2.7. サービスレベル管理

1. 概要

 サービスレベル管理(Service Level Management, SLM)は、ITサービスの品質を維持し、顧客と合意したサービスレベル目標を達成するために重要なプロセスです。サービスレベル目標の設定、パフォーマンスの監視、定期的なレビューを通じて、サービスの品質を継続的に改善することを目的としています。

2. 詳細説明

2.1. サービスレベル管理の目的

 サービスレベル管理の主な目的は、顧客とサービス提供者の間で明確な合意を形成し、サービス品質を維持・向上させることです。このプロセスを通じて、以下の事項を達成します。

  • サービスレベル目標の設定: サービスの品質や応答時間、可用性などの指標を明確に定義する。
  • SLA(サービスレベル合意書)の策定: 顧客と提供者が合意するサービスレベルを文書化する。
  • パフォーマンスの監視とレビュー: 定期的にサービスのパフォーマンスを測定し、必要に応じて改善を行う。

2.1.1. サービスレベル管理の主要要素

 サービスレベル管理には、以下の3つの主要な要素が含まれます。

  • SLA(サービスレベル合意書): サービスの品質や可用性について、顧客とプロバイダー間で取り決める契約。
  • OLA(運用レベル合意書): 内部チーム間でのサービス提供に関する取り決め。
  • UC(アンダーピニング契約): 外部ベンダーとの契約で、SLAを満たすための基盤となる。
flowchart TD;
    A[SLA] -->|合意| B[サービス提供者];
    A -->|合意| C[顧客];
    B -->|内部合意| D[OLA];
    B -->|外部契約| E[UC];

2.2. サービスレベル管理のプロセス

 サービスレベル管理は、以下の主要なステップで構成されます。

  1. SLAの策定と合意
    • 顧客の要件を分析し、サービスの品質指標を設定する。
    • 双方で合意の上、SLAを正式に締結する。
  2. パフォーマンスの監視
    • サービスの可用性や応答時間などのKPI(Key Performance Indicator)を定期的に測定する。
    • 設定したサービスレベル目標に対する達成度を評価する。
  3. レビューと報告
    • 定期的にサービスレベルのレビューを行い、顧客と共有する。
    • 必要に応じてサービス改善計画を策定する。
  4. 継続的な改善
    • サービスレベル管理の結果を分析し、次の改善策を検討する。
    • 顧客のニーズの変化に対応し、SLAを更新する。
項目説明
サービス可用性サービスが利用可能な時間の割合
応答時間リクエストへの応答速度
障害対応時間障害発生時の初動対応時間
監視・報告頻度定期的なレポート提出の頻度

3. 応用例

3.1. ITサービス業界での活用

 IT業界では、クラウドサービスやヘルプデスクなど、多くの企業がSLAに基づいたサービスを提供しています。例えば、あるクラウドプロバイダーは、「99.9%の可用性保証」や「障害発生時の対応時間4時間以内」といったサービスレベル目標を設定し、それを顧客と合意しています。

3.2. 金融業界での活用

 金融機関では、オンラインバンキングの応答時間や取引処理速度が重要なサービスレベル指標となります。これに基づき、サービスプロバイダーはパフォーマンス監視を行い、サービスの維持・向上に努めています。

4. 例題

例題1: サービスレベル目標の設定

問題: ある企業がITサービスのアウトソーシングを検討しており、SLAの策定を行うことになりました。以下の項目について、適切なサービスレベル目標を設定してください。

  • サービスの可用性
  • 障害対応時間
  • 監視・報告頻度
  • サービスの可用性: 99.9%以上
  • 障害対応時間: 障害発生後、2時間以内に初動対応
  • 監視・報告頻度: 毎月1回のサービスレベルレビュー報告を実施

例題2: パフォーマンス監視の手順

問題: 企業のIT部門が、SLAに基づいたパフォーマンス監視を実施することになりました。以下のプロセスに沿って、適切なパフォーマンス監視手順を考えてください。

  1. 監視対象の決定
  2. 測定方法の設定
  3. レビューと報告
  1. 監視対象の決定: サーバーの稼働率、ネットワーク応答時間、アプリケーションの処理速度
  2. 測定方法の設定: 監視ツールを用いた自動ログ取得、定期的なユーザーアンケート
  3. レビューと報告: 月次レポートを作成し、経営層や顧客に提出

5. まとめ

 サービスレベル管理は、ITサービスの品質を保証し、顧客との信頼関係を維持するために欠かせないプロセスです。サービスレベル目標を適切に設定し、SLAを策定・合意することで、パフォーマンスの監視やレビューを円滑に進めることができます。企業や組織は、これらのプロセスを活用し、継続的な改善を図ることで、より高品質なサービスを提供することが可能となります。