2.18. サービス可用性管理

1. 概要

1.1. はじめに

 サービスマネジメントシステムの計画及び運用における「サービス可用性管理」は、システムやサービスの稼働状態を維持し、計画外の障害発生時に迅速な復旧を図るための重要な管理手法です。応用情報処理技術者試験のマネジメント系においても、その理解は必須となります。

1.2. 重要性

 サービス可用性管理は、システムの信頼性回復力、および保守性の観点から、障害発生前後のリスクアセスメントや目標設定を行います。具体的には、MTBF(平均故障間隔)やMTTR(平均修復時間)などの指標を用い、サービス可用性の要求事項を明確にし、計画外の障害発生時に迅速かつ適切な対応を実現するための基盤となります。

2. 詳細説明

2.1. サービス可用性管理の定義

 サービス可用性管理は、システムやサービスの提供が常に高い可用性を維持できるよう、リスクアセスメントや目標設定、及び実際の稼働状況の監視・記録を行うプロセスです。これにより、計画外のサービス停止や障害が発生した場合でも、迅速に原因を特定し、必要な対策を実施することが可能となります。

2.2. 主な概念と指標

 以下の【表1】は、サービス可用性に関する主要指標の比較表です。各指標の意味と評価方法を理解することで、システム全体の状況を正確に把握できます。

指標 定義 評価方法
MTBF 平均故障間隔 総運用時間 ÷ 故障回数
MTTR 平均修復時間 各故障の復旧時間の平均
信頼性 故障なく機能する能力 MTBFに基づく評価
回復力 障害発生時の迅速な復旧能力 MTTRに基づく評価
保守性 システムの保守・管理のしやすさ メンテナンス効率、対応速度など

表1:システム信頼性の主要指標

2.3. リスクアセスメントと目標設定

 リスクアセスメントでは、システムの各構成要素やサービスに対するリスクを洗い出し、その影響度や発生頻度を評価します。評価結果に基づき、各サービスのサービス可用性に関する要求事項や目標を設定し、具体的な改善策や対策の計画を立案します。

 以下の【図1】は、リスクアセスメントとサービス可用性目標設定プロセスのフローチャートです。視覚的に流れを把握することで、各ステップの理解が深まります。

flowchart TD
A[リスク識別] --> B[影響度評価]
B --> C[発生頻度評価]
C --> D[リスクアセスメント結果の整理]
D --> E[サービス可用性要求事項の設定]
E --> F[目標設定]

図1: リスクアセスメントとサービス可用性目標設定プロセスのフローチャート

2.4. 監視と対応

 定期的なモニタリングを通じて、実際のサービス可用性が設定した目標とどの程度乖離しているかを記録・比較します。もし、計画外の障害が発生した場合は、その原因を徹底的に調査し、必要な処置を速やかに実施することが求められます。専門用語については、各指標の意味や算出方法を確認しながら理解を深めると良いでしょう。

3. 応用例

3.1. ITインフラ運用における適用

 大規模なデータセンターやクラウドサービスプロバイダーでは、サービス可用性管理が運用の基幹となっています。システム稼働状況をリアルタイムに監視し、MTBFMTTRといった指標に基づいた評価を行い、計画外の障害が発生した場合には即座に復旧作業を開始します。

3.2. 金融業界での事例

 銀行や証券会社では、24時間365日のシステム稼働が求められるため、信頼性回復力の向上が特に重要です。これらの企業は、リスクアセスメントを継続的に行い、厳格なサービス可用性目標を設定することで、顧客へのサービス提供の安定性を確保しています。

3.3. 製造業における応用

 製造業では、工場の自動化システムや生産管理システムにおいて、障害発生が生産ライン全体に影響を及ぼすため、サービス可用性管理が重視されます。定期的なメンテナンスと故障予防策により、システム全体の保守性が向上し、結果として高いサービス可用性が実現されています。

4. 例題

例題1: MTBFとMTTRの基本計算

【問題】
 あるシステムの故障が年間で5回発生し、各故障からの平均復旧時間が2時間とします。このシステムのMTBFとMTTRを求めなさい。

 MTBF(平均故障間隔)は、システムの運用時間を故障回数で割ることで求められます。
 例:年間運用時間が8,760時間の場合、
 MTBF = 8,760時間 ÷ 5回 = 1,752時間
 一方、MTTRは既に与えられている通り、2時間となります。

例題2: サービス可用性の計算

【問題】
 例題1のシステムで、年間のダウンタイム(MTTR×故障回数)は何時間となり、サービス可用性は何パーセントか求めなさい。

 年間のダウンタイム = MTTR × 故障回数 = 2時間 × 5回 = 10時間
 サービス可用性は、
 可用性 = ((総運用時間 – ダウンタイム) ÷ 総運用時間) × 100
  = ((8,760 – 10) ÷ 8,760) × 100
  ≈ 99.89%
 この計算により、非常に高い可用性が維持されていることが分かります。

5. まとめ

 本記事では、サービス可用性管理の基本概念から、具体的な評価指標(MTBFMTTR)を用いたリスクアセスメント、及び実際の運用例について説明しました。特に、サービス可用性を高めるためには、信頼性回復力保守性といった観点からシステム全体を見直し、適切な目標設定と迅速な対応が求められます。これらの知識は、応用情報処理技術者試験の受験者にとって実務に直結する重要な要素となるため、しっかりと理解しておくことが必要です。