8.2. 主要なインプット及びアウトプット

目的と用語例

リスクの対象群が含むプロセスの主要なインプット及びアウトプットを理解する。

用語例

リスク登録簿,優先順位付けされたリスク

1. 概要

 プロジェクトマネジメントにおけるリスク管理プロセスでは、様々なインプットとアウトプットが存在します。これらを適切に理解し、管理することは、プロジェクトの成功に不可欠です。インプットはリスク分析の基礎となる情報であり、アウトプットはリスク対応の計画と実行に必要な成果物となります。

2. 詳細説明

2.1. 主要なインプット

 主要なインプットには以下のものが含まれます:

  1. プロジェクト計画書
     プロジェクト計画書には、リスク管理計画や全体的なスケジュール、コスト、スコープが含まれており、リスクの特定や評価の出発点となります。
  2. 作業分解構造図(WBS)
     WBSはプロジェクトの作業を詳細に分解したもので、リスクがどこで発生する可能性があるかを特定する助けとなります。
  3. ステークホルダー登録簿
     ステークホルダー登録簿には、プロジェクトの影響を受けるすべての関係者が記載されており、リスクの潜在的な発生要因や影響範囲を把握するための重要な資料です。
  4. コスト見積り
     コスト見積りからは、予算オーバーリスクやリソース不足リスクが見えてきます。
  5. スケジュール計画
     スケジュール計画は、タイムリスク(例:遅延)を評価するための重要な情報源です。
  6. 組織のリスク資産
     過去のプロジェクトの教訓やリスクデータは、現在のプロジェクトでのリスク管理に役立ちます。

2.2. 主要なアウトプット

 主要なアウトプットには以下のものが含まれます:

  1. リスク登録簿
     特定されたリスクやその評価結果、リスクの特性などを詳細に記録したリストです。
  2. 優先順位付けされたリスク
     リスクの影響度と発生確率に基づいて順位付けされたリストで、リスク対応計画を立てる際の基盤となります。
  3. リスク対応計画
     リスクに対して実施する具体的な対応策や戦略を明記した計画書です。
  4. プロジェクト計画書の更新版
     リスク対応の結果を反映させたプロジェクト計画書です。
  5. リスク関連の報告書
     リスクの進捗や対応状況をまとめた報告書で、関係者との共有に使用されます。

 図1に、リスク管理プロセスの主要なインプットとアウトプットの関係を示します。

graph TB
    %% インプット
    subgraph Input[主要なインプット]
        A1[プロジェクト計画書]
        A2[作業分解構造図
WBS] A3[ステークホルダー
登録簿] A4[コスト見積り] A5[スケジュール計画] A6[組織のリスク資産] end %% プロセス subgraph Process[リスク管理プロセス] B1[リスクの特定] B2[リスクの分析] B3[リスク対応の計画] end %% アウトプット subgraph Output[主要なアウトプット] C1[リスク登録簿] C2[優先順位付けされた
リスク] C3[リスク対応計画] C4[プロジェクト計画書
更新版] C5[リスク関連の報告書] end %% インプットからプロセスへの関係 A1 --> B1 A2 --> B1 A3 --> B1 A4 --> B1 A5 --> B1 A6 --> B1 %% プロセス間の関係 B1 --> B2 B2 --> B3 %% プロセスからアウトプットへの関係 B2 --> C1 B2 --> C2 B3 --> C3 B3 --> C4 B3 --> C5 %% スタイル設定 classDef default fill:#f9f9f9,stroke:#333,stroke-width:2px classDef process fill:#e1f3fe,stroke:#333,stroke-width:2px class B1,B2,B3 process

図1:リスク管理プロセスの主要なインプットとアウトプットの関係

3. 応用例

3.1. システム開発プロジェクトでの適用

 あるWebシステム開発プロジェクトでは、以下のように適用されました:

  1. インプット:過去の類似プロジェクトの開発記録から、技術的リスクの洗い出しを実施。
  2. アウトプット:リスク登録簿に「新技術採用による開発遅延」などを記録し、優先順位付けを実施。

3.2. インフラ構築プロジェクトでの適用

 データセンター移行プロジェクトでは:

  1. インプット:ステークホルダー登録簿から関係部署の要件を確認。
  2. アウトプット:システム停止時間に関するリスクを優先順位付けし、対応計画を策定。

4. 例題

例題1

問題:
プロジェクトのリスク管理プロセスにおけるインプットとして、最も適切でないものはどれか。

a) プロジェクト計画書
b) ステークホルダー登録簿
c) 完了したリスク対応の評価結果
d) プロジェクトのスコープ記述書

解答:c
解説:完了したリスク対応の評価結果は、むしろアウトプットとして扱われます。

例題2

問題:
リスク管理プロセスのアウトプットとして、必ず含まれるべきものはどれか。

a) リスク登録簿
b) プロジェクト憲章
c) 作業分解構造図
d) 品質管理計画書

解答:a
解説:リスク登録簿は、特定されたリスクとその分析結果を記録する重要なアウトプットです。

5. まとめ

 プロジェクトのリスク管理プロセスにおける主要なインプットとアウトプットの理解は、効果的なリスク管理の基盤となります。特に以下の点が重要です:

  1. インプット:プロジェクト計画書やステークホルダー登録簿の活用。
  2. アウトプット:リスク登録簿の作成と維持。
  3. 優先順位付け:リスクに基づく効果的な対応計画の策定。

 これらの要素を適切に管理することで、プロジェクトの成功確率を高めることができます。