目的と用語例
ステークホルダの対象群が含むプロセスに関連するツールと技法などを理解する。
1. 概要
プロジェクトのステークホルダ管理において、適切なツールと技法を使用することは、プロジェクトの成功に不可欠です。ステークホルダとは、プロジェクトに影響を与える、または影響を受ける個人やグループを指し、その特定と分析、そして適切な対応が重要となります。本記事では、主要なツールと技法について具体的に解説し、実務や試験対策に役立つ情報を提供します。
2. 詳細説明
2.1. ステークホルダ分析の基本ツール
ステークホルダ分析では、以下の主要なツールと技法が活用されます:
2.1.1. ステークホルダ登録簿
各ステークホルダの基本情報、役割、影響力、期待事項などを文書化するツールです。これにより、体系的な管理が可能となります。
ID | 名称 | 役割 | 影響力 | 期待事項 |
---|---|---|---|---|
SH001 | 経営企画部長 | 予算承認者 | 高 | コスト削減 |
SH002 | システム部長 | 技術管理者 | 中 | 品質確保 |
SH003 | エンドユーザー | 利用部門 | 低 | 使いやすさ |
2.1.2. パワー/インタレストグリッド
ステークホルダの権力(パワー)と関心(インタレスト)の2軸でマッピングし、適切な対応戦略を検討するための分析ツールです。以下の4象限に分類されます:
- 高パワー/高インタレスト: 完全に満足させる。
- 高パワー/低インタレスト: 最小限の努力で満足させる。
- 低パワー/高インタレスト: 情報提供を継続する。
- 低パワー/低インタレスト: 監視を行う。
図2: パワー/インタレストグリッド
2.1.3. 影響度/態度マトリクス
ステークホルダの影響力と、プロジェクトに対する態度(支持/反対)を評価し、可視化するツールです。態度に応じた対策が立案しやすくなります。
図3: 影響度/態度マトリクスの例
3. 応用例
3.1. IT系プロジェクトでの活用
システム開発プロジェクトにおいて、以下のように活用されます:
- エンドユーザーの要求分析: グリッドを活用し、期待事項を可視化。
- 経営層との合意形成: 定例会議や進捗報告を計画し、影響力の高い層を満足させる。
- 開発チームとの協力体制構築: タスクの分担と透明性を高める。
3.2. 建設プロジェクトでの活用
建設プロジェクトでは、地域住民や行政機関など、多様なステークホルダとの調整が必要となります。
- 地域住民との調整: 定期的な説明会やフィードバックセッションを実施。
- 行政機関との調整: 必要な承認手続きや規制対応を計画的に管理。
4. 例題
例題1
問題:
あるシステム開発プロジェクトにおいて、以下のステークホルダが存在します。
- 経営層(予算決定権あり、関心は中程度、コスト削減に注力)
- エンドユーザー部門(予算決定権なし、関心は高い、UI改善を重視)
- 外部ベンダー(技術提供者、関心は中程度、納期遵守が最優先)
パワー/インタレストグリッドを用いて、適切な対応戦略を検討してください。
解答例:
- 経営層:高パワー/中インタレスト → 定例会議で満足させる。
- エンドユーザー部門:低パワー/高インタレスト → 情報提供を継続する。
- 外部ベンダー:中パワー/中インタレスト → 監視し、必要に応じて対応する。
図4: 解答例のパワー/インタレストグリッド
- 経営層:高パワー/中インタレスト → 定例会議で満足させる。
- エンドユーザー部門:低パワー/高インタレスト → 情報提供を継続する。
- 外部ベンダー:中パワー/中インタレスト → 監視し、必要に応じて対応する。
例題2
問題:
プロジェクトの主要ステークホルダの分析において、ステークホルダ登録簿に含めるべき項目を最低3つ挙げてください。
- 連絡先情報(所属、役職、連絡方法)
- プロジェクトにおける役割と影響力レベル
- 主要な関心事項と期待事項
5. まとめ
プロジェクトのステークホルダ管理において、適切なツールと技法を活用することは、以下の点で重要です:
- ステークホルダの特定と分類が可能
- 影響力と関心度の評価が可能
- 適切な対応戦略の立案が可能
- 継続的なモニタリングと調整が可能
これらのツールと技法を効果的に活用することで、プロジェクトの成功確率を高めることができます。