3.1. ステークホルダの対象群が含むプロセス

目的とプロセス

ステークホルダの対象群には,プロジェクトスポンサー,顧客及びその他のステークホルダを特定し,マネジメントするために必要なプロセスを含む。それらのプロセスの目的,役割,機能,プロセス間の関連などを理解する。

プロセス

ステークホルダの特定,ステークホルダのマネジメント

1. 概要

 プロジェクトのステークホルダーとは、プロジェクトに影響を与える、または影響を受ける個人やグループを指します。プロジェクトの成功には、これらのステークホルダーを適切に特定し、管理することが不可欠です。

1.1. ステークホルダー管理プロセスの重要性

 ステークホルダー管理プロセスは、プロジェクトの要求事項や期待を明確にし、利害関係者間の調整を行うために重要な役割を果たします。適切な管理により、プロジェクトのリスクを低減し、成功確率を高めることができます。

2. 詳細説明

2.1. ステークホルダーの特定プロセス

 ステークホルダーの特定プロセスでは、プロジェクトに影響を与える全ての関係者を洗い出します。このプロセスには以下の手順が含まれます:

  • プロジェクト憲章の分析:プロジェクトの範囲や目的を確認し、主要なステークホルダーを明確化する。
  • 組織図の確認:組織内外の利害関係者を把握する。
  • 利害関係者登録簿の作成:関係者の名前、役割、期待事項、影響度などを記録。
  • ステークホルダーの分類と優先順位付け:影響力や関心度に基づいて分類する。
図1:影響力/関心度マトリックス
満足させる
・要求に応え、満足度を維持
・重要な意思決定時に情報提供
例:上級経営層
重点管理
・密接に関与
・積極的なengagement
・綿密なコミュニケーション
例:プロジェクトスポンサー、主要顧客
監視する
・定期的なモニタリング
・状況の変化に注意
情報提供
・適切な情報提供を継続
・定期的な状況報告
例:エンドユーザー
影響力 →
関心度 →

2.2. ステークホルダーの管理プロセス

 ステークホルダー管理プロセスは、プロジェクトを円滑に進めるための戦略的活動を含みます:

  • エンゲージメント計画の策定:各ステークホルダーとの関わり方を計画。
  • コミュニケーション戦略の立案:適切な情報を、適切な頻度で提供する方法を設計。
  • 期待事項の管理:ステークホルダーの期待が現実的であるよう調整。
  • 関係性の維持と調整:信頼を築き、協力関係を強化する。

3. 応用例

3.1. 情報システム開発プロジェクトでの適用

 システム開発プロジェクトにおいて、以下のステークホルダーが特定され、管理されます:

  • プロジェクトスポンサー(経営層)
  • エンドユーザー部門
  • システム運用部門
  • 開発ベンダー
  • 監査部門

3.2. ステークホルダーマネジメントの実践例

 具体的なマネジメント活動:

  • 定期的な進捗報告会の開催
  • 要件定義書の承認プロセスの確立
  • 課題管理表による調整
  • 変更要求への対応プロセスの確立

4. 例題

例題1

問題
プロジェクトのステークホルダー特定プロセスにおいて、最初に実施すべき作業はどれか。

a) ステークホルダー分析
b) プロジェクト憲章の確認
c) コミュニケーション計画の作成
d) リスク分析の実施

解答:b) プロジェクト憲章の確認

解説
プロジェクト憲章には、プロジェクトの目的、範囲、主要なステークホルダーが記載されているため、最初に確認すべき文書となります。

例題2

問題
ステークホルダーの管理プロセスにおいて、誤っているものはどれか。

a) ステークホルダーの影響力と関心度をマッピングする
b) すべてのステークホルダーに同じレベルの情報を提供する
c) ステークホルダーの期待事項を文書化する
d) 定期的にステークホルダーの分析を更新する

解答:b) すべてのステークホルダーに同じレベルの情報を提供する

解説
ステークホルダーの役割や関心度に応じて、適切なレベルと頻度で情報を提供する必要があります。同じ情報を全員に提供すると、過剰な情報や不足が発生し、誤解や混乱を招く可能性があります。

5. まとめ

 ステークホルダー管理プロセスは、以下の2つの主要プロセスで構成されます:

  • ステークホルダーの特定:プロジェクトに関係する利害関係者を洗い出し、分類する。
  • ステークホルダーの管理:特定されたステークホルダーとの関係を適切に管理し、プロジェクトの成功に導く。

 これらのプロセスを適切に実施することで、プロジェクトのリスクを低減し、円滑な遂行と目標達成が可能となります。一方で、ステークホルダー管理が不十分だと、遅延や予算オーバー、利害関係者からの信頼喪失を招くリスクがあります。