1. 概要
CMMI(Capability Maturity Model Integration)は、1990年代に米国のSEI(Software Engineering Institute)によって開発されたモデルで、ソフトウェア開発および保守プロセスを評価・改善するためのフレームワークです。CMMIの導入は、組織の開発プロセスを5段階の成熟度で評価し、持続的なプロセス改善を促します。
本記事では、CMMIの各レベルの特徴を理解し、組織の開発能力を向上させるための具体的な施策を紹介します。
2. CMMIの5段階レベルと特徴
CMMIは、組織のプロセス成熟度を以下の5段階で定義します。各レベルの概要を図1で示します。
2.1. レベル1:初期(Initial)
プロセスが未定義で、成功が個人のスキルや経験に依存します。開発の再現性が低く、計画外の対応が多い段階です。
2.2. レベル2:管理された(Managed)
プロジェクト単位で計画と管理が行われるようになります。要件管理や進捗管理が導入され、プロジェクトの基本的な予測が可能です。
2.3. レベル3:定義された(Defined)
組織全体で標準化されたプロセスが確立され、一貫した開発が可能です。プロジェクト間での知識共有や統合的なリスク管理が行われます。
2.4. レベル4:定量的に管理された(Quantitatively Managed)
プロセスが定量的な指標で管理され、予測可能な開発が可能です。プロジェクトの納期遵守率や欠陥密度などが重要な指標として用いられます。
2.5. レベル5:最適化している(Optimizing)
組織全体で継続的な改善活動が行われ、革新が日常的に実施されます。根本原因分析による問題解決や新技術の積極的な導入が特徴です。
図1:CMMIの5段階レベル(初期から最適化までの流れを示す階段チャート)
レベル | 特徴 | 主な達成要件 |
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レベル1: 初期 |
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レベル2: 管理された |
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レベル3: 定義された |
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レベル4: 定量的に管理された |
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レベル5: 最適化している |
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表1:各レベルの特徴と主な達成要件
3. CMMI適用のメリットと課題
CMMIはプロセス改善の強力なツールですが、導入にはいくつかの課題もあります。
メリット
- プロジェクトの成功率向上
- 品質の向上と納期の遵守率向上
- 知識共有の促進による効率化
課題
- 導入と運用に高いコストと時間が必要
- プロセスに依存しすぎると柔軟性を失うリスク
- 全社的な理解と協力が求められる
4. 日本国内での適用例
4.1. ソフトウェア開発企業Aの場合
企業Aは、CMMIを導入することで以下の改善を達成しました:
- プロジェクト管理の標準化(レベル2)
- 知識共有の促進とプロジェクト間の一貫性確保(レベル3)
- 開発品質と予測精度の向上(レベル4)
4.2. 政府機関Bの取り組み
政府機関Bは、大規模公共システムの開発にCMMIを適用し、コスト予測の精度とサービスの質を向上させました。
5. 例題
例題1
ある組織がCMMIレベル2からレベル3に移行を目指しています。移行に必要な主な取り組みを3つ挙げてください。
回答例
- 標準化されたプロセスの確立と文書化
- プロジェクト間の知識共有の仕組み構築
- 統合的なプロジェクト管理の導入
例題2
CMMIレベル4「定量的に管理された」の特徴と重要な指標を2つ挙げてください。
回答例
- 特徴:プロセスの性能が定量的に測定され、予測可能な状態で管理される
- 指標例:納期遵守率、欠陥密度
例題3
CMMIレベル5「最適化している」組織とレベル3「定義された」組織の主な違いを説明してください。
回答例
- レベル3:標準プロセスに従うことに重点を置く
- レベル5:継続的なプロセス改善を文化として根付かせ、革新を推進する
6. まとめ
CMMIは、開発および保守プロセスを評価・改善するための有力なモデルです。組織のプロセス成熟度を段階的に高めることで、品質の向上、納期遵守、継続的な改善が可能になります。しかし、導入にはコストがかかり、全社的な協力が求められるため、適切な計画と管理が不可欠です。