1. 概要
情報システムの構築は、単にシステムを導入することがゴールではありません。情報システムを経営に活かし、ビジネス価値を最大化するためには、システムの活用促進と評価が不可欠です。システム活用促進とは、ユーザーがシステムを効果的に利用できるよう支援する活動であり、システム評価とはその利用実態を測定し、改善につなげる活動です。
本テーマの目的は「情報システムを有効に活用し、経営に活かすために、情報システムの構築時から活用促進、普及啓発活動を継続的に行い、情報システムの利用実態を評価、検証して改善していくこと、各活動の考え方、役割、手順を理解する」ことにあります。近年ではBYOD(Bring Your Own Device)の普及やチャットボットの導入など、システム活用の形態も多様化しており、活用促進と評価の重要性はさらに高まっています。
flowchart TD A["システム構築・導入"] --> B["システム活用促進 ・ユーザー教育 ・普及啓発活動 ・サポート体制構築"] B --> C["システム評価 ・利用状況分析 ・効果測定 ・満足度調査"] C --> D["継続的な改善 ・機能拡張・改修 ・運用方法見直し ・教育内容更新"] D --> B
2. 詳細説明
2.1. システム活用促進の考え方
システム活用促進とは、情報システムが組織内で効果的に利用されるよう、様々な施策を計画・実行することです。以下の観点から促進活動を考えます。
2.1.1. ユーザー教育・トレーニング
情報システムの機能や操作方法をユーザーに教育することは、活用促進の基本です。集合研修、eラーニング、マニュアル配布などの手法があります。また、近年ではチャットボットを活用した質問対応システムも普及しています。
2.1.2. ヘルプデスク・サポート体制
システム利用中の問題解決をサポートする体制を整備します。電話やメール、チャットによる問い合わせ対応、FAQの整備などが含まれます。
2.1.3. 普及啓発活動
システム活用のメリットや成功事例を組織内に広める活動です。社内報やイントラネット、成功事例発表会などを通じて情報を共有します。
2.1.4. インセンティブ設計
システム活用に対するモチベーションを高めるための仕組みづくりです。活用度の高いユーザーや部門の表彰、業績評価への反映などが含まれます。
手法 | 内容 | 期待される効果 |
---|---|---|
ユーザー教育・トレーニング | 集合研修、eラーニング、マニュアル配布など | システム操作スキルの向上、利用への不安解消 |
ヘルプデスク・サポート体制 | 電話・メール対応、FAQ整備、チャットボット導入など | 問題発生時の迅速な解決、利用継続の支援 |
普及啓発活動 | 社内報での成功事例紹介、活用セミナー開催など | 利用メリットの理解促進、組織全体への浸透 |
インセンティブ設計 | 活用度の高いユーザー表彰、業績評価への反映など | 利用モチベーションの向上、積極的活用の促進 |
2.2. システム評価の考え方
システム評価とは、導入した情報システムが当初の目的通りに機能しているかを測定・分析することです。以下の観点から評価を行います。
2.2.1. 利用状況評価
システムの利用頻度、利用者数、機能ごとの利用状況などを定量的に測定します。ログ分析やアクセス統計などの手法を用います。
2.2.2. 効果測定
システム導入による業務効率化、コスト削減、売上向上などの効果を測定します。KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に測定します。
2.2.3. ユーザー満足度調査
システムに対するユーザーの満足度や改善要望を調査します。アンケートやインタビュー、フォーカスグループなどの手法を用います。
2.2.4. 改善サイクル(PDCA)
評価結果に基づき、システムや運用方法の改善を継続的に行います。Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)のサイクルを回します。
flowchart TD A["Plan ・評価指標(KPI)の設定 ・評価スケジュールの策定 ・評価方法の決定"] --> B["Do ・システム利用状況の測定 ・ユーザーアンケート実施 ・効果測定データ収集"] B --> C["Check ・測定結果の分析 ・当初目標との比較 ・問題点・改善点の抽出"] C --> D["Act ・改善策の実施 ・活用促進策の見直し ・次期計画への反映"] D --> A
3. 応用例
3.1. BYOD環境での活用促進と評価
BYOD(Bring Your Own Device)は、従業員が個人所有のデバイスを業務に利用する形態です。BYOD環境でのシステム活用促進と評価の例を示します。
3.1.1. 活用促進の例
- セキュリティポリシーの策定と周知
- 各種OS・デバイスに対応したマニュアルの整備
- BYOD利用者向けのヘルプデスク設置
- チャットボットによる24時間サポート体制の構築
- 先進的なBYOD活用事例の社内共有
3.1.2. 評価の例
- デバイス種別ごとの利用状況分析
- BYOD導入による移動時間の有効活用度測定
- セキュリティインシデント発生状況のモニタリング
- ユーザー満足度調査と改善要望収集
- 総所有コスト(TCO)削減効果の測定
区分 | ポイント | 具体的取り組み |
---|---|---|
活用促進 | セキュリティ対策 | MDM導入、セキュリティポリシー策定・周知 |
マルチデバイス対応 | 各種OS・画面サイズ対応、レスポンシブデザイン | |
