<< 1.2. 基幹業務支援システム及び業務パッケージ

1. 概要

 行政システムは、国や地方自治体の行政業務を効率化し、住民サービスの向上を図るために構築された情報システムの総称です。現代の行政においては、デジタルガバメントの推進により、従来の紙ベースの手続きから電子化への移行が急速に進んでいます。

 これらのシステムは、住民の利便性向上と行政業務の効率化を両立させることを目的としており、電子申請や電子調達、住民基本台帳ネットワークシステムなど、様々な分野で活用されています。また、マイナンバー制度の導入により、個人情報の一元管理と各種手続きの簡素化が実現されています。

 近年では、ガバメントクラウドの活用やマイナポータルの拡充など、より高度なデジタル化が進められており、2025年までに行政手続きの原則100%デジタル化を目指す取り組みが推進されています。

認証

国民

事業者

マイナポータル

マイナンバーカード

e-Gov電子申請システム

e-Gov API

e-Gov申請データベース

LGWAN総合行政ネットワーク

LGWAN-ASP

GEPS政府共通プラットフォーム

GEPS クラウド基盤

内閣府システム

総務省システム

各府省庁システム

都道府県システム

市区町村システム

政府認証基盤GPKI

セキュリティ監視GSOC

2. 詳細説明

2.1 デジタルガバメントの基盤システム

 デジタルガバメントの実現には、複数の基盤システムが重要な役割を果たしています。まず、e-Govは政府の行政手続きオンライン化の中核を担うシステムで、各府省庁の申請・届出手続きを一元的に処理します。このシステムにより、住民や企業は24時間365日、いつでも行政手続きを行うことが可能になっています。

 電子自治体の推進においては、LGWAN(総合行政ネットワーク)が自治体間の安全な通信基盤として機能しています。LGWANは、都道府県・市区町村の庁内ネットワークを相互に接続し、行政情報の共有と住民サービスの向上を支援しています。この専用ネットワークにより、セキュリティを確保しながら効率的な行政運営が実現されています。

 ガバメントクラウドは、政府情報システムのクラウド化を推進する基盤サービスです。従来の各府省庁が個別に運用していたシステムを共通基盤に統合することで、運用効率の向上とコスト削減を実現しています。また、災害時における業務継続性の確保や、セキュリティレベルの統一化にも貢献しています。

転入届

国民健康保険

児童手当

印鑑登録

住民税

住民

ワンストップポータル

手続き種別選択

住民基本台帳システム

国保システム

福祉システム

印鑑登録システム

税務システム

住所変更処理

保険証発行

手当申請処理

印鑑証明書発行

課税情報更新

基幹データベース

データ統合・整合性チェック

処理結果通知

完了通知メール

マイナンバー連携システム

金融機関連携

他自治体連携

個人番号カード更新

口座振替設定

転出元データ取得

2.2 専門分野システム

 行政の各分野においては、業務特性に応じた専門システムが運用されています。電子調達システム(GEPS)は、政府調達の透明性向上と効率化を目的として導入されており、入札情報の公開から契約締結まで、一連の調達プロセスをオンライン化しています。これにより、事業者の参入機会の拡大と調達コストの削減が実現されています。

 EDINET(有価証券報告書等の電子開示システム)は、金融商品取引法に基づく企業の開示書類を電子的に提出・閲覧するシステムです。投資家への情報開示の迅速化と透明性の向上により、資本市場の健全な発展に寄与しています。

 出入国管理システムは、外国人の入国・在留管理を効率的に行うシステムで、バイオメトリクス認証技術を活用した本人確認機能や、在留資格の電子的な管理機能を提供しています。近年の外国人観光客や労働者の増加に対応し、迅速かつ正確な出入国管理を実現しています。

2.3 社会基盤システム

 社会全体の安全・安心を支える基盤システムとして、J-アラート(全国瞬時警報システム)があります。このシステムは、地震、津波、武力攻撃などの緊急情報を瞬時に住民に伝達する仕組みで、気象庁、内閣官房、消防庁などが連携して運用しています。携帯電話の緊急速報メールや防災行政無線を通じて、災害時の初動対応を支援しています。

衛星回線

衛星回線

地上回線

自動起動

自動起動

自動起動

自動起動

消防庁J-ALERT送信局

都道府県防災行政無線

市町村J-ALERT受信機

市町村防災行政無線

防災行政無線屋外スピーカー

緊急速報メール配信システム

ケーブルテレビ割込放送

コミュニティFM割込放送

住民への音声放送

携帯電話・スマートフォン緊急速報メール

各家庭のテレビ緊急放送

ラジオ緊急放送

住民

 地域気象観測システム(アメダス)は、全国約1,300地点で気象要素を自動観測するシステムです。観測データはリアルタイムで気象庁に送信され、天気予報や気象警報の発表、防災情報の提供に活用されています。IoT技術の活用により、観測精度の向上と保守性の改善が図られています。

