6.1. 時間の対象群が含むプロセス

目的とプロセス

時間の対象群には,プロジェクト活動のスケジュールを立て,進捗状況を監視してスケジュールを管理するために必要なプロセスを含む。それらのプロセスの目的,役割,機能,プロセス間の関連などを理解する。

プロセス

活動の順序付け,活動期間の見積り,スケジュールの作成,スケジュールの管理

1. 概要

 プロジェクトの成功には、適切な時間管理が不可欠です。時間管理プロセスには、プロジェクト活動のスケジュールを立案し、進捗状況を監視して管理するための重要な手法が含まれています。具体的には、活動の順序付け、活動期間の見積り、スケジュールの作成、スケジュールの管理という4つの主要プロセスで構成されています。

1.1. 時間管理の重要性

 プロジェクトの納期遅延は、コストの増大やステークホルダーの信頼低下につながる重大なリスクとなります。そのため、適切な時間管理プロセスを実施することは、プロジェクトマネジメントの成功に直結する重要な要素です。特に、時間管理はプロジェクトリスク管理とも密接に関連しており、リスク回避や軽減にも貢献します。

2. 詳細説明

2.1. 活動の順序付け

 プロジェクト活動間の論理的な依存関係を特定し、適切な実施順序を決定するプロセスです。以下の4つの依存関係タイプを考慮します(図1:依存関係タイプの概要を参照):

  • 終了-開始(FS):先行作業が終了後に後続作業を開始
  • 開始-開始(SS):先行作業の開始と同時に後続作業を開始
  • 終了-終了(FF):両作業が同時に終了
  • 開始-終了(SF):先行作業の開始後に後続作業が終了
gantt
    title 依存関係タイプの概要
    dateFormat  YYYY-MM-DD
    axisFormat %d日
    section 終了-開始(FS)
    先行作業    :a1, 2024-01-01, 5d
    後続作業    :a2, after a1, 5d
    section 開始-開始(SS)
    先行作業    :b1, 2024-01-15, 5d
    後続作業    :b2, 2024-01-15, 5d
    section 終了-終了(FF)
    先行作業    :c1, 2024-02-01, 5d
    後続作業    :c2, 2024-02-01, 5d
    section 開始-終了(SF)
    先行作業    :d1, 2024-02-15, 5d
    後続作業    :d2, 2024-02-15, 3d

図1:依存関係タイプの概要

2.2. 活動期間の見積り

 各プロジェクト活動の所要時間を見積るプロセスです。見積りの際には、次の手法を適用します:

  • 類推見積り:過去の類似プロジェクトの実績を参考にする
  • パラメトリック見積り:定量的なパラメータを用いる
  • 三点見積り:最悪値、最良値、最可能値から期待値を算出する
     また、リスクに備えたバッファ期間の設定(コンティンジェンシーリザーブ、マネジメントリザーブ)も重要です。

2.3. スケジュールの作成

 活動の順序と期間見積りを基に、プロジェクト全体のスケジュールを策定します。主な手法は以下の通りです:

  • クリティカルパス法(CPM):重要な経路を特定し、全体の所要時間を算出
  • PERT(Program Evaluation and Review Technique):不確実性を考慮した統計的手法
  • ガントチャート作成:視覚的にスケジュールを管理
    図2:ガントチャート例で視覚的なスケジュール管理のイメージを確認してください。
gantt
    title システム開発プロジェクトのガントチャート
    dateFormat YYYY-MM-DD
    axisFormat %m月
    section フェーズ1
    要件定義    :active, req, 2024-01-01, 20d
    基本設計    :des1, after req, 30d
    section フェーズ2
    詳細設計    :des2, after des1, 40d
    実装        :dev, after des2, 50d
    section フェーズ3
    テスト      :test, after dev, 30d
    milestone 要件確定 :milestone, m1, after req, 0d
    milestone 設計完了 :milestone, m2, after des2, 0d
    milestone リリース :milestone, m3, after test, 0d

図2:ガントチャート例

2.4. スケジュールの管理

 進捗状況を監視し、必要に応じてスケジュールを修正するプロセスです。具体的な手法として以下があります:

  • 実績値の測定とベースラインとの比較
  • スケジュール差異分析
  • 是正処置の実施
    また、進捗管理ツール(例:バーンダウンチャートやカンバンボード)の活用も効果的です(図3:バーンダウンチャート例を参照)。

図3:バーンダウンチャート例

3. 応用例

3.1. システム開発プロジェクトでの適用

 要件定義→基本設計→詳細設計→実装→テストという工程での具体的な適用例:

  • 工程間の依存関係の明確化
  • 各工程の期間見積り
  • マイルストーンの設定
  • 進捗報告会議の定期開催

3.2. アジャイル開発での適用

 スプリント計画での活用:

  • イテレーション期間の設定
  • ストーリーポイントによる作業量見積り
  • デイリースクラムでの進捗管理
  • バーンダウンチャートによる残作業量の可視化

4. 例題

例題1

問題:あるシステム開発プロジェクトで、以下の作業がある:

  • 要件定義(20日)
  • 基本設計(30日)
  • 詳細設計(40日)
  • 実装(50日)
  • テスト(30日)

これらの作業には終了-開始の依存関係があるとき、プロジェクトの最短所要期間を求めよ。

各作業を直列に実施する必要があるため、 20 + 30 + 40 + 50 + 30 = 170日が最短所要期間となる。

例題2

問題:ある作業の三点見積りが以下の通りである:

  • 最悪値(P):12日
  • 最可能値(M):8日
  • 最良値(O):6日

期待値を求めよ。

期待値の計算式 (P + 4M + O) ÷ 6 を使用すると、 (12 + 4×8 + 6) ÷ 6 = 50 ÷ 6 ≒ 8.3日

5. まとめ

 プロジェクトの時間管理プロセスは、以下の4つの主要プロセスで構成されています:

  1. 活動の順序付け:作業間の依存関係を明確化
  2. 活動期間の見積り:各作業の所要時間を算出
  3. スケジュールの作成:全体計画の策定
  4. スケジュールの管理:進捗監視と是正処置

 これらのプロセスを適切に実施することで、プロジェクトの時間管理を効果的に行うことができます。特に、各プロセスの相互関連性を理解し、プロジェクト全体を通して一貫した管理を行うことが重要です。