1.10.1. 命令とデータの流れ

1. 概要

 並列処理は、複数の処理を同時に実行することで、コンピュータシステムの性能を向上させる技術です。現代のコンピュータシステムにおいて、並列処理は高速化と効率化を実現するための重要な要素となっています。本記事では、命令とデータの流れに着目した代表的な並列処理方式について解説します。

2. 詳細説明

 並列処理方式は、命令とデータの流れに基づいて以下の4つに分類されます。

2.1. SISD (Single Instruction Single Data)

 SISDは、1つの命令ストリームが1つのデータストリームを処理する方式です。

  • 特徴:従来の逐次処理方式
  • 利点:シンプルな構造で実装が容易
  • 欠点:並列性がないため、処理速度に限界がある

2.2. SIMD (Single Instruction Multiple Data)

 SIMDは、1つの命令で複数のデータを同時に処理する方式です。

  • 特徴:ベクトル処理やアレイ処理に適している
  • 利点:データ並列性が高い処理で効果的
  • 欠点:すべての処理に適用できるわけではない

2.3. MISD (Multiple Instruction Single Data)

 MISDは、複数の命令が1つのデータストリームを処理する方式です。

  • 特徴:理論上は存在するが、実用的な例は少ない
  • 利点:特定の用途(例:フォールトトレラントシステム)で有効
  • 欠点:一般的な用途には適さない

2.4. MIMD (Multiple Instruction Multiple Data)

 MIMDは、複数の命令が複数のデータを同時に処理する方式です。

  • 特徴:最も汎用性が高い並列処理方式
  • 利点:多様な並列処理に対応可能
  • 欠点:実装と制御が複雑

3. 応用例

3.1. SIMD応用例

  • 画像処理:同じ演算を画像の複数のピクセルに同時適用
  • 科学技術計算:行列演算や数値シミュレーション

3.2. MIMD応用例

  • マルチコアプロセッサ:複数のコアが独立して異なるタスクを実行
  • 分散コンピューティング:複数のコンピュータが協調して大規模な問題を解決

4. 例題

問題1

SIMD方式の特徴と、その応用例を1つ挙げてください。

<回答例>
SIMD方式の特徴:

  • 1つの命令で複数のデータを同時に処理する
  • データ並列性が高い処理に適している

応用例:
画像処理において、フィルタリング操作を複数のピクセルに同時に適用する。

問題2

以下の並列処理方式のうち、最も汎用性が高いとされるものはどれですか?
a) SISD b) SIMD c) MISD d) MIMD

<回答例>
正解: d) MIMD

解説:MIMDは複数の命令が複数のデータを同時に処理する方式であり、多様な並列処理に対応できるため、最も汎用性が高いとされています。

5. まとめ

並列処理方式は、命令とデータの流れに基づいてSISD、SIMD、MISD、MIMDの4つに分類されます。これらの方式は、それぞれ異なる特徴と適用領域を持っています。

  • SISDは従来の逐次処理
  • SIMDはデータ並列性が高い処理に適している
  • MISDは理論上存在するが実用例は少ない
  • MIMDは最も汎用性が高く、現代の並列システムの多くで採用されている