 住民基本台帳ネットワークシステムは、住民の基本情報を全国的に管理・活用するシステムです。マイナンバー制度と連携し、各種行政サービスの基盤として機能しています。公的個人認証サービスと組み合わせることで、オンラインでの本人確認を可能にし、電子申請の普及を支えています。

3. マイナンバー制度とデジタル化

3.1 マイナンバーとマイナポータル

 マイナンバー制度は、住民一人ひとりに固有の番号を付与し、社会保障、税、災害対策の分野で効率的な情報管理を実現する仕組みです。この制度により、各種手続きの簡素化と重複給付の防止、公平・公正な社会保障制度の運営が可能になっています。

 マイナポータルは、マイナンバーカードを利用して個人がアクセスできるオンラインサービスです。自分の個人情報がいつ、どこで、なぜ提供されたかを確認できる情報提供等記録開示機能や、行政機関からのお知らせを受け取る機能を提供しています。また、子育てや介護などの手続きをワンストップで行えるサービスポータルとしても機能しています。

3.2 窓口業務のデジタル化

 自治体窓口のキャッシュレス化は、住民の利便性向上と窓口業務の効率化を目的として推進されています。手数料の支払いにクレジットカードや電子マネー、QRコード決済などを導入することで、現金取扱業務の軽減と会計処理の正確性向上を実現しています。

 ユニバーサルデザインの観点では、高齢者や障害者を含むすべての住民が等しく行政サービスを利用できるよう、システムの操作性向上や多言語対応、音声読み上げ機能などが整備されています。一方で、デジタルディバイドの解消に向けて、デジタル機器の操作支援や講習会の開催など、包括的な取り組みが進められています。

4. セキュリティと課題

4.1 セキュリティ対策

 行政システムにおけるセキュリティは、国民の個人情報保護と国家の安全保障に直結する重要な課題です。政府は「政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準」を策定し、各府省庁に対して統一的なセキュリティ対策の実施を求めています。

 多層防御の考え方に基づき、ネットワーク分離、アクセス制御、暗号化、監視・検知システムなど、複数のセキュリティ対策を組み合わせて実装しています。また、インシデント発生時の対応体制として、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)を中心とした政府統一的な対処体制が整備されています。

4.2 今後の課題と展望

 行政システムの発展に向けた主要な課題として、システム間の相互運用性の確保、レガシーシステムからの移行、人材育成などがあります。特に、各府省庁や自治体が個別に開発したシステムを統合し、データ連携を実現することは、行政効率化の鍵となります。

 AI・機械学習技術の活用により、行政業務の自動化と意思決定支援の高度化が期待されています。また、ブロックチェーン技術を活用した証明書発行システムや、IoTを活用したスマートシティの実現など、新技術の行政分野への適用が進んでいます。

5. 例題と解説

【例題】
行政システムに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア.e-Govは地方自治体専用の電子申請システムである。
イ.LGWANは自治体間を接続する専用ネットワークである。
ウ.J-アラートは気象情報のみを配信するシステムである。
エ.マイナポータルはマイナンバーカードなしでも利用できる。

【解説】
正解は「イ」です。

LGWAN(Local Government Wide Area Network:総合行政ネットワーク)は、都道府県・市区町村の庁内ネットワークを相互に接続する専用ネットワークです。セキュリティを確保しながら自治体間での情報共有と住民サービスの向上を支援しています。

選択肢アは誤りです。e-Govは政府(国)の行政手続きオンライン化の中核システムで、各府省庁の申請・届出手続きを処理します。

選択肢ウも不適切です。J-アラートは気象情報だけでなく、地震、津波、武力攻撃などの緊急情報を瞬時に住民に伝達するシステムです。

選択肢エも誤りです。マイナポータルはマイナンバーカードを利用してアクセスするオンラインサービスです。

6. まとめ

 行政システムは、デジタルガバメントの推進により急速な発展を遂げており、住民サービスの向上と行政業務の効率化を実現しています。マイナンバー制度を基盤とした各種システムの連携により、ワンストップサービスの拡充が進んでいます。今後は、AI・IoTなどの新技術を活用しながら、すべての住民が等しく恩恵を受けられるデジタル社会の実現に向けた取り組みが重要となります。

1.4. 公共情報システム >>

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