目的と用語例
プロジェクトマネジメントの五つのプロセス群の目的,役割,機能を理解する。
1. 概要
プロジェクトマネジメントにおいて、プロジェクトの開始から終了までの一連の活動は、5つのプロセス群に分類されます。これらのプロセス群は、プロジェクトの各段階で必要な活動を体系的に整理し、効率的なプロジェクト運営を可能にする重要な枠組みです。
1.1 プロセス群の基本構造
5つのプロセス群は、「立ち上げのプロセス群」「計画のプロセス群」「実行のプロセス群」「管理のプロセス群」「終結のプロセス群」で構成されており、これらが相互に関連しながらプロジェクトを推進します。
以下の図は、各プロセス群の全体像と流れを示しています(図1:プロジェクトマネジメントのプロセス群)。
graph LR A[立ち上げの
プロセス群] --> B[計画の
プロセス群] B --> C[実行の
プロセス群] C --> D[管理の
プロセス群] D --> E[終結の
プロセス群] D --> B D --> C style A fill:#e1f5fe style B fill:#e3f2fd style C fill:#e8eaf6 style D fill:#f3e5f5 style E fill:#fce4ec
図1:プロジェクトマネジメントのプロセス群(フローチャート)
2. 詳細説明
2.1 立ち上げのプロセス群
プロジェクトの開始を正式に認可し、プロジェクトの基本的な方向性を定めるプロセス群です。
- プロジェクト憲章の作成(例:目的、範囲、主要成果物の定義)
- ステークホルダーの特定(例:関係者リストの作成)
- 初期スコープの定義(例:大まかな作業内容の特定)
2.2 計画のプロセス群
プロジェクトの目標達成に向けた詳細な計画を策定するプロセス群です。
- プロジェクトマネジメント計画書の作成(例:計画全体を統合する文書)
- スコープ、スケジュール、コストのベースライン設定(例:目標基準の明確化)
- リスク管理計画の策定(例:リスク特定、評価、対応計画)
「表1:計画のプロセス群の具体的な活動例」をご参照ください。
計画分野 | 主な活動 | 成果物例 |
---|---|---|
スコープ計画 |
・要求事項の収集 ・WBS作成 ・成果物の定義 |
・スコープ管理計画書 ・WBS辞書 |
スケジュール計画 |
・アクティビティの定義 ・所要期間の見積り ・スケジュール作成 |
・プロジェクトスケジュール ・マイルストーン一覧 |
コスト計画 |
・コストの見積り ・予算の設定 ・資金計画の策定 |
・コスト見積書 ・予算計画書 |
表1:計画のプロセス群の活動例
2.3 実行のプロセス群
計画に基づいてプロジェクト作業を実施するプロセス群です。
- チームの編成と開発作業の実施(例:プロジェクトメンバーの役割割り当て)
- 品質管理活動の実行(例:テスト計画の実施)
- コミュニケーション管理の実施(例:定例会議や進捗報告)
「図2:実行のプロセス群における作業の流れ」で具体例を図示します。
flowchart TD A[チーム編成] --> B[キックオフ] B --> C{作業開始} C --> D[開発作業] C --> E[品質管理] C --> F[コミュニケーション管理] D --> G[進捗報告] E --> G F --> G G --> H{課題あり?} H -->|Yes| I[課題解決] I --> C H -->|No| J[次工程へ] style A fill:#e3f2fd style B fill:#e3f2fd style C fill:#e8eaf6 style D fill:#e8eaf6 style E fill:#e8eaf6 style F fill:#e8eaf6 style G fill:#f3e5f5 style H fill:#f3e5f5 style I fill:#f3e5f5 style J fill:#fce4ec
図2:実行のプロセス群の作業フロー
2.4 管理のプロセス群
プロジェクトの進捗を監視・制御するプロセス群です。
- パフォーマンスの測定と分析(例:進捗の実績と計画値の比較)
- 変更管理の実施(例:変更要求の評価と承認プロセス)
- 是正処置の実施(例:遅延対策としてのリソース再分配)
2.5 終結のプロセス群
プロジェクトを正式に完了するプロセス群です。
- 成果物の引き渡し(例:クライアントへの納品)
- 最終報告書の作成(例:プロジェクトの総括文書)
- 教訓の収集とドキュメント化(例:成功と失敗の分析)
3. 応用例
3.1 システム開発プロジェクトでの適用
システム開発プロジェクトでは、以下のように各プロセス群が適用されます:
- 立ち上げ:プロジェクトの目的設定、開発規模の概算
- 計画:開発スケジュール作成、必要リソースの見積り
- 実行:プログラミング、テスト実施
- 管理:進捗管理、品質管理
- 終結:システムの本番環境への移行、運用引継ぎ
4. 例題
例題1
問題:以下のプロジェクト活動のうち、「実行のプロセス群」に分類されるものはどれか。
a) プロジェクト憲章の作成
b) 品質管理活動の実施
c) 最終報告書の作成
d) WBSの作成
解答:b) 品質管理活動の実施
解説:
品質管理活動の実施は、計画に基づいて実際の作業を行う「実行のプロセス群」に該当します。他の選択肢は、それぞれ立ち上げ(a)、終結(c)、計画(d)のプロセス群に属します。
例題2
問題:「管理のプロセス群」の主な目的として、最も適切なものはどれか。
a) プロジェクトの開始を正式に認可する
b) プロジェクトの詳細計画を作成する
c) プロジェクトの進捗状況を監視し、必要な是正処置を行う
d) プロジェクトを正式に完了する
解答:c) プロジェクトの進捗状況を監視し、必要な是正処置を行う
解説:
管理のプロセス群は、プロジェクトの進捗を監視・制御し、必要に応じて是正処置を実施することが主な目的です。
5. まとめ
プロジェクトマネジメントの5つのプロセス群は、プロジェクトのライフサイクル全体を通じて、以下の役割を果たします:
- 立ち上げのプロセス群:プロジェクトの開始を正式化
- 計画のプロセス群:詳細な実行計画の策定
- 実行のプロセス群:計画に基づく作業の実施
- 管理のプロセス群:進捗の監視と是正処置
- 終結のプロセス群:プロジェクトの正式終了
これらのプロセス群は相互に関連し合いながら、プロジェクトの成功に向けて機能します。各プロセス群の目的と役割を正しく理解し、適切に実践することが、効果的なプロジェクトマネジメントの基本となります。