1.1.1. プロジェクトとは何か,プロジェクトマネジメントとは何か

目的と用語例

プロジェクトは,プロジェクトの目標を達成するために遂行する,開始日と終了日とをもち,調整し,かつ,管理する活動で構成するプロセスの独自性のある集合であることを理解する。また,プロジェクトマネジメントとは,方法,ツール,技法及びコンピテンシーを,あるプロジェクトに適用することであり,複数のプロセスを通じて遂行するものであることを理解する。

用語例

プロジェクト,プロジェクトマネジメント,プロジェクトの環境,プロジェクトポートフォリオマネジメント,プログラム,プログラムマネジメント,プロジェクトガバナンス,プロジェクトライフサイクル,プロジェクトの制約,JIS Q21500,PMBOK(Project Management Body of Knowledge:プロジェクトマネジメント知識体系)

1. 概要

 プロジェクトとプロジェクトマネジメントは、現代のビジネス環境において不可欠な概念です。特に情報システムの開発や運用において、これらの理解は必須となっています。JIS Q21500やPMBOK(Project Management Body of Knowledge:プロジェクトマネジメント知識体系)といった国際標準に基づき、その本質を理解することは、情報処理技術者として重要なスキルの一つです。

1.1 重要性

 プロジェクトは、組織の戦略目標を達成するための重要な手段です。プロジェクトマネジメントの適切な実施は、限られた資源で最大の効果を得るために不可欠です。

2. 詳細説明

2.1 プロジェクトの定義

 プロジェクトとは、特定の目標を達成するために実施される、一時的な活動です。その主な特徴は以下の通りです:

  • 明確な開始日と終了日がある
  • 独自性のある成果物やサービスを作り出す
  • プロジェクトの制約(時間、コスト、品質など)の中で遂行される

図1:プロジェクトの3大制約(時間・コスト・品質)の関係図

2.2 プロジェクトマネジメントの定義

 プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの目標達成のために、以下の要素を適用する体系的なアプローチです:

  • 方法(手順やプロセス)
  • ツール(テンプレートやソフトウェア)
  • 技法(具体的な実施方法)
  • コンピテンシー(知識、スキル、態度)
flowchart TB
    PM[プロジェクト
マネジメント] M[方法
手順やプロセス] T[ツール
テンプレートや
ソフトウェア] S[技法
具体的な実施方法] C[コンピテンシー
知識・スキル・態度] PM --> M PM --> T PM --> S PM --> C style PM fill:#3b82f6,stroke:#2563eb,stroke-width:2px style M fill:#93c5fd,stroke:#2563eb,stroke-width:2px style T fill:#93c5fd,stroke:#2563eb,stroke-width:2px style S fill:#93c5fd,stroke:#2563eb,stroke-width:2px style C fill:#93c5fd,stroke:#2563eb,stroke-width:2px

図2:プロジェクトマネジメントの要素(方法、ツール、技法、コンピテンシー)

2.3 関連する重要概念

 プロジェクトマネジメントに関連する概念は以下の通りです:

  • プロジェクトの環境:プロジェクトを取り巻く内部(組織文化、リソース、チームダイナミクス)と外部(法規制、市場の競争、技術革新)の状況。
  • プログラム:関連するプロジェクトの集合体。
  • プログラムマネジメント:複数の関連プロジェクトの統合的な管理。
  • プロジェクトポートフォリオマネジメント:組織全体のプロジェクト群の戦略的管理。
  • プロジェクトガバナンス:プロジェクトの意思決定と監督の仕組み。
  • プロジェクトライフサイクル:開始から終了までの一連のフェーズ(例:イニシエーション、計画、実行、監視・コントロール、終了)。
flowchart LR
    I[イニシエーション] --> P[計画]
    P --> E[実行]
    E --> M[監視・
コントロール] M --> C[終了] M -.-> E style I fill:#bfdbfe,stroke:#2563eb,stroke-width:2px style P fill:#93c5fd,stroke:#2563eb,stroke-width:2px style E fill:#60a5fa,stroke:#2563eb,stroke-width:2px style M fill:#3b82f6,stroke:#2563eb,stroke-width:2px style C fill:#1d4ed8,stroke:#2563eb,stroke-width:2px,color:#fff

図3:プロジェクトライフサイクル(フェーズの流れ)


3. 応用例

3.1 情報システム開発での適用

 情報システム開発では、以下の形でプロジェクトマネジメントが適用されます:

  • 要件定義から運用開始までの工程管理
  • チーム編成とリソース配分
  • スケジュール・コスト・品質の管理
  • リスク管理とステークホルダー管理

3.2 業界別の特徴

  • 製造業:製品開発プロジェクト
  • 建設業:建設プロジェクト
  • IT業界:システム開発・導入プロジェクト
  • サービス業:新規サービス立ち上げプロジェクト
業界 主なプロジェクト 特徴
製造業 製品開発プロジェクト ・品質管理が重視される
・試作と評価の繰り返し
・量産化を見据えた計画が必要
建設業 建設プロジェクト ・安全管理が最重要
・天候の影響を受けやすい
・多数の協力会社との調整が必要
IT業界 システム開発・導入プロジェクト ・要件の変更が頻繁
・技術の進歩が早い
・保守性を考慮した設計が重要
サービス業 新規サービス立ち上げプロジェクト ・市場ニーズの把握が重要
・人材育成が必須
・運用体制の確立が必要

表1:業界別のプロジェクトの特徴比較

4. 例題

例題1

問題:以下の記述のうち、プロジェクトの特徴として適切なものはどれか。

  1. 反復的で継続的な業務である
  2. 明確な開始日と終了日を持つ
  3. 常に同じ成果物を作り出す
  4. 制約条件がない活動である

解答:2

解説:プロジェクトは、一時的な性質を持ち、明確な開始日と終了日があることが特徴です。

例題2

問題:プロジェクトマネジメントに含まれない要素はどれか。

  1. 方法
  2. ツール
  3. 固定的な手順
  4. コンピテンシー

解答:3

解説:プロジェクトマネジメントは、状況に応じて柔軟に対応する必要があり、固定的な手順ではなく、適切な方法、ツール、技法、コンピテンシーを選択して適用します。

5. まとめ

 プロジェクトは、特定の目標達成のための一時的な取り組みであり、プロジェクトマネジメントは、その目標を効果的に達成するための体系的なアプローチです。以下の点を理解し、実務での適用を目指しましょう:

  • プロジェクトの特性(一時性、独自性、制約)の理解
  • プロジェクトマネジメントの要素(方法、ツール、技法、コンピテンシー)の活用
  • プロジェクトの環境やライフサイクルの考慮
  • プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントとの関係性の理解
  • プロジェクトガバナンスの重要性の認識

 これらの概念は、JIS Q21500やPMBOKなどの国際標準で体系化されており、実務での適用が期待されています。