目的と用語例
時間の対象群が含むプロセスに関連するツールと技法などを理解する。
類推見積り,パラメトリック見積り,三点見積り,ボトムアップ見積り,予備設定分析,スケジュールネットワーク分析,PERT,CPM(Critical Path Method:クリティカルパス法),PDM(Precedence Diagramming Method:プレシデンスダイアグラム法),クリティカルチェーン,アローダイアグラム,ガントチャート,マイルストーン,資源最適化(資源平準化,資源円滑化),What-If シナリオ分析,クラッシング,ファストトラッキング,ラグ,リード,傾向分析,差異分析,EVM(Earned Value Management),大日程計画表(マスタスケジュール),中日程計画表(工程別作業計画),小日程計画表(週間作業計画),進捗報告,コンティンジェンシー予備
1. 概要
プロジェクトにおける時間管理は、プロジェクトの成功を左右する重要な要素です。時間管理のツールと技法は、プロジェクトのスケジュール作成、進捗管理、そして期間の見積りなど、様々な場面で活用されます。これらのツールと技法を適切に使用することで、プロジェクトの効率的な運営と目標達成が可能となります。
2. 詳細説明
2.1. 見積り手法
プロジェクトの時間見積りには、以下の手法があります:
2.1.1. 類推見積り
過去の類似プロジェクトの実績を参考に見積りを行う手法です。
2.1.2. パラメトリック見積り
統計的な関係性を用いて定量的に見積りを行う手法です。
2.1.3. 三点見積り
最適値(M)、最悪値(P)、最良値(O)の3つの値から期待値を算出する手法です。
2.1.4. ボトムアップ見積り
作業を細分化し、各作業の見積りを積み上げて全体を算出する手法です。
2.2. スケジュール分析手法
2.2.1. スケジュールネットワーク分析
PERT(Program Evaluation and Review Technique)やCPM(Critical Path Method)を用いて、作業の順序関係や所要時間を分析する手法です。
2.2.2. PDM(Precedence Diagramming Method)
作業間の依存関係を表現する手法で、ラグやリードなどの時間的な関係も表現できます。
図1:PDMの図解例
2.2.3. クリティカルチェーン
資源制約を考慮したスケジュール管理手法です。予備設定分析を含みます。
2.3. スケジュール表現手法
2.3.1. アローダイアグラム
作業をノードとして矢印で表現する手法です。
図2:アローダイアグラムの例
2.3.2. ガントチャート
横軸に時間、縦軸に作業を配置した棒グラフです。マイルストーンも表現できます。
図3:ガントチャート例
2.4. 資源管理手法
2.4.1. 資源最適化
資源平準化と資源円滑化により、効率的な資源配分を実現します。
例:人員の負荷が集中しないようにタスクを再配置し、従業員の過労を防ぎます。
2.4.2. スケジュール短縮手法
- クラッシング:コストを投入して期間を短縮します。
例:追加の作業員を雇用して、タスクAの期間を短縮します。 - ファストトラッキング:並行作業による期間短縮を行います。
2.5. 進捗管理手法
2.5.1. EVM(Earned Value Management)
計画値(PV: Planned Value)、実績値(AC: Actual Cost)、成果値(EV: Earned Value)を比較し、進捗状況を定量的に評価します。
指標 | 略称 | 説明 | 計算式 |
---|---|---|---|
スケジュール差異 | SV | 予定より進んでいるか遅れているかを示す | EV – PV |
コスト差異 | CV | 予算より超過しているか節約されているかを示す | EV – AC |
スケジュール効率指数 | SPI | スケジュールの効率を示す | EV ÷ PV |
コスト効率指数 | CPI | コストの効率を示す | EV ÷ AC |
※ PV: 計画値(Planned Value)
※ EV: 出来高(Earned Value)
※ AC: 実コスト(Actual Cost)
表1:EVMの評価指標表
2.5.2. 各種計画表
- 大日程計画表(マスタスケジュール)
- 中日程計画表(工程別作業計画)
- 小日程計画表(週間作業計画)
3. 応用例
3.1. システム開発プロジェクトでの活用
システム開発では、What-If シナリオ分析を用いてリスク対応を検討し、進捗報告とコンティンジェンシー予備を活用して、予期せぬ事態に備えます。
3.2. 建設プロジェクトでの活用
建設プロジェクトでは、傾向分析や差異分析を用いて進捗を管理し、必要に応じて計画の見直しを行います。
4. 例題
例題1
Q:あるプロジェクトで三点見積りを行う際、最適値(M)が20日、最悪値(P)が30日、最良値(O)が16日でした。期待値を求めてください。
期待値 = (P + 4M + O) ÷ 6
= (30 + 4×20 + 16) ÷ 6
= (30 + 80 + 16) ÷ 6
= 126 ÷ 6
= 21日
例題2
Q:クリティカルパス上にない作業について、正しい説明を選んでください。
- 必ずトータルフロートがある
- 常に最短で完了する必要がある
- 遅延すると必ずプロジェクト全体が遅延する
- 先行作業が完了次第、直ちに着手する必要がある
正解は1です。クリティカルパス上にない作業には必ずトータルフロート(余裕時間)があります。
5. まとめ
プロジェクトの時間管理では、様々なツールと技法を状況に応じて適切に選択し、組み合わせて使用することが重要です。見積り、スケジュール分析、進捗管理などの各段階で適切なツールを活用することで、効果的なプロジェクト管理が可能となります。特に、EVMやWhat-If分析などの手法を用いることで、プロジェクトの客観的な評価と適切な意思決定を行うことができます。