2.8. 供給者管理

1. 概要

 本記事では、応用情報処理技術者試験シラバス「サービスマネジメントシステムの計画及び運用」の中の項目である供給者管理について解説します。
 特に、外部供給者との関係構築や契約の内容、パフォーマンスの監視に加え、内部供給者および供給者として行動する顧客の管理についても詳述します。
 また、アウトソーシングの利用SaaSPaaSIaaS などのクラウドサービスの利用など、現代のIT環境における実例を取り入れることで、実務に近い視点からの理解を促進します。

2. 詳細説明

2.1. 主要な概念

 供給者管理とは、サービス提供に必要なリソースやサービスを調達する際、関係者間での情報共有、契約、パフォーマンス評価などを通じて、円滑な運用を実現するプロセスです。
   - 外部供給者
  企業外部の業者やサービスプロバイダーとの関係を管理し、契約に基づいてサービスを提供してもらいます。例として、クラウドサービス(SaaSPaaSIaaS)やアウトソーシングの利用による業務委託が挙げられます。
   - 内部供給者
  自社内の各部門やリソース管理部門が、サービス提供のために連携・調整を行う役割を担います。
   - 供給者として行動する顧客
  利用者が単なる受け手ではなく、自らの業務改善やサービス向上に向けて、供給者と連携し意見を交わす存在として認識されるケースを指します。
   - 契約
  外部供給者との関係において、サービス内容、責任範囲、パフォーマンス基準などを明確に定めた文書です。

   以下の図(図1)は、外部供給者内部供給者、および供給者として行動する顧客間の関係性を視覚的に示したものです。

flowchart TD
    A[サービス提供者(企業)]
    B[外部供給者]
    C[内部供給者]
    D[供給者として行動する顧客]
    
    A -->|契約・合意| B
    A -->|調整・連携| C
    A -->|意見交換・要求提示| D
    B -- 提供するサービス・情報 --> A
    C -- 内部調整・運用管理 --> A
    D -- フィードバック・改善提案 --> A

2.2. 理論的背景と運用手法

 契約は、サービス提供における基盤であり、各供給者との間でサービス内容、責任、パフォーマンス指標(SLA)を明文化することで、期待値や役割の明確化を図ります。
   また、サービスマネジメントでは、定期的なパフォーマンスの監視と、トラブル発生時のリスク管理が重要です。たとえば、予期せぬサービスダウン時のエスカレーションルートの整備や、改善策の迅速な実施が求められます。
   さらに、現代のIT環境では、SaaSPaaS、**IaaS などのクラウドサービスの利用が一般化しており、これらのサービスモデルの特徴やメリット・デメリットを把握することは、契約交渉やパフォーマンス評価において非常に重要です。
   以下の表(表1)は、主要なクラウドサービスモデルの比較を示しています。

サービスモデル 概要 主な利用シーン メリット デメリット
SaaS アプリケーションをサービスとして提供 業務アプリ、メール、CRMなど 導入が容易、運用コスト削減 カスタマイズ制限、データセキュリティの懸念
PaaS プラットフォームをサービスとして提供 アプリ開発、テスト環境構築 開発環境の整備、迅速な開発 プラットフォーム依存、制約事項の存在
IaaS インフラストラクチャをサービスとして提供 サーバ、ネットワーク、ストレージの提供 柔軟なスケーリング、コスト効率 運用管理の負担、セキュリティ対策の必要性

3. 応用例

3.1. 外部供給者との関係と契約の運用例

 ある企業では、システムの一部をIaaS などのクラウドサービスの利用により外部供給者から調達しています。
 この際、契約書にはサービスの可用性、レスポンス時間、インシデント対応手順、及びトラブル発生時のエスカレーションルートが明記され、定期的なパフォーマンス評価が実施されています。
 さらに、アウトソーシングの利用により、業務プロセスの一部を外部に委託し、契約に基づくリスク管理と改善活動が行われています。

3.2. 内部供給者および供給者として行動する顧客との連携例

 サービス提供側の内部リソースに関しては、内部供給者間で情報共有や調整を密に行い、サービスレベル目標(SLA)を策定しています。
 また、供給者として行動する顧客は、利用者としてだけでなく、改善提案や運用に関するフィードバックを提供する役割を担っています。
 例えば、社内の各部門とIT部門が定期的にミーティングを行い、SLAに基づいたパフォーマンスの確認と改善策の協議を実施することで、迅速な問題解決とサービス品質の向上が図られています。

4. 例題

例題1

 【問題】
 ある企業がSaaSPaaSIaaSなどのクラウドサービスを利用している場合、外部供給者との契約において重要なポイントはどれか。以下の選択肢から最も適切なものを選びなさい。
   1. サービス提供範囲とパフォーマンス基準の明確化
 2. 契約期間中の料金改定の禁止
 3. 内部供給者の役割の排除
 4. 供給者として行動する顧客の管理を行わないこと

【解答例】
 正解は「1. サービス提供範囲とパフォーマンス基準の明確化」です。
【解説】
 外部供給者との契約では、サービスの範囲や対応すべきパフォーマンス基準、トラブル時の対応策などが明確に定められることが不可欠です。料金改定の禁止や内部供給者の排除は現実的な運用では適切ではなく、供給者として行動する顧客も重要な関係者であるため、管理対象に含める必要があります。

例題2

 【問題】
 企業がアウトソーシングの利用によりシステム運用の一部を外部委託する際、内部供給者および外部供給者間で重要となる調整事項として正しいものはどれか。
   1. 双方で合意したサービスレベル目標(SLA)の策定と定期的なパフォーマンス評価
 2. 内部供給者の独断でシステム運用の全権を決定すること
 3. 外部供給者の責任範囲を無条件に拡大すること
 4. 契約書を作成せず、口頭のみで合意すること

【解答例】
 正解は「1. 双方で合意したサービスレベル目標(SLA)の策定と定期的なパフォーマンス評価」です。
【解説】
 内部供給者外部供給者、さらに供給者として行動する顧客が連携する中で、SLAの策定と定期的なパフォーマンス評価は、トラブル防止および品質向上に直結します。契約書による正式な合意は、リスク管理と迅速な対応のために必須です。

5. まとめ

 以上、供給者管理における基本概念と運用手法について解説しました。

  • 外部供給者との契約内容の明確化、アウトソーシングの利用に基づくリスク管理とパフォーマンス評価が重要です。
  • 内部供給者および供給者として行動する顧客との連携を通じ、サービスレベル目標(SLA)を策定し、定期的なレビューを実施することで、サービス全体の品質管理が向上します。
  • また、SaaSPaaSIaaS などのクラウドサービスの利用が普及する現代において、各サービスモデルの特性を把握し、適切な契約および運用を行うことが求められます。