2.13.2. 設計

1. 概要

 本記事は、応用情報処理技術者試験シラバスにおける「サービスマネジメントシステムの計画及び運用」の中の「サービスの設計及び移行」フェーズ、そのうち「設計」について解説します。
 サービス設計は、サービス計画で決定した要求事項を確実に満たすために、システムやサービスの仕様を策定し、文書化する重要なプロセスです。具体的には、SLA、サービスカタログ、契約書などの文書の新設や更新を行うことで、提供されるサービスの品質や運用基準を明確にします。

1.1. サービス設計の目的

 サービス設計の主な目的は、サービス計画で決定した要求事項に基づいて、設計・開発を実施し、成果物としてサービス設計書などの文書を作成することです。
 また、システムの性能や安全性などに関わる非機能要件を含め、運用時の品質保証のためにサービス受入れ基準を明確に定義することも含まれます。

2. 詳細説明

2.1. サービス設計の基本概念

 サービス設計は、サービスマネジメントの一環として、サービス計画で定義された要求事項を実現するための具体的な仕様を決定するプロセスです。
 この段階では、SLA(サービスレベルアグリーメント)、サービスカタログ、契約書など、サービスの運用に関わる各種文書の新設や更新が求められます。
 また、システムの基盤となる非機能要件(パフォーマンス、セキュリティ、信頼性、可用性など)の検討も重要な要素となります。

2.2. 設計・開発プロセスの流れ

 サービス設計における設計・開発プロセスは、以下のステップで進行します。

  1. 要求事項の整理:サービス計画で決定した機能要件と非機能要件を整理し、必要な項目を明確化します。
  2. アーキテクチャ設計:システム全体の構成やインターフェース、データフローなどを設計し、実現可能な構造を検討します。
  3. 詳細設計:各コンポーネントの仕様を具体的に定義し、サービス設計書として文書化します。
  4. 品質基準の設定サービス受入れ基準を含む品質保証の指標を設定し、運用後の評価基準とします。

 以下のフローチャート(図1)に、プロセスの流れを示します。

flowchart TD
    A[要求事項の整理]
    B[アーキテクチャ設計]
    C[詳細設計
(サービス設計書の作成)] D[品質基準の設定
(サービス受入れ基準の設定)] A --> B B --> C C --> D

2.3. サービス設計書の役割

 サービス設計書は、設計フェーズで策定されたすべての情報を網羅した文書です。
 この文書は、今後の設計・開発、テスト、運用、さらにはサービス移行時の基準資料として活用されます。
 サービス設計書には、機能要件、非機能要件、システム構成、データ設計、インターフェース設計、そしてサービス受入れ基準などが詳細に記述され、関係者間の共通認識を形成するために重要な役割を果たします。

 以下の表(表1)に、サービス設計関連の各文書とその概要を示します。

文書名称 目的 主要記載項目
サービス設計書 サービスの詳細仕様を文書化し、設計から運用までの基準とする 機能要件、非機能要件、システム構成、詳細設計、サービス受入れ基準
SLA サービスレベルや提供条件を定義し、顧客との合意事項を明確化する パフォーマンス指標、応答時間、可用性基準
サービスカタログ 提供されるサービスの概要や詳細を一覧化し、情報提供を行う サービス内容、料金、提供範囲
契約書 サービス提供に関する法的な合意内容を明確にする 契約条件、責任分担、補償規定

2.4. 非機能要件とサービス受入れ基準の検討

 非機能要件は、システムのパフォーマンス、信頼性、セキュリティ、可用性など、サービスの品質に直結する要素です。
 例えば、パフォーマンス要件としては応答時間や処理能力、セキュリティ要件としてはアクセス制御や暗号化の実装、可用性要件としてはシステムの冗長性確保などが挙げられます。
 これらの要件は、設計段階で詳細に検討され、実装時に反映される必要があります。
 さらに、サービス受入れ基準は、実際の運用時にサービスが計画通りの品質を提供できるかを判断するための基準として設定され、非機能要件の達成状況を評価する際に不可欠な要素となります。

3. 応用例

3.1. 新規クラウドサービス導入のケース

 企業が新たなクラウドサービスを導入する際、まずサービス計画で決定された要求事項をもとに、設計・開発フェーズで詳細なサービス設計を実施します。
 この過程で、サービス設計書を作成し、SLAやサービスカタログ、契約書などの文書を整備します。
 また、システムの可用性やセキュリティなどの非機能要件を十分に検討し、適切なサービス受入れ基準を設定することで、運用開始後の品質保証につなげています。

3.2. 既存サービスのアップグレードプロジェクト

 既存のサービスをアップグレードする場合、現行のサービス設計書やサービス受入れ基準を見直し、改善が必要なポイントを洗い出します。
 その上で、設計・開発プロセスにより、非機能要件の強化や新たな機能追加を反映したサービス設計書を再作成します。
 このプロセスは、サービスの品質向上や運用効率の改善を目的としており、関係者全体での合意形成を通じて円滑な移行を実現します。

4. 例題

例題1

 問題: 新規サービスの設計フェーズにおいて、どのような文書が必要となるか、またその目的について説明しなさい。

 新規サービスの設計フェーズでは、主にサービス設計書、SLA、サービスカタログ、契約書などの文書が必要です。

  • サービス設計書:サービスの具体的な仕様や構成、非機能要件、およびサービス受入れ基準を文書化し、設計・開発から運用までの基準となる。
  • SLA:サービスの提供品質や応答時間などの基準を定め、顧客との合意内容を明確にする。
  • サービスカタログ:提供されるサービスの一覧や詳細を示し、顧客に対する情報提供を行う。
  • 契約書:サービス提供における法的な合意内容を明確にし、トラブル発生時の対応策を規定する。

例題2

 問題: 非機能要件の検討がなぜ重要か、またそれがサービス受入れ基準にどのように影響するか説明しなさい。

 非機能要件は、システムのパフォーマンス、セキュリティ、信頼性、可用性といった、サービスの品質に直結する要素です。
 これらの要件を初期段階で十分に検討することにより、実運用時に予期せぬトラブルや性能低下を防ぐことができます。
 また、これらの要件は、サービス受入れ基準として具体的な数値や条件に落とし込まれるため、サービスが計画通りの品質を提供できるかどうかを判断するための重要な基準となります。

5. まとめ

 サービス設計は、サービス計画で定めた要求事項を実現するための重要なプロセスであり、設計・開発の各フェーズにおいて、サービス設計書の作成や非機能要件の検討、さらにサービス受入れ基準の設定が不可欠です。
 また、SLA、サービスカタログ、契約書などの関連文書の新設や更新を通じて、サービスの品質保証と運用の円滑化を実現します。
 この記事を通じて、サービス設計に必要な基本概念と実務上のポイントを理解し、実際の現場で適切な設計が行えるようになることが期待されます。