1. 概要
システム構成は、情報システムを設計・構築する上で極めて重要な概念です。適切なシステム構成を選択することで、システムの信頼性、可用性、拡張性、性能などを最適化することができます。応用情報処理技術者として、様々なシステム構成の種類と特徴を理解し、それらを適切に活用する能力が求められます。
2. 詳細説明
2.1. 代表的なシステム構成
2.1.1. デュアルシステムとデュプレックスシステム
デュアルシステムは、2つの独立したシステムを並列に稼働させる構成です。一方のシステムが故障した場合、もう一方のシステムが処理を引き継ぎます。デュプレックスシステムは、デュアルシステムの一種で、主系(現用系)と従系(待機系)に分かれ、主系が故障した場合に従系が処理を引き継ぎます。
2.1.2. クラスタとクラスタリング
クラスタは、複数のコンピュータを連携させて一つのシステムとして動作させる構成です。クラスタリングは、クラスタを構築するプロセスを指します。負荷分散や高可用性を実現するために使用されます。
2.1.3. タンデム結合
タンデム結合は、複数のプロセッサを直列に接続し、それぞれが異なる処理を担当する構成です。データ処理の効率化に有効です。
2.1.4. マルチプロセッサシステム
マルチプロセッサシステムは、複数のプロセッサを使用して並列処理を行う構成です。処理能力の向上が期待できます。
2.2. システムの信頼性向上
2.2.1. 冗長構成
冗長構成は、システムの重要な部分を複数用意し、一部が故障しても全体の機能を維持する構成です。ホットサイト(常時稼働の予備サイト)、ウォームサイト(短時間で稼働可能な予備サイト)、コールドサイト(稼働までに時間を要する予備サイト)などのバックアップサイトも冗長構成の一種です。
2.3. レスポンス速度の向上
2.3.1. 負荷分散
負荷分散は、複数のシステムやサーバーに処理を分散させることで、全体のレスポンス速度を向上させる技術です。ロードシェアリングシステムは、負荷分散の代表的な例です。
2.4. システム構成の種類
2.4.1. 結合度による分類
- 密結合:シェアードエブリシング構成で、メモリやディスクなどのリソースを共有します。
- 疎結合:シェアードナッシング構成で、各ノードが独立したリソースを持ちます。
2.4.2. クライアント・サーバー構成
- シンクライアント:クライアント側の機能を最小限に抑え、サーバー側で主要な処理を行う構成です。
- ピアツーピア:クライアントとサーバーの区別なく、各ノードが対等に通信を行う構成です。
2.4.3. 分散処理システム
- グリッドコンピューティング:地理的に分散したコンピュータリソースを統合して利用する構成です。
- クラウドコンピューティング:インターネットを通じてコンピューティングリソースを提供するサービスです。SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)、FaaS(Function as a Service)などの形態があります。
- エッジコンピューティング:データ処理をネットワークのエッジ(端)で行う構成です。
2.4.4. 仮想化技術
- ホスト型仮想化:物理マシン上のホストOSで仮想化ソフトウェアを動作させる方式です。
- ハイパーバイザー型仮想化:物理マシン上で直接ハイパーバイザーを動作させる方式です。
- コンテナ型仮想化:OSレベルで仮想化を行い、軽量な仮想環境を提供する方式です。
- VM(Virtual Machine):仮想マシンは、物理的なハードウェアをソフトウェアでエミュレートしたものです。
- VDI(Virtual Desktop Infrastructure):デスクトップ環境を仮想化し、集中管理する技術です。
3. 応用例
3.1. 高可用性システムの構築
金融機関のオンラインバンキングシステムでは、デュプレックスシステムやクラスタリングを採用し、システムの冗長性を確保しています。これにより、一部のサーバーが故障しても、サービスを継続して提供することが可能になります。
3.2. クラウドサービスの活用
多くの企業が、SaaS形態のクラウドサービスを利用してオフィスソフトウェアやCRMシステムを運用しています。これにより、初期投資を抑えつつ、柔軟なスケーリングが可能になります。
3.3. エッジコンピューティングの実践
IoTデバイスを活用した製造ラインでは、エッジコンピューティングを採用し、センサーデータの一次処理をデバイス近傍で行うことで、リアルタイム性の向上とネットワーク負荷の軽減を実現しています。
3.4. 仮想化技術の導入
多くの企業がサーバー仮想化技術を導入し、物理サーバーの集約によるコスト削減と運用効率の向上を図っています。また、VDIを活用してテレワーク環境を整備する企業も増加しています。
4. 例題
例題1
Q: クラウドコンピューティングのサービスモデルにおいて、インフラストラクチャを提供するモデルは何と呼ばれますか?
A: IaaS(Infrastructure as a Service)と呼ばれます。
例題2
Q: システムの冗長化を図る際、常に稼働状態にある予備のシステムを何と呼びますか?
A: ホットサイトと呼びます。
例題3
Q: 仮想マシンを稼働中のサーバーから別のサーバーへ移動させる技術を何と呼びますか?
A: ライブマイグレーションと呼びます。
例題4
Q: 以下のシステム構成の特徴について、正しいものを選びなさい。
- シェアードエブリシング
- シェアードナッシング
a) 1は密結合、2は疎結合である
b) 1は疎結合、2は密結合である
c) 1と2は共に密結合である
d) 1と2は共に疎結合である
A: 正解は a) です。シェアードエブリシングは密結合、シェアードナッシングは疎結合の構成です。
5. まとめ
システム構成は、情報システムの設計において重要な要素です。デュアルシステム、クラスタ、冗長構成などの技術を適切に選択・組み合わせることで、システムの信頼性や性能を向上させることができます。また、クラウドコンピューティングや仮想化技術の進展により、より柔軟で効率的なシステム構築が可能になっています。