります。

2.6. セグメント方式

 セグメント方式は、プログラムを論理的な単位(セグメント)に分割し、各セグメントを個別に管理する方式です。この方式により、プログラムの構造に応じた柔軟なメモリ管理が可能になります。

3. 応用例

 実記憶管理の技術は、現代のコンピュータシステムで広く応用されています。以下にいくつかの例を挙げます:

  1. スマートフォンのアプリケーション管理:限られたメモリリソースを効率的に使用するため、不要なアプリをバックグラウンドでスワップアウトします。
  2. 仮想化技術:複数の仮想マシンが同じ物理ハードウェア上で動作する際、各仮想マシンにメモリを効率的に割り当てるために実記憶管理技術が使用されます。
  3. データベース管理システム:大量のデータを扱うデータベースシステムでは、効率的なメモリ使用のためにセグメント方式やスワッピングが活用されています。

4. 例題

例題1

 実記憶管理において、ファーストフィット、ベストフィット、ワーストフィットの違いを説明してください。

回答例:
 これらは可変区画方式におけるメモリ割当てアルゴリズムです。

  • ファーストフィット:最初に見つかった十分な大きさの空き領域に割り当てる
  • ベストフィット:プロセスサイズに最も近い空き領域に割り当てる
  • ワーストフィット:最大の空き領域に割り当てる

例題2

 メモリコンパクションとは何か、またその目的を説明してください。

回答例:
 メモリコンパクションとは、断片化したメモリ領域を整理し、使用中の領域を連続させる操作です。目的は外部フラグメンテーションを解消し、大きな連続した空き領域を作り出すことで、メモリの利用効率を向上させることです。

例題3

 スワッピングとオーバーレイの違いを説明してください。

回答例:

  • スワッピング:プロセス全体を主記憶と二次記憶間で入れ替える技術
  • オーバーレイ:プログラムの一部分のみを主記憶に配置し、必要に応じて他の部分と入れ替える技術

スワッピングはOSが自動的に行い、オーバーレイはプログラマが明示的に設計する点も異なります。

5. まとめ

 実記憶管理は、限られた物理メモリリソースを効率的に活用するための重要な技術です。主な概念として、実アドレス方式、固定区画方式、可変区画方式、記憶域管理アルゴリズム、フラグメンテーション対策、スワッピング、オーバーレイ、セグメント方式などがあります。