1. 概要
ソフトウェアライフサイクルプロセス(Software Life Cycle Process: SLCP)は、ソフトウェア開発の全過程を体系化したモデルです。SLCPは、ソフトウェアの企画、開発、運用、保守、廃棄までの流れを包括し、効率的で高品質な開発のための指針を提供します。
日本においては、SLCP-JCF(共通フレーム)が標準として採用されています。このフレームは、関係者間で共通言語として機能し、各段階の責任範囲や進行管理を明確化します。SLCPの目的は、プロジェクト間で一貫したプロセスを確立し、品質、効率、標準化を実現することです。
図1:SLCP全体像
(https://www.ipa.go.jp/publish/secbooks20130304.htmlより引用)
2. SLCPの構成と詳細
2.1. SLCPの構成要素
SLCPは、以下の3つの構成要素から成り立ちます:
- プロセス:
ソフトウェア開発の各段階を表す大きな単位(例:企画プロセス、運用プロセス)。 - アクティビティ:
各プロセス内で行われる具体的な活動(例:設計やコードレビュー)。 - タスク:
アクティビティをさらに細分化した作業単位(例:単体テストの実施)。
図2:プロセス・アクティビティ・タスクの階層構造
2.2. SLCP-JCF(共通フレーム)
SLCP-JCFは、JIS X 0160(ISO/IEC 12207)とJIS X 0170(ISO/IEC 15288)に基づき、日本で標準化されたソフトウェアライフサイクルの枠組みです。これにより、ソフトウェア開発の各フェーズにおいて一貫性のある管理が可能になります。
例えば、要件定義プロセスでは顧客との合意を基に仕様書の作成が求められ、関係者全員が同じ理解を共有できるようになります。これにより、後工程での手戻りを防止します。
2.3. SLCPの主要プロセス
SLCPは、以下の主要なプロセスから構成されています:
- 企画プロセス:
市場調査やビジネスニーズの分析を行い、開発の目的と目標を策定する。 - 要件定義プロセス:
顧客のニーズを明確にし、機能や非機能要件を文書化する。 - 開発プロセス:
設計、実装、テストを通して、システムを具体的な形に仕上げる。 - 運用プロセス:
開発したシステムをユーザーが利用できるよう維持・管理する。 - 保守プロセス:
システムに発生する問題や変更要求に対応し、継続的に改善する。
図3:SLCPの主要プロセスと対応する活動
(https://www.ipa.go.jp/publish/secbooks20130304.htmlより引用)
3. SLCPの応用例
3.1. プロジェクト管理での活用
SLCPは、プロジェクトの進捗管理や成果物の確認に役立ちます。たとえば、要件定義プロセスで機能仕様書が確実に作成されているかどうかを確認することで、次の開発フェーズへのスムーズな移行を保証します。JIRAやRedmineなどのツールは、SLCPのプロセス管理をサポートします。
3.2. 品質管理への適用
SLCPを基に、各プロセスごとに品質基準を設定することで、プロジェクト全体の品質を維持できます。開発プロセスでは、コードレビューやユニットテストがアクティビティとして組み込まれ、品質確保が実現します。
3.3. 標準化と効率化
組織全体でSLCP-JCFを採用することで、プロセスの標準化が可能になり、プロジェクト間の知識共有や効率化が促進されます。これにより、開発期間の短縮やコスト削減などの効果が期待できます。
4. 例題
例題1
問題:SLCPの構成要素を大きい順に並べてください。
回答例:
- プロセス
- アクティビティ
- タスク
例題2
問題:SLCP-JCFの基となっている日本工業規格(JIS)の規格番号を2つ挙げてください。
回答例:
- JIS X 0160
- JIS X 0170
例題3
問題:SLCPの主要なプロセスのうち、ソフトウェアの実装とテストが主に行われるプロセスはどれですか?
回答例:
開発プロセス
5. まとめ
ソフトウェアライフサイクルプロセス(SLCP)は、企画から廃棄までの全過程を体系化したモデルです。日本ではSLCP-JCF(共通フレーム)が標準として導入され、JIS X 0160やJIS X 0170に基づいています。SLCPの理解は、効率的なプロジェクト管理、品質管理、標準化に不可欠であり、ソフトウェア開発を成功に導く基盤となります。