2.15.2. 重大なインシデントの対応

1. 概要

1.1. テーマの背景

 サービスマネジメントシステムの計画及び運用において、インシデント管理はサービスの安定運用を維持するための重要なプロセスです。特に重大なインシデントは、システム全体に大きな影響を与えるため、迅速かつ正確な対応が求められます。

1.2. 重要性

 重大なインシデントの特定とその対応は、企業の信頼性や業務継続性に直結します。正確な基準に基づいてインシデントを分類し、文書化された手順に従って管理・通知することで、迅速な問題解決と再発防止策の策定が可能となります。これにより、組織全体のリスク管理体制が強化されます。

2. 詳細説明

2.1. インシデント管理の基本概念

 インシデント管理は、サービス運用中に発生する障害や不具合を迅速に解決し、サービスの正常な状態を回復するためのプロセスです。
 - インシデント:通常のサービス運用に影響を及ぼす事象。
 - 重大なインシデント:影響範囲が広く、業務継続に重大なリスクをもたらすインシデント。

2.2. 重大なインシデントの特定基準

 重大なインシデントを特定するためには、以下の基準を設定することが一般的です。各基準は、定期的に見直すことで常に適切な判断ができる体制を整えることが重要です。

基準項目 説明
影響範囲 ユーザー数やシステム全体への波及効果
業務重要度 事業運営に与える影響の大きさ
復旧目標時間 サービスレベルアグリーメント(SLA)に基づく目標時間
経済的損失・法的リスク 損失や法的問題の可能性

2.3. 文書化された手順に基づく対応プロセス

 重大なインシデントが発生した際は、あらかじめ文書化された手順に従って対応を行います。主なプロセスは以下の通りです。

 1. 初期対応:インシデント発生時の一次対応と現状把握。
 2. 分類・優先順位の決定:定められた基準に基づき、重大なインシデントか否かを判断。
 3. 管理と通知:重大なインシデントの場合は、速やかにトップマネジメントに報告し、全体の対応策を検討。
 4. 原因分析と再発防止策の策定:インシデントの根本原因を特定し、再発防止策を講じる。

flowchart TD
    A[初期対応: 現状把握] --> B[分類・優先順位の決定]
    B --> C[管理と通知: トップマネジメントへの報告]
    C --> D[原因分析と再発防止策の策定]  

3. 応用例

3.1. 企業における事例

 ある大手企業では、ネットワーク障害が発生した際、システム監視ツールによって初動が迅速に行われました。
 - 初期検知:システムログから異常が検知され、初期対応チームが出動。
 - 分類:影響範囲と業務影響を評価し、事前に定めた基準により重大なインシデントと判断。
 - 通知と対応:文書化された手順に従い、トップマネジメントへ迅速に通知。即座に復旧作業と原因究明が実施され、影響を最小限に抑えることができました。

flowchart TD
    A[インシデント発生] --> B[システム監視ツールによる検知]
    B --> C[初期対応チームによる現状把握]
    C --> D[基準に基づき重大なインシデントと判断]
    D --> E[トップマネジメントに通知]
    E --> F[復旧作業および原因究明]

3.2. ITサービスプロバイダーでの活用

 ITサービスプロバイダーは、サービス提供中の各種障害に対して即応できるよう、インシデント管理体制を整備しています。
 - 障害発生時には、定められた基準により迅速に重大なインシデントを識別。
 - 文書化された手順に基づく管理プロセスで情報共有と迅速な対応を実現。
 - 定期的な訓練やシミュレーションにより、実際のインシデントに備えた準備が行われています。

4. 例題

例題1

 問題:
 ある企業で、業務システムが一時的に停止するインシデントが発生しました。システム停止の影響範囲は全社的で大きな影響を与えると予想されます。この状況でまず行うべき対応として最も適切なものはどれか。
 A. 初期対応チームによる現状把握と一次対応
 B. すぐにトップマネジメントに通知する
 C. 後で詳細な分析を行うため、一旦放置する
 D. 関連部署間でのみ情報共有を行う

解答:
 正解は A. 初期対応チームによる現状把握と一次対応です。

解説:
 初期対応としてまずインシデントの現状把握を行い、定められた基準により重大なインシデントであるか判断。その後、必要に応じてトップマネジメントへの通知など、次のステップに進みます。

例題2

 問題:
 重大なインシデントが発生した場合、文書化された手順に従って実施すべきプロセスとして正しいものを選びなさい。
 A. インシデントの発生をトップマネジメントに直接通知するだけで対応を完了する。
 B. 初期対応、分類、通知、原因分析、再発防止策の各プロセスを順次実施する。
 C. インシデントの内容を社内SNSで共有し、意見を募る。
 D. インシデントの詳細は記録せず、口頭で報告する。

解答:
 正解は B. 初期対応、分類、通知、原因分析、再発防止策の各プロセスを順次実施する、です。

解説:
 重大なインシデントの場合、各プロセスは文書化されており、その手順に沿って対応することが求められます。これにより、迅速な問題解決と再発防止が実現されます。

5. まとめ

  • サービスマネジメントにおけるインシデント管理は、サービスの安定運用を支える重要なプロセスです。
  • 重大なインシデントは、その影響の大きさから、特定の基準に基づいて迅速に分類・管理される必要があります。
  • 文書化された手順に従い、初期対応、分類、通知、原因分析、再発防止策の各プロセスを確実に実施することで、組織全体のリスク管理が強化されます。
  • 事例や例題を通じ、実際の現場での対応プロセスの理解を深めることが重要です。

 このように、重大なインシデントへの適切な対応は、企業全体の信頼性や業務継続性を守るための基盤となります。実際の現場での適用例を意識しながら、手順や基準の理解を深めることが望まれます。