2.14. リリース及び展開管理

1. 概要

1.1. はじめに

 サービスマネジメントシステムの計画及び運用における「リリース及び展開管理」は、新規サービスやサービス変更、及びサービスコンポーネントの稼働環境への展開を計画し、実施するための重要なプロセスです。リリースの成功や失敗を監視し、改善の機会を特定するための分析結果をレビューすることで、将来のリリース期日や他のサービスマネジメント活動へ活用可能な情報を提供し、全体としてのサービス品質向上に寄与します。

2. 詳細説明

2.1. リリース及び展開管理の定義

 「リリース及び展開管理」とは、計画されたリリースを実施し、対象システムやサービスが稼働環境へ正しく展開されるよう管理するプロセスです。このプロセスでは、リリースの受入れ基準の策定、受入れ試験環境での検証、及びリリースの配付計画の作成が重要な要素となります。各プロセスを確実に実施することで、リリースの成功とサービス品質の維持が可能となります。

2.2. リリースの種類

 リリースには、通常リリースと緊急リリースを含むリリースの種類が存在します。

  • 通常リリース:計画的かつ定期的に実施されるリリースで、十分な検証プロセスを経て、安定した展開を目指します。
  • 緊急リリース:システム障害やセキュリティリスクなど、迅速な対応が必要な場合に実施されるリリースです。通常のリリースとは異なり、必要最小限の検証手順で対応するため、迅速なリリースの配付展開が求められます。
リリースの種類 定義 特徴 検証手順
通常リリース 計画的かつ定期的に実施されるリリース 予め定めたプロセスに基づく安定した展開 受入れ試験環境での十分なテスト
緊急リリース 緊急対応が必要な場合に実施されるリリース 迅速な展開が求められる 必要最小限の検証

2.3. 展開と環境管理

 リリース後の「展開」作業は、受入れ試験環境での検証を経て、最終的に稼働環境へと移行します。具体的には、以下の流れでプロセスが進行します。

flowchart TD
A[リリース計画] --> B[受入れ試験環境でのテスト]
B --> C[リリースの受入れ基準確認]
C --> D[リリースの配付計画作成]
D --> E[稼働環境への展開]
E --> F[ロールバック(必要時)]   

 この流れにより、リリースの各ステップで問題がないか確認しながら、最終的な展開を安全に実施することが可能です。

2.4. 継続的デリバリーと継続的デプロイ

 近年のDevOpsの考え方では、継続的デリバリー継続的デプロイといった手法が注目されています。

  • 継続的デリバリー:コードの変更を自動的にビルド、テストし、いつでもリリース可能な状態に保つプロセスです。
  • 継続的デプロイ:テストに合格した変更を自動的に稼働環境へリリースする仕組みであり、迅速なサービス提供が可能となります。
手法 概要 メリット デメリット
継続的デリバリー コードの変更を自動的にビルド、テストし、いつでもリリース可能な状態にする 高品質なリリース準備が可能 初期の自動化導入コストがかかる
継続的デプロイ テストに合格した変更を自動的に稼働環境へリリースする 迅速なサービス提供が可能 トラブル発生時の影響が大きい可能性がある

3. 応用例

3.1. IT業界における実践例

 大規模なIT企業では、リリース及び展開管理が日常の運用に組み込まれています。新機能のリリース前には、受入れ試験環境で厳格なテストを実施し、リリースの受入れ基準を満たした上で、計画的に稼働環境展開が行われます。また、緊急リリースを含むリリースの種類に応じた柔軟な対応が可能であり、場合によっては継続的デリバリー継続的デプロイの手法を活用し、迅速かつ安全なリリースの配付が実現されています。

3.2. サービス運用における効果

 正確なリリース及び展開管理により、サービス変更時のトラブルを最小限に抑えることができ、顧客満足度の向上に寄与しています。各プロセスにおける事前の検証と計画が、リリースの成功率を高め、将来の改善に向けた有益な情報の収集にも繋がっています。

4. 例題

例題1:リリースプロセスの計画

 【問題】
  あなたはある企業のシステム管理者です。新機能の追加に伴い、通常リリースを計画しています。リリース及び展開管理において、以下の項目のうち必ず実施すべき手順として適切なものをすべて選びなさい。

  1. 受入れ試験環境での動作確認
  2. リリースの受入れ基準の策定
  3. 稼働環境への直接展開(検証なし)
  4. リリースの配付計画の作成 

【解答】
 正解:1, 2, 4
  
【解説】
 受入れ試験環境での検証によりシステム動作を確認し、リリースの受入れ基準を策定、さらにリリースの配付計画を作成することは必須です。一方、検証なしに稼働環境へ展開することは大きなリスクとなります。

例題2:緊急リリースの対応

【問題】
 システムに重大なセキュリティ脆弱性が発覚しました。緊急リリースを実施する際、通常リリースと異なる点として最も重要なものはどれか、次の中から選びなさい。
  A. 受入れ試験環境での徹底したテスト
  B. 迅速なリリースの配付と展開
  C. リリースの受入れ基準の再検討
  D. 継続的デリバリーのプロセスの見直し

【回答例】
 正解:B
 
【解説】
 緊急リリースでは、迅速な対応が求められるため、従来のプロセスよりもスピードを重視します。必要最低限の検証の上で、迅速なリリースの配付展開を実施することが最も重要です。

5. まとめ

 今回の記事では、サービスマネジメントシステムの計画及び運用における「リリース及び展開管理」の重要性と、各プロセスの具体的な流れについて解説しました。

  • リリース及び展開管理:新規サービスやサービス変更、及びサービスコンポーネントの稼働環境への展開を計画・実施するプロセス。
  • リリースの種類:通常リリースと緊急リリースを含むリリースの種類があり、それぞれに適した検証・対応が求められる。
  • 展開受入れ試験環境での十分なテスト後に、リリースの配付を通じて稼働環境へ展開する。
  • 継続的デリバリー/継続的デプロイ:自動化を活用し、迅速かつ安定したリリース体制を実現する手法。

 これらのプロセスを正確に運用することで、サービス品質の向上と、将来のリリース活動の改善に直結します。