目的とプロセス
リスクの対象群が含むプロセスの主要なインプット及びアウトプット,並びにツールと技法を修得し,適用する。
リスクの特定,リスクの評価,リスクへの対応,リスクの管理
1. 概要
プロジェクトマネジメントにおいて、リスク管理は事業の成功を左右する重要な要素です。リスクの対象群が含むプロセスは、「リスクの特定」「リスクの評価」「リスクへの対応」「リスクの管理」という4つの主要なステップで構成されており、これらを適切に実施することでプロジェクトの目標達成を支援します。
1.1. リスク管理の重要性
リスク管理プロセスを適切に実施することで、以下の効果が期待できます:
- プロジェクトの不確実性の低減
- コストと時間の超過の防止
- 品質問題の早期発見と対策
- ステークホルダーとの信頼関係の構築
2. 詳細説明
2.1. リスクの特定
プロジェクトに影響を与える可能性のあるリスクを洗い出すプロセスです。
インプット:
- プロジェクト計画書
- 過去のプロジェクト記録
- ステークホルダー要件
ツールと技法:
- ブレーンストーミング
- チェックリスト分析
- デルファイ法(例:専門家グループから意見を収集し合意形成を行う)
アウトプット:
- リスク登録簿
- リスク特定報告書
flowchart TD subgraph Input[インプット] A1[プロジェクト計画書] A2[過去のプロジェクト記録] A3[ステークホルダー要件] end subgraph Process[ツールと技法] B1[ブレーンストーミング] B2[チェックリスト分析] B3[デルファイ法] end subgraph Output[アウトプット] C1[リスク登録簿] C2[リスク特定報告書] end Input --> Process Process --> Output
図1:リスクの特定プロセスの流れ図
2.2. リスクの評価
特定されたリスクを分析し、その重要度を評価します。
インプット:
- リスク登録簿
- プロジェクトスコープ記述書
- コスト見積もり
ツールと技法:
- 確率影響マトリクス(リスクの発生確率と影響度を視覚化)
- 定量的リスク分析(例:モンテカルロシミュレーションの利用)
- 感度分析(リスク要因がプロジェクト目標に与える影響を解析)
図2:確率影響マトリクスの例
アウトプット:
- リスク評価結果
- 優先順位付けされたリスクリスト
2.3. リスクへの対応
評価結果に基づき、適切な対応戦略を選択します。
インプット:
- リスク評価結果
- プロジェクト予算情報
- リソース可用性データ
ツールと技法:
- 回避戦略(例:要件の変更でリスクを除去)
- 転嫁戦略(例:保険やサブ契約を活用)
- 軽減戦略(例:プロトタイプを使用して技術リスクを低減)
- 受容戦略(例:低リスクの事象を特段の対策を取らずに許容)
アウトプット:
- リスク対応計画書
- 更新された予算とスケジュール
2.4. リスクの管理
対応策の効果を監視し、必要に応じて修正を行います。
インプット:
- リスク対応計画書
- プロジェクト進捗報告書
- 変更要求
ツールと技法:
- リスク再評価(例:定期的なリスクの再分析)
- 監査(例:リスク対応策が適切に実行されているか確認)
- 進捗ミーティング(例:週次のリスクレビュー会議)
アウトプット:
- リスク管理報告書
- 是正処置要求
管理ツール | 主な用途 | 期待される効果 |
---|---|---|
リスク再評価 | 定期的なリスクの再分析と評価 | ・新規リスクの早期発見 ・既存リスク状態の把握 ・対策の有効性確認 |
監査 | リスク対応策の実施状況確認 | ・対策の実効性確保 ・プロセスの適切性確認 ・改善点の特定 |
進捗ミーティング | 定期的なリスク状況の確認と共有 | ・情報共有の促進 ・迅速な意思決定 ・チーム間連携強化 |
表1:リスク管理のツールと効果の一覧
3. 応用例
3.1. システム開発プロジェクトでの適用
大規模システム開発プロジェクトでは、以下のようにリスク管理プロセスを適用します:
- リスクの特定:
- 要件定義の不明確さ
- 技術的な実現可能性
- チームメンバーのスキル不足
- リスクの評価:
- 各リスクの発生確率と影響度を評価
- 優先順位付けを実施
- リスクへの対応:
- プロトタイプの作成(技術リスクの軽減)
- 外部専門家の採用(スキル不足への対応)
- 要件の段階的な確定(要件リスクの軽減)
- リスクの管理:
- 週次のリスクレビュー会議
- 月次の状況報告
- 対応策の効果測定
flowchart TB subgraph 特定[リスクの特定] A1[要件定義の不明確さ] A2[技術的な実現可能性] A3[チームメンバーのスキル不足] end subgraph 評価[リスクの評価] B1[発生確率の分析] B2[影響度の評価] B3[優先順位付け] end subgraph 対応[リスクへの対応] C1[プロトタイプ作成] C2[外部専門家採用] C3[要件の段階的確定] end subgraph 管理[リスクの管理] D1[週次レビュー] D2[月次報告] D3[効果測定] end 特定 --> 評価 評価 --> 対応 対応 --> 管理 管理-->|フィードバック| 特定
図3:システム開発プロジェクトにおけるリスク対応のフロー図
4. 例題
例題1
以下のリスクに対する適切な対応戦略を選択してください: 「主要な開発者が突然退職する可能性がある」
- 軽減戦略:
- 知識の文書化推進
- 複数メンバーでの作業分担
- バックアップ要員の育成
例題2
リスク評価において、以下の状況での優先順位付けを行ってください:
- リスクA:発生確率40%、影響度大(コスト増加1000万円)
- リスクB:発生確率80%、影響度中(コスト増加300万円)
- リスクC:発生確率20%、影響度中(コスト増加500万円)
- リスクB(期待損失値:240万円)
- リスクA(期待損失値:400万円)
- リスクC(期待損失値:
5. まとめ
リスクの対象群が含むプロセスは、以下の4つの要素で構成されています:
- リスクの特定:プロジェクトに影響を与える可能性のあるリスクを洗い出す
- リスクの評価:特定されたリスクの影響度と発生確率を分析する
- リスクへの対応:評価結果に基づき、適切な対応戦略を選択・実施する
- リスクの管理:対応策の効果を監視し、必要に応じて修正を行う
これらのプロセスを適切に実施し、継続的に改善することで、プロジェクトの成功確率を高めることができます。