1.6.3. 割込み

1. 概要

 割込み(インタラプト)は、プロセッサの動作原理において非常に重要な機能です。コンピュータシステムが効率的かつ柔軟に動作するために不可欠な仕組みであり、予期せぬイベントや優先度の高い処理に迅速に対応することを可能にします。

 割込みの重要性は以下の点にあります:

  • 効率的な処理の実現
  • リアルタイム性の確保
  • システムの安定性と信頼性の向上

 割込みの仕組みや種類、多重割込み時の処理について理解することが求められます。

2. 詳細説明

2.1. 割込みの仕組み

 割込みは、プロセッサが実行中のプログラムを一時中断し、別の処理(割込みハンドラ)を実行する機能です。主な流れは以下の通りです:

  1. 割込み要求の発生
  2. 現在の実行状態の保存
  3. 割込みハンドラの実行
  4. 元の実行状態の復元と処理の再開

 割込み制御は、この一連の流れを管理し、システムの安定性を確保します。

2.2. 割込みの種類

 割込みは大きく内部割込みと外部割込みに分類されます。

2.2.1. 内部割込み

 プロセッサ内部で発生する割込みです。主な種類は以下の通りです:

  • SVC(SuperVisor Call)割込み:ユーザプログラムからOS機能を呼び出す際に使用
  • プログラム割込み:オーバーフローなどのプログラム例外時に発生
  • マシンチェック割込み:ハードウェア故障時に発生

2.2.2. 外部割込み

 プロセッサ外部のデバイスから発生する割込みです。代表的なものに以下があります:

  • 入出力割込み:入出力装置からの処理完了通知など

2.3. アドレス指定方式

 割込み処理では、メモリアドレスの指定方法も重要です。主な方式は以下の通りです:

  • ベースアドレス指定:基準アドレスからの相対位置で指定
  • 相対アドレス指定:現在のアドレスからの相対位置で指定
  • 絶対アドレス指定:メモリの実際の位置を直接指定
  • 即値アドレス指定:命令内に直接アドレス値を含める

 これらの指定方式を使用して、有効アドレス(実効アドレス)が計算されます。

2.4. 多重割込み

 複数の割込みが同時に発生した場合、優先度に基づいて処理されます。高優先度の割込みが低優先度の割込み処理中に発生した場合、現在の割込み処理を中断して高優先度の割込みを処理します。

3. 応用例

 割込みの実際の応用例には以下のようなものがあります:

  1. キーボード入力処理:キー入力時に割込みを発生させ、効率的に入力を処理
  2. ネットワーク通信:パケット到着時に割込みを使用し、リアルタイムでデータを受信
  3. リアルタイムシステム:センサーからのデータ取得や緊急停止など、即時対応が必要な処理に活用
  4. マルチタスクOS:タイムスライスごとにタスク切り替えを行う際に割込みを利用

4. 例題

  1. 内部割込みと外部割込みの違いを説明し、それぞれの例を2つずつ挙げてください。
  2. SVC割込みの役割について簡潔に説明してください。
  3. 多重割込みが発生した場合の処理順序について、優先度を考慮して説明してください。
  4. 以下のアドレス指定方式について、それぞれの特徴を1文で説明してください。
    a) ベースアドレス指定
    b) 相対アドレス指定
    c) 絶対アドレス指定
    d) 即値アドレス指定

回答例:

  1. 内部割込みはプロセッサ内部で発生し、外部割込みはプロセッサ外部のデバイスから発生します。
    内部割込みの例:プログラム割込み、マシンチェック割込み
    外部割込みの例:入出力割込み、タイマー割込み
  2. SVC割込みは、ユーザプログラムがOS機能を呼び出す際に使用される特殊な割込みで、ユーザモードから特権モードへの切り替えを安全に行うために利用されます。
  3. 多重割込みの処理順序:
    a) 現在の割込み処理の状態を保存
    b) 新たに発生した割込みの優先度を確認
    c) 新しい割込みの優先度が高ければ、その処理を開始
    d) 低優先度の割込み処理は後回しにされ、高優先度の処理完了後に再開
  4. アドレス指定方式の特徴:
    a) ベースアドレス指定:基準となるアドレスからの相対位置でメモリ位置を指定
    b) 相対アドレス指定:現在のプログラムカウンタの値からの相対位置でアドレスを指定
    c) 絶対アドレス指定:メモリ内の実際の位置を直接指定する方式
    d) 即値アドレス指定:命令内に直接アドレス値を含める方式

5. まとめ

 割込みは、プロセッサの効率的な動作と柔軟な処理を可能にする重要な機能です。内部割込みと外部割込み、様々な種類の割込み(SVC、入出力、マシンチェックなど)、多重割込み時の処理順序について理解することが重要です。また、アドレス指定方式(ベースアドレス、相対アドレス、絶対アドレス、即値アドレス)と有効アドレスの概念も割込み処理において重要な役割を果たします。これらの知識は、応用情報処理技術者試験のみならず、実際のシステム設計や運用においても非常に重要となります。