3.3. ツールと技法

目的と用語例

ステークホルダの対象群が含むプロセスに関連するツールと技法などを理解する。

用語例

ステークホルダ分析

1. 概要

 プロジェクトのステークホルダ管理において、適切なツールと技法を使用することは、プロジェクトの成功に不可欠です。ステークホルダとは、プロジェクトに影響を与える、または影響を受ける個人やグループを指し、その特定と分析、そして適切な対応が重要となります。本記事では、主要なツールと技法について具体的に解説し、実務や試験対策に役立つ情報を提供します。

2. 詳細説明

2.1. ステークホルダ分析の基本ツール

 ステークホルダ分析では、以下の主要なツールと技法が活用されます:

2.1.1. ステークホルダ登録簿

 各ステークホルダの基本情報、役割、影響力、期待事項などを文書化するツールです。これにより、体系的な管理が可能となります。

図1:ステークホルダ登録簿の例
ID 名称 役割 影響力 期待事項
SH001 経営企画部長 予算承認者 コスト削減
SH002 システム部長 技術管理者 品質確保
SH003 エンドユーザー 利用部門 使いやすさ

2.1.2. パワー/インタレストグリッド

 ステークホルダの権力(パワー)と関心(インタレスト)の2軸でマッピングし、適切な対応戦略を検討するための分析ツールです。以下の4象限に分類されます:

  1. 高パワー/高インタレスト: 完全に満足させる。
  2. 高パワー/低インタレスト: 最小限の努力で満足させる。
  3. 低パワー/高インタレスト: 情報提供を継続する。
  4. 低パワー/低インタレスト: 監視を行う。

図2: パワー/インタレストグリッド

2.1.3. 影響度/態度マトリクス

 ステークホルダの影響力と、プロジェクトに対する態度(支持/反対)を評価し、可視化するツールです。態度に応じた対策が立案しやすくなります。

図3: 影響度/態度マトリクスの例

3. 応用例

3.1. IT系プロジェクトでの活用

 システム開発プロジェクトにおいて、以下のように活用されます:

  • エンドユーザーの要求分析: グリッドを活用し、期待事項を可視化。
  • 経営層との合意形成: 定例会議や進捗報告を計画し、影響力の高い層を満足させる。
  • 開発チームとの協力体制構築: タスクの分担と透明性を高める。

3.2. 建設プロジェクトでの活用

 建設プロジェクトでは、地域住民や行政機関など、多様なステークホルダとの調整が必要となります。

  • 地域住民との調整: 定期的な説明会やフィードバックセッションを実施。
  • 行政機関との調整: 必要な承認手続きや規制対応を計画的に管理。

4. 例題

例題1

問題
 あるシステム開発プロジェクトにおいて、以下のステークホルダが存在します。

  • 経営層(予算決定権あり、関心は中程度、コスト削減に注力)
  • エンドユーザー部門(予算決定権なし、関心は高い、UI改善を重視)
  • 外部ベンダー(技術提供者、関心は中程度、納期遵守が最優先)

 パワー/インタレストグリッドを用いて、適切な対応戦略を検討してください。

解答例

  1. 経営層:高パワー/中インタレスト → 定例会議で満足させる。
  2. エンドユーザー部門:低パワー/高インタレスト → 情報提供を継続する。
  3. 外部ベンダー:中パワー/中インタレスト → 監視し、必要に応じて対応する。

図4: 解答例のパワー/インタレストグリッド

  1. 経営層:高パワー/中インタレスト → 定例会議で満足させる。
  2. エンドユーザー部門:低パワー/高インタレスト → 情報提供を継続する。
  3. 外部ベンダー:中パワー/中インタレスト → 監視し、必要に応じて対応する。

例題2

問題
 プロジェクトの主要ステークホルダの分析において、ステークホルダ登録簿に含めるべき項目を最低3つ挙げてください。

  1. 連絡先情報(所属、役職、連絡方法)
  2. プロジェクトにおける役割と影響力レベル
  3. 主要な関心事項と期待事項

5. まとめ

 プロジェクトのステークホルダ管理において、適切なツールと技法を活用することは、以下の点で重要です:

  • ステークホルダの特定と分類が可能
  • 影響力と関心度の評価が可能
  • 適切な対応戦略の立案が可能
  • 継続的なモニタリングと調整が可能

 これらのツールと技法を効果的に活用することで、プロジェクトの成功確率を高めることができます。