1.7. 信頼性設計

1. 概要

 信頼性設計とは、システムが期待通りに動作し続ける能力を高めるための設計手法です。これは、システム障害の影響を最小限に抑え、安定したサービスを提供するために不可欠な考え方です。特に、重要なビジネスシステムや社会インフラを支える情報システムにおいて、信頼性設計は極めて重要な役割を果たします。

2. 詳細説明

2.1. 信頼性設計の基本概念

2.1.1. フォールトとフェイルure

 まず、信頼性設計を理解する上で重要な「フォールト」と「フェイルure」の概念について説明します。

  • フォールト:システムの一部に発生した障害や誤り
  • フェイルure:システム全体が機能を停止する状態  信頼性設計の目的は、フォールトが発生してもそれがフェイルureに至らないようにすることです。

2.1.2. 信頼性ブロック図

 システムの信頼性を視覚的に表現するツールとして、信頼性ブロック図があります。これは、システムを構成する要素とその関係を図示したもので、信頼性解析や改善策の検討に利用されます。

2.2. フォールトトレラント技術

 フォールトトレラントシステムは、一部の構成要素に障害が発生しても、システム全体としての機能を維持できるように設計されたシステムです。主な技術として以下があります。

2.2.1. 予備切替

 主系と待機系を用意し、主系に障害が発生した場合に待機系に切り替える方式です。

2.2.2. 並列運転

 複数の装置を同時に稼働させ、一部に障害が発生しても残りの装置で処理を継続する方式です。

2.2.3. 競合制御

 複数の装置が同じ処理を行い、結果を比較して正しい出力を決定する方式です。

2.2.4. アクティブ-スタンバイ構成

 主系(アクティブ)と待機系(スタンバイ)を用意し、主系に障害が発生した場合に待機系に切り替える構成です。

2.2.5. アクティブ-アクティブ構成

 複数のシステムを同時に稼働させ、負荷分散と冗長性を確保する構成です。

2.3. フォールトアボイダンス技術

 フォールトアボイダンスは、障害の発生そのものを防ぐ技術です。主な手法として以下があります。

2.3.1. フェールセーフ

 障害が発生した際に、システムを安全な状態に移行させる設計手法です。

2.3.2. フェールソフト

 障害が発生しても、システムの一部の機能は継続して動作させる設計手法です。

2.3.3. フールプルーフ

 人間の誤操作を防ぐための設計手法です。

2.4. その他の信頼性向上技術

2.4.1. 無停止コンピュータ

 システムを停止することなく、保守や拡張を行うことができるコンピュータシステムです。

2.4.2. UPS(無停電電源装置)

 停電時にもシステムの電源を確保し、安全にシャットダウンや運転継続を行うための装置です。

3. 応用例

3.1. 金融システムでの応用

 銀行のオンラインシステムでは、アクティブ-アクティブ構成を採用し、複数のデータセンターで同時に処理を行うことで、災害時でもサービスを継続できるようにしています。

3.2. 航空管制システムでの応用

 航空管制システムでは、フェールセーフ設計を採用し、システム障害時には安全な状態を維持できるようにしています。また、UPSを導入することで、停電時にも継続的な運用を可能にしています。

3.3. 自動車産業での応用

 自動運転技術では、センサーの冗長化や並列処理により、一部のセンサーが故障しても安全な走行を継続できるようにしています。

4. 例題

例題1

Q: フォールトトレラントシステムの代表的な構成方式を3つ挙げ、それぞれの特徴を簡潔に説明してください。

A: 1. 予備切替:主系と待機系を用意し、主系障害時に待機系に切り替える。

  1. 並列運転:複数装置を同時稼働し、一部障害時も残りで継続。
  2. 競合制御:複数装置で同じ処理を行い、結果を比較して正しい出力を決定。

例題2

Q: UPS(無停電電源装置)の主な役割を2つ挙げてください。

A: 1. 停電時にシステムへの電源供給を継続し、急なシャットダウンを防ぐ。

  1. 電源復旧までの間、システムを安全にシャットダウンするための時間を確保する。

例題3

Q: フールプルーフの設計例を2つ挙げてください。

A: 1. 自動車のシフトレバーをParkに入れないとキーが抜けない設計。

  1. 電子レンジのドアを開けると自動的に動作が停止する設計。

5. まとめ

 信頼性設計は、システム障害の影響を最小限に抑え、安定したサービスを提供するために不可欠な考え方です。主要な技術として、フォールトトレラント(障害許容)とフォールトアボイダンス(障害回避)があります。

 フォールトトレラント技術には、予備切替、並列運転、競合制御などがあり、システムの一部に障害が発生しても全体の機能を維持します。フォールトアボイダンス技術には、フェールセーフ、フェールソフト、フールプルーフなどがあり、障害の発生そのものを防ぎます。