7.1. コストの対象群が含むプロセス

目的とプロセス

コストの対象群には,予算を作成し,進捗状況を監視してコストを管理するために必要なプロセスを含む。それらのプロセスの目的,役割,機能,プロセス間の関連などを理解する。

プロセス

コストの見積り,予算の作成,コストの管理

1. 概要

 プロジェクトマネジメントにおいて、コストの管理は成功の重要な要素です。コストの対象群には、プロジェクトの予算作成から実行中のコスト管理まで、一連のプロセスが含まれています。これらのプロセスを適切に実行することで、プロジェクトの予算内での完遂が可能となります。

1.1. コストマネジメントの重要性

 コストマネジメントは以下の理由から重要です:

  • プロジェクトの収益性確保
  • 予算超過リスクの低減
  • ステークホルダーへの説明責任の履行
  • 効率的な資源配分の実現

2. 詳細説明

2.1. コストの見積り

 コストの見積りは、プロジェクトで必要となる資源のコストを算定するプロセスです。以下の要素を考慮します:

  • 人的資源コスト
  • 機器・設備コスト
  • 材料コスト
  • 外注コスト
  • 予備費
flowchart TB
    Start[コスト見積り開始] --> Past[過去プロジェクトデータ収集]
    Past --> Resource[必要資源の洗い出し]
    Resource --> Costs[コスト要素の特定]
    
    Costs --> H[人的資源コスト]
    Costs --> E[機器・設備コスト]
    Costs --> M[材料コスト]
    Costs --> O[外注コスト]
    
    H & E & M & O --> Est[概算見積り]
    Est --> Risk[リスク分析]
    Risk --> Reserve[予備費の算定]
    Reserve --> Final[最終見積り確定]
    
    style Start fill:#d0e0ff
    style Final fill:#d0e0ff
    style Risk fill:#ffe0e0
    style Reserve fill:#ffe0e0

図1:コスト見積りプロセスのフロー図

 これらを精度高く見積もるためには、過去プロジェクトのデータやリスクの影響を分析することが重要です。特に、リスク対応を見越した予備費の設定がポイントとなります。

2.2. 予算の作成

 予算の作成は、見積りを基に具体的な予算計画を立てるプロセスです。以下の手順で実施します:

  1. コスト見積りの集計
  2. タイムフェーズ予算の作成
  3. コントロールアカウントの設定
  4. 予備費の配分

 ここで、「マネジメント予備費」と「コンティンジェンシー予備費」の使い分けが重要です。マネジメント予備費は未特定リスクに対応するために設定され、プロジェクトマネージャーの裁量で使用されます。一方、コンティンジェンシー予備費は特定のリスクに対して設定され、リスク発生時にのみ使用可能です。

graph TB
    subgraph Input[入力情報]
        E[コスト見積り] --> CA[コスト集計]
        R[リスク分析結果] --> CA
    end
    
    subgraph Process[予算作成プロセス]
        CA --> TP[タイムフェーズ予算]
        TP --> CAC[コントロールアカウント設定]
        CAC --> RB[予備費配分]
    end
    
    subgraph Reserves[予備費の種類]
        M[マネジメント予備費
未特定リスク用] --> RB C[コンティンジェンシー予備費
特定リスク用] --> RB end RB --> FB[最終予算確定] classDef default fill:#f9f9f9,stroke:#333,stroke-width:1px classDef process fill:#d4e6ff,stroke:#333,stroke-width:1px classDef reserves fill:#ffe6e6,stroke:#333,stroke-width:1px class Input,E,R default class Process,CA,TP,CAC,RB process class Reserves,M,C reserves

図2:予算作成の全体図

2.3. コストの管理

 コストの管理は、プロジェクト実行中の支出を監視し、必要に応じて是正処置を講じるプロセスです。主な活動には以下があります:

  • 実績コストの収集
  • 出来高の測定
  • 差異分析の実施
  • 予測の更新
  • 是正処置の実施

 例えば、差異分析では、コスト効率指数(CPI)やスケジュール効率指数(SPI)を用いて現状のパフォーマンスを評価します。CPIやSPIの計算方法については、次セクションで詳しく説明します。

図3:差異分析の例(CPI・SPIグラフ)

3. 応用例

3.1. システム開発プロジェクトでの適用

 システム開発プロジェクトでは、以下のようにコストプロセスを適用します:

  • 開発工数の見積りによる人件費算出
  • ハードウェア・ソフトウェアライセンスの予算化
  • アジャイル開発におけるスプリントごとのコスト管理

3.2. 建設プロジェクトでの適用

 建設プロジェクトでは、以下のような適用例があります:

  • 材料費・労務費の詳細見積り
  • 工程別予算の作成
  • 出来高に基づく進捗管理

3.3. 製造業プロジェクトでの適用

 製造業プロジェクトでは、次のように適用されます:

  • 生産設備導入にかかるコストの見積り
  • 製造ライン稼働コストの予算化
  • スケジュール遅延による追加費用の分析と是正処置
業界 主要コスト項目 特徴的な管理手法 重要な指標
システム開発
  • 人件費
  • ライセンス費
  • インフラ費用
  • 工数ベース管理
  • スプリント単位の予算管理
  • 人月単価
  • バーンダウンレート
建設
  • 材料費
  • 労務費
  • 機械設備費
  • 出来高管理
  • 原価報告制度
  • 出来高率
  • 原価率
製造業
  • 設備投資
  • 原材料費
  • 製造経費
  • 標準原価管理
  • 変動費管理
  • 原価差異
  • 稼働率

図4:業界別コスト管理の比較表

4. 例題

例題1

 あるソフトウェア開発プロジェクトで、以下の状況が発生しました:

  • 計画値(PV):1000万円
  • 実績値(AC):800万円
  • 出来高(EV):700万円

このプロジェクトのコスト効率指数(CPI)とスケジュール効率指数(SPI)を求めなさい。

  • CPI = EV/AC = 700/800 = 0.875
  • SPI = EV/PV = 700/1000 = 0.7

 このプロジェクトは予算効率、進捗ともに計画を下回っている状態です。

例題2

 プロジェクトの予算作成において考慮すべき予備費の種類を2つ挙げ、それぞれの特徴を説明しなさい。

  1. マネジメント予備費
    • 未特定リスク対応用の予備費
    • プロジェクトマネージャーの裁量で使用可能
  2. コンティンジェ
    • 特定リスク対応用の予備費
    • リスク発生時のみ使用可能

5. まとめ

 コストの対象群に含まれる主要なプロセスは以下の3つです:

  1. コストの見積り:必要な資源のコストを算定
  2. 予算の作成:具体的な予算計画の策定
  3. コストの管理:実行中の支出管理と是正処置

 これらのプロセスは相互に関連し、それぞれが以下の役割を担っています:

  • 見積りは予算作成の基礎となる
  • 予算は管理の基準となる
  • 管理結果は見積りの精度向上に活用される

 効果的なコストマネジメントのためには、これらのプロセスを適切に実施し、リスク対応も含めた継続的な改善を図ることが重要です。