サポート体制 | デバイス別マニュアル整備、チャットボットによる24時間対応 | |
評価 | 利用状況分析 | デバイス種別ごとの利用率、アクセス時間帯分析 |
効果測定 | 業務効率化・移動時間有効活用度、コスト削減効果 | |
リスク評価 | セキュリティインシデント発生状況、情報漏洩リスク |
3.2. チャットボットを活用したシステム普及支援
チャットボットは、ユーザーからの質問に自動応答するAIシステムです。チャットボットを活用したシステム普及支援の例を示します。
3.2.1. 活用促進の例
- システム操作方法を教えるチャットボットの導入
- よくある質問(FAQ)の自動応答化
- チャットボットを通じたシステム利用のヒント提供
- 新機能のお知らせと利用方法の案内
- 利用者の習熟度に応じた段階的なガイダンス
3.2.2. 評価の例
- チャットボットへの問い合わせ内容の分析
- 解決率・満足度の測定
- チャットボット導入前後のヘルプデスク負荷比較
- ユーザーからのフィードバック収集と改善
- チャットボットの知識ベース拡充状況の評価
4. 例題
例題1
A社では新しい営業支援システムを導入しましたが、利用率が低いという問題が発生しています。システム活用促進のための効果的な施策として、最も適切なものを選びなさい。
- システムのバージョンアップを行い、より高度な機能を追加する
- 利用率の低いユーザーに対して、システム利用を義務付ける
- 実際の業務に即したトレーニングを実施し、成功事例を共有する
- システムの問題点を洗い出し、全面的に再構築する
正解: 3
解説: システム活用促進においては、ユーザーがシステムの価値を理解し、自発的に活用できるよう支援することが重要です。実際の業務に即したトレーニングと成功事例の共有は、システムの有用性を実感させ、利用モチベーションを高める効果があります。1は機能追加が必ずしも利用率向上につながるとは限りません。2は強制的なアプローチで、ユーザーの反発を招く恐れがあります。4は問題の原因分析なしに全面再構築することは過剰対応です。
例題2
次のうち、BYOD(Bring Your Own Device)環境でのシステム活用評価として、最も適切な指標はどれか。
- 社内LANの通信速度
- 従業員一人あたりのIT投資額
- デバイス種別ごとのシステム利用率と業務効率化効果
- 業務アプリケーションの市場シェア
正解: 3
解説: BYOD環境の評価では、様々なデバイスでシステムが効果的に利用されているかを測定することが重要です。デバイス種別ごとのシステム利用率と業務効率化効果を測定することで、BYODの本来の目的である「従業員の使いやすさ向上」と「業務効率化」が達成されているかを評価できます。1と2はBYOD特有の評価指標とは言えません。4は内部評価指標としては適切ではありません。
例題3
チャットボットを活用したシステム普及支援の評価方法として、最も適切なものはどれか。
- チャットボットの応答速度
- チャットボットの質問解決率とユーザー満足度
- チャットボットの開発コスト
- チャットボットの利用可能時間
正解: 2
解説: チャットボットの評価では、ユーザーの質問に正確に答え、問題を解決できているかが最も重要です。質問解決率とユーザー満足度は、チャットボットがシステム普及支援ツールとして効果的に機能しているかを直接的に評価する指標です。1は重要な要素ですが、それだけでは有効性を評価できません。3は導入時の判断材料ですが、運用後の評価指標としては適切ではありません。4は可用性の指標ですが、24時間対応が基本のチャットボットでは差別化要因になりません。
例題4 (記述式)
ある企業で情報システムの活用度が低いという問題に直面しています。システム活用促進と評価のPDCAサイクルに基づき、具体的な改善計画を300字程度で述べなさい。
まず、現状分析として利用率が低い原因を特定するため、システムログ分析とユーザーへのアンケート調査を実施する(Check)。次に、調査結果をもとに改善計画を策定し(Plan)、以下の施策を実行する(Do):①業務フローに沿った実践的なトレーニングの実施、②チャットボットを活用した24時間サポート体制の構築、③部門ごとの成功事例を共有するワークショップの開催、④システム活用度を部門評価に組み込むインセンティブ制度の導入。
これらの施策実施後、定期的に利用状況をモニタリングし、KPIとして設定した「アクティブユーザー率」「1ユーザーあたりの平均利用時間」「ユーザー満足度」を測定する。評価結果に基づき、次期の改善計画を策定・実行するサイクルを確立する(Act)。
5. まとめ
システム活用促進と評価は、情報システムから最大限の価値を引き出すために不可欠なプロセスです。本テーマの要点は以下の通りです。
- システム活用促進の目的は、ユーザーがシステムを効果的に活用し、業務改善や経営貢献を実現することです。
- 活用促進の主な手法には、ユーザー教育・トレーニング、ヘルプデスク・サポート体制の整備、普及啓発活動、インセンティブ設計などがあります。
- システム評価の目的は、システムの利用状況や効果を測定し、継続的な改善につなげることです。
- 評価の主な手法には、利用状況評価、効果測定、ユーザー満足度調査、改善サイクル(PDCA)の実施などがあります。
- BYOD(Bring Your Own Device)やチャットボットなど、新しい技術・形態に対応した活用促進・評価手法の検討も重要です。
システムの構築時から活用促進と評価を意識し、計画的に実施することで、情報システムの効果を最大化し、継続的な改善を実現することができます。