1.1.4. プロジェクトマネジメントの十の対象群

目的と用語例

プロジェクトマネジメントの十の対象群を理解する。

用語例

統合の対象群,ステークホルダの対象群,スコープの対象群,資源の対象群,時間の対象群,コストの対象群,リスクの対象群,品質の対象群,調達の対象群,コミュニケーションの対象群

1. 概要

 プロジェクトマネジメントの十の対象群は、プロジェクトを成功に導くために管理すべき重要な要素を体系的にまとめたものです。これらの対象群を適切に管理することで、プロジェクトの目標達成と成功確率を高めることができます。各対象群は相互に関連しており、一体として管理することが重要です。

2. 詳細説明

2.1. 統合の対象群

 プロジェクト全体を統合的に管理し、各要素間の調整や整合性を確保します。プロジェクト憲章の作成やプロジェクト計画書の策定、変更管理プロセスの調整が含まれます。プロジェクト憲章には、プロジェクトの目的、成果物、主要なマイルストーン、リソース概要などが記載されます。

2.2. ステークホルダの対象群

 プロジェクトに関係する利害関係者を特定し、その期待やニーズを管理します。顧客、エンドユーザー、スポンサー、チームメンバーなどが対象となります。利害関係者マップを作成し、影響度と関与度を分類することで、適切なコミュニケーション計画を策定します。

2.3. スコープの対象群

 プロジェクトで実現する成果物の範囲を定義し、管理します。要件定義書の作成、作業分解図(WBS)の作成、および変更要求の管理が含まれます。変更要求が発生した場合は、影響を評価し、スコープ変更の可否を判断します。

2.4. 資源の対象群

 人材、設備、材料などのプロジェクトリソースを計画し、効率的に活用します。スキルマトリクスを活用して、プロジェクトチームの編成と必要なトレーニング計画を立てます。

2.5. 時間の対象群

 スケジュール管理を行い、各作業の所要時間や順序を管理します。作業分解図(WBS)をもとにアクティビティを定義し、クリティカルパス分析を実施します。

2.6. コストの対象群

 予算管理を行い、プロジェクトにかかる費用を計画し、統制します。予算超過を防ぐために、実績値(Earned Value Management, EVM)を用いたモニタリングが重要です。

2.7. リスクの対象群

 プロジェクトに影響を与える可能性のあるリスクを特定し、対応策を検討します。リスク登録簿を作成し、定期的に見直してリスクの発生確率と影響度を評価します。

2.8. 品質の対象群

 成果物の品質基準を設定し、品質を確保するための活動を管理します。テスト計画の策定に加え、レビューや監査などのプロセスを実施します。

2.9. 調達の対象群

 外部からの製品やサービスの調達を計画し、管理します。ベンダー選定プロセスや契約条件の交渉、納品物の受入れ検査が含まれます。

2.10. コミュニケーションの対象群

 プロジェクト内外の情報伝達や情報共有を計画し、実施します。進捗報告書の作成、会議の記録、ステークホルダとの情報交換が重要です。

flowchart TD
    A[統合の対象群] -->|調整| B[ステークホルダの対象群]
    A -->|調整| C[スコープの対象群]
    A -->|調整| D[資源の対象群]
    A -->|調整| E[時間の対象群]
    A -->|調整| F[コストの対象群]
    A -->|調整| G[リスクの対象群]
    A -->|調整| H[品質の対象群]
    A -->|調整| I[調達の対象群]
    A -->|調整| J[コミュニケーションの対象群]
    
    B <-->|要件・期待| C
    C <-->|影響| D
    D <-->|リソース配分| E
    E <-->|スケジュール| F
    F <-->|予算制約| G
    G <-->|品質リスク| H
    H <-->|品質要件| I
    I <-->|情報共有| J
    J <-->|ステークホルダ管理| B

3. 応用例

 システム開発プロジェクトでは、以下のように十の対象群を活用します:

  • 統合:プロジェクト計画書の作成と維持
  • ステークホルダ:顧客との定期的な進捗会議の実施
  • スコープ:要件定義書の作成と変更管理
  • 資源:開発チームの編成とスキル管理
  • 時間:WBSの作成とクリティカルパス分析
  • コスト:開発予算の見積もりと実績管理
  • リスク:リスク登録簿の作成と定期的な見直し
  • 品質:テスト計画の策定と品質メトリクスの測定
  • 調達:外部ベンダーの選定と契約管理
  • コミュニケーション:進捗報告書の作成と配布
対象群 具体的な成果物 管理ポイント
統合 プロジェクト計画書 全体の整合性確保
ステークホルダ ステークホルダ登録簿 関係者の期待管理
スコープ 要件定義書、WBS 変更管理の徹底
資源 リソース配分表 スキル最適化
時間 ガントチャート 進捗管理
コスト 予算計画書 EVM分析
リスク リスク登録簿 定期的な見直し
品質 品質管理計画書 品質基準の遵守
調達 調達管理台帳 契約管理
コミュニケーション コミュニケーション計画書 情報共有の徹底

4. 例題

例題1

問題:プロジェクトにおいて、予算超過のリスクが発生した場合、どの対象群が主に関係しますか?複数選んでください。

解答:

  1. コストの対象群:予算管理に直接関係
  2. リスクの対象群:リスク対応策の検討
  3. 統合の対象群:全体への影響評価
  4. ステークホルダの対象群:関係者への影響報告

例題2

問題:新たな要件追加の要求があった場合、最初に検討すべき対象群は何ですか?

解答:スコープの対象群
解説:要件追加はプロジェクトスコープの変更に該当するため、まずスコープ影響を評価する必要があります。

5. まとめ

 プロジェクトマネジメントの十の対象群は、プロジェクトを効果的に管理するための基本的なフレームワークです。以下が重要なポイントです:

  1. 各対象群は相互に関連しており、一体として管理する必要があります
  2. 統合の対象群が他の9つの対象群を束ねる役割を果たします
  3. プロジェクトの特性に応じて、各対象群の重要度は変化します
  4. すべての対象群について、計画・実行・監視・統制のサイクルを回す必要があります