7.2. 主要なインプット及びアウトプット

目的と用語例

コストの対象群が含むプロセスの主要なインプット及びアウトプットを理解する。

用語例

予算,実コスト,予想コスト

1. 概要

 プロジェクトのコストマネジメントにおける主要なインプット及びアウトプットの理解は、プロジェクトの成功に不可欠な要素です。プロジェクトマネージャーは、これらの要素を適切に把握し、管理することで、予算内でのプロジェクト完遂を実現できます。本記事では、応用情報処理技術者試験の受験者向けに、試験範囲に関連付けた解説を行います。

2. 詳細説明

2.1. 主要なインプット

 プロジェクトのコスト管理プロセスにおける主要なインプットは以下の通りです:

  • プロジェクト計画書:プロジェクト全体の指針となる文書。
  • 作業分解構造図(WBS):プロジェクトの作業を階層的に分割した図。
  • リソース要件:プロジェクトで必要な人材、設備、資材、時間などの明細。
  • プロジェクトスケジュール:プロジェクトの開始日・終了日、作業順序を示した計画。
  • リスク登録簿:リスクの特定、分析、対応策を記載した文書。
  • 組織の過去の実績データ:類似プロジェクトから得られたデータで、見積り精度向上に寄与。
flowchart TB
    PP[プロジェクト計画書] --> WBS[作業分解構造図]
    WBS --> RR[リソース要件]
    WBS --> PS[プロジェクトスケジュール]
    RR --> RG[リスク登録簿]
    PS --> RG
    HD[組織の過去の実績データ] --> RR
    HD --> RG
    
    classDef default fill:#f9f9f9,stroke:#333,stroke-width:2px
    classDef primary fill:#e1f3ff,stroke:#333,stroke-width:2px
    class PP,WBS primary

図1:インプットの関係性

2.2. 主要なアウトプット

 コスト管理プロセスから生成される主要なアウトプットは以下の通りです:

  • コスト見積り(予想コスト):必要なコストの見積り値。
  • コスト管理計画書:コストの測定・制御方法を定めた文書。
  • プロジェクト予算:プロジェクト全体に割り当てられる金額。
  • コストベースライン:進捗のモニタリングに使用する基準値。
  • 実コストデータ:実際に発生したコスト。
  • パフォーマンスレポート:進捗やコストパフォーマンスを示した報告書。
アウトプット 主な利用場面 更新頻度
コスト見積り(予想コスト) プロジェクト計画策定時、変更管理時 必要に応じて
コスト管理計画書 プロジェクト開始時、管理方針変更時 低頻度
プロジェクト予算 予算配分時、予算修正時 中頻度
コストベースライン 進捗管理時、パフォーマンス測定時 低頻度
実コストデータ 日常的な実績記録、分析時 高頻度
パフォーマンスレポート 定期報告時、マイルストーン達成時 定期的

表1:アウトプットの一覧とその利用場面

3. 応用例

3.1. システム開発プロジェクトでの活用

 システム開発プロジェクトにおけるコスト管理の活用例を以下に示します:

  • 開発フェーズごとの予算配分。
  • 人件費と設備投資の実コスト管理。
  • 予想コストと実績の比較分析を用いた改善。

表2:予想コストと実コストの比較

3.2. コスト差異への対応

 予算と実コストの差異が発生した場合の対応手順は以下の通りです:

  1. 差異の原因分析。
  2. 是正措置の立案。
  3. 予想コストの再計算。
  4. 修正後の予算計画書の作成。

4. 例題

例題1

 あるシステム開発プロジェクトで以下の状況が発生しました。主要なインプットとして不足している項目を指摘してください。

与件:
- プロジェクト計画書あり
- WBSあり
- プロジェクトスケジュールあり
- リソース要件なし

 リソース要件が不足しています。これはコスト見積りの重要なインプットとなるため、必ず準備する必要があります。

例題2

 プロジェクトの予算が1000万円、現時点での実コスト(AC)が600万円、予想コストが1200万円となっています。成果物の価値(EV)を500万円と仮定して、この状況でCPIを計算し、プロジェクトの進捗を評価してください。

  1. パフォーマンスレポートの作成。
  2. コスト超過の原因分析レポート。
  3. 是正措置計画書の策定。
  4. 修正後の予算計画の提示。

補足問題

 CPI(コストパフォーマンス指標)を計算し、プロジェクトの進捗を評価してください。

\(CPI = EV / AC = 500 / 600 = 0.83\)
プロジェクトは予算を超過しています。

解説

補足問題の解答例で計算した CPI(コストパフォーマンス指標) の解説を詳しく行います。

問題の状況の整理

  • 予算:1,000万円
  • 現時点での実コスト(AC, Actual Cost):600万円
  • 予想コスト:1,200万円
  • 成果物の価値(EV, Earned Value):500万円

解答の計算式

CPI(Cost Performance Index)は、プロジェクトのコスト効率を測る指標で、以下の式で求めます:

\(CPI=\frac{EV}{AC}\)

ここで:

  • EV(Earned Value, 獲得価値):プロジェクトで得られた成果の金額を指します。
  • AC(Actual Cost, 実コスト):実際に支出した金額を指します。

計算手順

与えられたデータを式に当てはめます:

\(CPI= \frac{500}{600} = 0.83\)

この計算結果から、CPIの値は0.83となります。

CPIの評価基準

CPIの値は以下の基準で評価します:

  • CPI = 1:計画通りにコストが使われている(予算内で進行中)。
  • CPI > 1:予算より効率的にプロジェクトが進んでいる(コスト節約)。
  • CPI < 1:予算を超過してプロジェクトが進んでいる(コスト超過)。

この問題では CPI = 0.83 であり、コスト超過の状態です。

解釈と対応策

CPIが0.83ということは、プロジェクトが計画の83%の効率で進行していることを示します。具体的には:

  • プロジェクトの進捗に対して、コストが多くかかりすぎている。
  • 計画に基づく成果価値(EV)が600万円分になるはずが、実際には500万円しか達成できていない。
対応策
  1. 原因分析:コスト超過の原因を特定する。例:リソースの不足や誤った見積り、予期せぬ問題の発生。
  2. 是正措置:例えば、効率を改善するためにリソース配分を見直したり、スケジュールを調整したりする。
  3. 予算修正:今後の作業計画とコストを再評価して、修正計画を作成する。

5. まとめ

 プロジェクトのコスト管理プロセスにおける主要なインプット及びアウトプットの理解は、効果的なプロジェクト運営の基盤となります。特に以下の点が重要です:

  • インプットとしての計画書、WBS、リソース要件の重要性。
  • アウトプットとしての予算、実コスト、予想コストの管理。
  • 定期的なモニタリングと報告の必要性。
  • 差異発生時の適切な対応手順の実施。

 これらの要素を適切に管理することで、プロジェクトの成功確率を高めることができます。