5.1. 資源の対象群が含むプロセス

目的とプロセス

資源の対象群には,人員,施設,機器,材料,インフラストラクチャ,ツールなど,適切なプロジェクト資源を特定し,得るために必要なプロセスを含む。それらのプロセスの目的,役割,機能,プロセス間の関連などを理解する。

プロセス

プロジェクトチームの編成,資源の見積り,プロジェクト組織の定義,プロジェクトチームの開発,資源の管理,プロジェクトチームのマネジメント

1. 概要

1.1. プロジェクト資源管理の基本

 プロジェクト資源管理とは、プロジェクト目標の達成に必要なさまざまなリソース(人員、施設、機器、材料、インフラ、ツールなど)を特定し、調達・配置・管理するためのプロセスを指します。

1.2. 重要性

 効果的な資源管理は、プロジェクトの成功に直結する重要な要素です。適切な資源管理によって以下の利点が得られます:

  • コストの最適化
  • スケジュールの遵守
  • 品質の確保
  • リスクの低減
graph TD
    A[プロジェクトチームの編成]
    B[資源の見積り]
    C[プロジェクト組織の定義]
    D[プロジェクトチームの開発]
    E[資源の管理]
    F[プロジェクトチームの
マネジメント] A --> B B --> C C --> D D --> E E --> F style A fill:#e1f5fe style B fill:#e1f5fe style C fill:#e1f5fe style D fill:#e1f5fe style E fill:#e1f5fe style F fill:#e1f5fe %% 双方向の矢印を追加 E -.-> B F -.-> E %% 説明を追加 subgraph プロジェクト資源管理プロセス A B C D E F end

図1:プロジェクト資源管理プロセスの全体図

2. 詳細説明

2.1. 資源管理の主要プロセス

2.1.1. プロジェクトチームの編成

 プロジェクトの要件に基づいて、必要なスキルと経験を持つメンバーを選定し、チームを構成するプロセスです。

2.1.2. 資源の見積り

 プロジェクトの各タスクに必要なリソースの種類と量を算出し、それらの調達時期を計画します。

フェーズ 必要スキル 人数 期間 必要機材
要件定義 システムアナリスト 2名 1ヶ月 PC×2台
基本設計 アーキテクト 3名 2ヶ月 PC×3台
設計ツール
詳細設計 設計者 4名 2ヶ月 PC×4台
設計ツール
開発 プログラマー 6名 4ヶ月 PC×6台
開発サーバー
テスト テスター 4名 2ヶ月 PC×4台
テスト環境

表1:資源見積り表の例

2.1.3. プロジェクト組織の定義

 プロジェクトメンバーの役割、責任、報告関係を明確化し、効率的な組織構造を確立するプロセスです。

graph TD
    A[プロジェクトマネージャー]
    B[技術リーダー]
    C[品質管理リーダー]
    D[開発チームA]
    E[開発チームB]
    F[テストチーム]
    G[インフラチーム]
    
    A --> B
    A --> C
    B --> D
    B --> E
    B --> G
    C --> F
    
    style A fill:#ffcccc
    style B fill:#ccffcc
    style C fill:#ccffcc
    style D fill:#e6f3ff
    style E fill:#e6f3ff
    style F fill:#e6f3ff
    style G fill:#e6f3ff
    
    subgraph プロジェクト組織
    A
    B
    C
    D
    E
    F
    G
    end

図2: プロジェクト組織図の例

2.1.4. プロジェクトチームの開発

 チームメンバーのスキル向上や、チームワークの醸成を図ります。具体的には、研修やチームビルディング活動を実施します。

2.1.5. 資源の管理

 プロジェクト全体を通じて、各リソースの効率的な活用と配分を行います。

2.1.6. プロジェクトチームのマネジメント

 チームのパフォーマンスを監視し、必要に応じて調整を行います。

3. 応用例

3.1. システム開発プロジェクトでの適用

 大規模なシステム開発プロジェクトでは、以下のような適用例があります:

  • 開発フェーズごとの必要人員の見積りと配置
  • 開発環境(サーバー、PC)の調達と割り当て
  • テスト環境の確保とスケジューリング

3.2. インフラ構築プロジェクトでの適用

 データセンター構築プロジェクトでは、以下が具体的な適用例です:

  • 工事担当者のスキルマッピングと配置
  • 施工機材の調達計画
  • セキュリティ設備の導入スケジュール管理

4. 例題

例題1

問題:  システム開発プロジェクトで以下の状況が発生しました。

  • プロジェクト期間:6ヶ月
  • 必要スキル:Java開発、データベース設計、ネットワーク構築
  • 現在の課題:チーム内でスキルの偏りがある

質問:  プロジェクトマネージャーとして、チーム内のスキル不足をどのように解決し、プロジェクトを円滑に進めますか?具体的な資源管理プロセスを提示してください。

  1. プロジェクトチームの編成
     スキルマトリクスを作成し、不足スキルを特定。外部からの人材調達を検討。
  2. プロジェクトチームの開発
     社内研修プログラムの実施やペアプログラミングによるスキル移転。
  3. 資源の管理
     スキル習得進捗のモニタリングを定期的に行い、必要に応じてタスクを再配分。
メンバー Java開発 DB設計 ネットワーク構築 プロジェクト経験
山田 5年
鈴木 3年
佐藤 4年
田中 1年
◎:熟練 ○:実務経験あり △:基礎知識あり

図3:スキルマトリクスの例

例題2

問題:  プロジェクトの途中で以下の変更が発生しました。

  • 開発スコープの20%増加
  • 納期は変更なし
  • 予算は10%増加可能

質問:  プロジェクトマネージャーとして、変更に伴うリソースの調整方法をどのように計画・実行しますか?資源管理の観点から具体的な対応を述べてください。

  1. 資源の見積り
     追加作業量を算出し、必要な追加リソースを特定。
  2. プロジェクト組織の定義
     既存チームを再編成し、新規メンバーの役割を明確化。
  3. プロジェクトチームのマネジメント
     残業管理を見直し、優先度に基づくタスク再配分を実施。

5. まとめ

 プロジェクト資源管理プロセスは、以下の6つの主要プロセスで構成されます:

  1. プロジェクトチームの編成
  2. 資源の見積り
  3. プロジェクト組織の定義
  4. プロジェクトチームの開発
  5. 資源の管理
  6. プロジェクトチームのマネジメント

 これらのプロセスを適切に実施することで、プロジェクトに必要なリソースを効率的に確保し、活用することが可能です。特に人的資源の管理では、スキル育成や組織的な取り組みが成功の鍵を握ります。