5.1.4. 環境側面

1. 概要

1.1. テーマの基本説明

 本記事では、応用情報処理技術者試験シラバスの「ファシリティマネジメント」の中でも特に「環境側面」に注目します。ファシリティマネジメントは、ITインフラ全体の管理や運用において、環境への配慮をどのように取り入れるかが重要なポイントとなります。近年、グリーンITの推進により、企業や組織はITシステムの省エネルギー化や環境負荷の低減に努めています。

1.2. 重要性

 環境側面への配慮は、地球環境保護や資源の有効活用を実現するために欠かせません。IT製品やデータセンターのエネルギー効率を高めることは、企業の持続可能性にも直結しており、データセンタ総合エネルギー効率指標(GEC,PUE,ITEE,ITEU ほか)などの指標が、その評価の一助となっています。

2. 詳細説明

2.1. 環境側面の定義と役割

 環境側面とは、ITインフラや施設が環境に与える影響全般を指します。具体的には、エネルギー消費、温室効果ガスの排出、廃棄物の発生などが含まれ、これらを定量化・評価し、改善策を講じることがファシリティマネジメントの一環となります。

2.2. グリーンITの概念

 グリーンITとは、情報技術を活用して環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現を目指す取り組みです。エネルギー効率の高いサーバやネットワーク機器の導入、仮想化技術の活用などが代表的な施策です。これにより、環境側面に配慮したIT利用が進められています。

2.3. データセンタ総合エネルギー効率指標の役割

 データセンターのエネルギー効率を評価するための指標として、PUE、ITEE、ITEU、GECなどが用いられています。

  • PUE(Power Usage Effectiveness)
    データセンター全体のエネルギー消費量とIT機器のエネルギー消費量との比率を示し、施設全体の効率性を評価する。
  • ITEE(IT Equipment Efficiency)やITEU(IT Equipment Utilization Efficiency)
    IT機器自体のエネルギー効率や稼働率を評価する。
  • GEC
    データセンター全体のエネルギー効率を総合的に評価するための指標群の一部として位置付けられる場合がある。

  以下の図1は、各指標の関係性と全体評価への寄与を示した概念図です。

flowchart TD
    %% メインノード
    A[データセンター全体の
エネルギー効率] %% 効率指標 B[PUE
Power Usage Effectiveness] C[ITEE
IT Equipment Energy Efficiency] D[ITEU
IT Equipment Utilization] E[GEC
Green Energy Coefficient] %% IT機器エネルギー消費 F[IT機器エネルギー消費] %% 関連性の定義 A --> B A --> C A --> D A --> E B --> F C --> F D --> F %% スタイリング classDef default fill:#f9f9f9,stroke:#333,stroke-width:2px; classDef root fill:#e1f3d8,stroke:#333,stroke-width:2px; classDef metrics fill:#f0f7ff,stroke:#333,stroke-width:2px; classDef consumption fill:#fff5f5,stroke:#333,stroke-width:2px; %% クラスの適用 class A root; class B,C,D,E metrics; class F consumption;

図1:データセンタ総合エネルギー効率指標の概念図

  また、表1は主要エネルギー効率指標の定義、算出方法、メリット・デメリットを一覧で比較しています。

指標 定義 算出方法 メリット・デメリット
PUE データセンター全体のエネルギー効率 全エネルギー消費量 ÷ IT機器エネルギー消費量 全体効率の把握が容易だが、細部の効率は反映されにくい
ITEE IT機器のエネルギー効率 IT機器の出力エネルギー ÷ 消費エネルギー 機器単体の効率が評価できるが、全体の環境負荷は把握しにくい
ITEU IT機器の利用効率 実際の利用率などを基に算出 稼働率の最適化に寄与するが、評価方法にばらつきがある
GEC 総合的なエネルギー効率評価指標 各種指標を組み合わせた算出方法 包括的な評価が可能だが、算出が複雑

表1:主要エネルギー効率指標の比較表

3. 応用例

3.1. 企業における実践例

 多くの大手企業では、データセンターのエネルギー効率改善のために、PUEの低減に取り組んでいます。例えば、最新の冷却技術や再生可能エネルギーの導入により、従来の設備に比べ大幅なエネルギー削減を実現している事例があります。

【具体例】

  • 大手通信企業が、従来の空冷方式から液冷方式へ移行し、PUEを20%低減。
  • クラウドサービスプロバイダーが、サーバ仮想化技術の導入でITEEを向上させ、運用コストと環境負荷の低減に成功。

3.2. 公共機関での取り組み

 地方自治体や国の機関では、グリーンIT推進の一環として、公共施設のデジタル化とともに、環境負荷の低減に努めています。データセンタ総合エネルギー効率指標を用いた評価により、改善策の優先順位を明確にし、環境保護や資源の有効活用を図る取り組みが進められています。

【具体例】

  • ある自治体では、公共のデータセンターにおいてエネルギー管理システムを導入し、リアルタイムでエネルギー消費をモニタリング。最新のデータに基づく改善策で、年間のエネルギー消費量を大幅に削減。

 なお、業界や試験範囲は随時更新されるため、最新情報の確認も重要です。

4. 例題

 例題1:環境側面に関連する指標について

【問題】
 企業がデータセンターのエネルギー効率を評価するために用いる代表的な指標として、PUEの他にどのような指標があるか、またその意義を説明せよ。

 PUE以外には、ITEEやITEU、そして場合によりGECなどが挙げられる。これらの指標は、IT機器自体のエネルギー効率や稼働率を評価するものであり、施設全体のエネルギー管理をより詳細に把握することが可能となる。

例題2:グリーンITの取り組みと環境側面の関連性

【問題】
  グリーンITの推進が環境側面にどのような影響を与えるか、具体例を挙げて説明せよ。

 グリーンITの取り組みとして、サーバの仮想化、最新の冷却技術の導入、再生可能エネルギーの利用などが挙げられる。これにより、エネルギー消費が削減され、温室効果ガスの排出が低減される。また、データセンターにおいてPUEの低減を実現することで、環境側面への負荷を大幅に減らすことができる。

5. まとめ

 本記事では、ファシリティマネジメントの中の「環境側面」に焦点を当て、グリーンITの概念やデータセンタ総合エネルギー効率指標(GEC,PUE,ITEE,ITEU ほか)を通じた環境負荷の評価・改善手法について解説しました。具体的な企業および公共機関での事例も交え、最新の取り組み状況に基づく知識を提供しています。
 ITインフラの効率化と環境側面の改善は、持続可能な社会実現に向けた重要なテーマです。受験者の皆さんは、これらの知識を試験対策のみならず、実際の業務においても活用し、実践的な技術者としての成長を目指してください。また、業界動向の最新情報に注目し、継続的な学習を心がけることが重要です。