5.4.3. 利用者支援

1. 概要

 システム開発において、新しいシステムやソフトウェアを組織に導入する際、利用者支援は非常に重要な役割を担います。利用者支援とは、システム導入時にエンドユーザーが新システムを効果的に使用できるよう支援する一連の活動を指します。これには、教育訓練や文書作成、サポート体制の整備が含まれます。目的は、「システム及び/又はソフトウェアの導入に当たり、利用者を支援する作業を理解する」ことです。

 適切な利用者支援がない場合、システムの導入効果が十分に発揮されず、投資効果が減少するリスクがあります。効果的な利用者支援は、システムの円滑な運用と導入目的の達成に不可欠です。

2. 詳細説明

2.1. 利用者支援の主要要素

2.1.1. 教育訓練資料

 教育訓練資料は、新しいシステムの機能や使用方法を利用者に説明するための文書です。以下のような種類があります:

  • ユーザーマニュアル
  • クイックスタートガイド
  • よくある質問(FAQ)集
  • チュートリアル資料
資料の種類 説明
ユーザーマニュアル システムの全体的な使用方法や操作手順を詳細に説明する文書 フルシステムガイド、詳細な手順説明
クイックスタートガイド システムの基本機能や主要な操作方法を簡潔に説明するガイド 新規利用者向けの導入ガイド
よくある質問(FAQ)集 頻繁に寄せられる質問とその回答をまとめた資料 トラブルシューティングや使い方に関するQ&A
チュートリアル資料 利用者がステップバイステップで学べる実践的なトレーニング資料 操作手順付きの実習資料、ビデオチュートリアル

表1:教育訓練資料の種類

2.1.2. 教育訓練システム

 教育訓練システムは、利用者が新システムを学習するための環境を提供します。主な形態としては、以下のものがあります:

  • e-Learning:オンラインでの自己学習システム(例:MoodleやCanvas)
  • Web Based Training(WBT):ウェブブラウザ経由でアクセス可能なトレーニングシステム

 これにより、利用者は自身のペースで学習でき、進捗状況を管理することも可能です。

2.1.3. ロジスティクス支援パッケージ

 ロジスティクス支援パッケージは、システム運用や保守に必要な情報を提供する資料一式です。以下の内容を含みます:

  • トラブルシューティングガイド
  • システム構成図
  • バックアップ・リカバリ手順
  • 定期メンテナンス手順
graph TD;
    A[ロジスティクス支援パッケージ] --> B[トラブルシューティングガイド];
    A --> C[システム構成図];
    A --> D[バックアップ・リカバリ手順];
    A --> E[定期メンテナンス手順];

図1:ロジスティクス支援パッケージの構成図

2.1.4. 利用者用文書

 利用者用文書は、システムの日常的な使用に役立つ資料です。以下が典型的な例です:

  • 操作マニュアル
  • データ入力ガイドライン
  • セキュリティポリシー
  • ビジネスプロセスフロー図
graph TD;
    A[顧客からの注文] --> B[在庫確認];
    B --> C{在庫あり?};
    C -- はい --> D[注文確認書送付];
    C -- いいえ --> E[在庫補充依頼];
    E --> B;
    D --> F[商品の梱包];
    F --> G[配送手配];
    G --> H[配送完了通知];

図2:ビジネスプロセスフロー図の例

2.2. 利用者支援の実施プロセス

  1. ニーズ分析:利用者の現在のスキルやシステム使用におけるニーズを特定
  2. 支援計画の策定:教育訓練方法、スケジュール、必要なリソースを計画
  3. 資料・システムの開発:教育訓練資料やシステムを作成
  4. トレーニングの実施:利用者向けに教育訓練を実行
  5. サポート体制の確立:ヘルプデスクや継続的なサポート体制を整備
  6. 評価とフィードバック:支援効果を評価し、必要に応じて改善
graph TD;
    A[ニーズ分析] --> B[支援計画の策定];
    B --> C[資料・システムの開発];
    C --> D[トレーニングの実施];
    D --> E[サポート体制の確立];
    E --> F[評価とフィードバック];

図3:利用者支援の実施プロセスフローの例

3. 応用例

3.1. 金融機関での新規顧客管理システム導入

 ある銀行が新しい顧客管理システムを導入した際の利用者支援の例を紹介します:

  1. e-Learningシステムを構築し、行員が自分のペースで学習できるようにした。
  2. 部門別に実践的なトレーニングセッションを実施し、業務に即した操作を習得させた。
  3. マニュアルやFAQをイントラネットで提供し、即座に参照できる体制を整えた。
  4. 導入後1ヶ月間、専門サポートデスクを設置し、利用者の問題解決をサポートした。

3.2. 製造業での生産管理システム更新

 製造会社が既存の生産管理システムを更新した際、以下のような利用者支援が行われました:

  1. 旧システムと新システムの違いにフォーカスした比較ガイドを作成。
  2. キーユーザーを育成し、彼らが現場のトレーナーとして機能するようにした。
  3. 操作手順を動画で解説するWeb Based Trainingシステムを導入。
  4. 移行期間中は並行運用を行い、問題発生時に迅速に対応できるサポートチームを配置。

4. 例題

例題1

Q: 「教育訓練システム」の一つであるe-Learningの利点を3つ挙げなさい。

A: e-Learningの主な利点は以下の3つです:

  1. 時間と場所にとらわれず学習できる柔軟性がある。
  2. 多くの利用者に一貫した内容を提供できる。
  3. 学習の進捗を追跡・管理しやすい。

例題2

Q: ロジスティクス支援パッケージに含まれる典型的な内容を4つ挙げなさい。

A: ロジスティクス支援パッケージに含まれる典型的な内容は以下の4つです:

  1. トラブルシューティングガイド
  2. システム構成図
  3. バックアップ・リカバリ手順
  4. 定期メンテナンス手順

例題3

Q: 新システム導入時の利用者支援プロセスを正しい順序で並べなさい。

a) トレーニングの実施
b) 評価とフィードバック
c) ニーズ分析
d) 資料・システムの開発
e) 支援計画の策定

A: 正しい順序は以下の通りです:

  1. c) ニーズ分析
  2. e) 支援計画の策定
  3. d) 資料・システムの開発
  4. a) トレーニングの実施
  5. b) 評価とフィードバック

5. まとめ

 利用者支援は、新システムやソフトウェアの導入を成功させるための重要な要素です。主な構成要素として、教育訓練資料、教育訓練システム(e-Learning、Web Based Training)、ロジスティクス支援パッケージ、利用者用文書があります。

 効果的な利用者支援を行うための重要なポイントは次の通りです:

  1. 利用者のニーズを正確に把握し、適切な支援計画を立てること。
  2. 利用者が異なる学習スタイルに対応できるよう、複数の支援方法を用意すること。
  3. 継続的なサポート体制を確立し、導入後も利用者をサポートすること。
  4. 定期的に支援の効果を評価し、必要に応じて改善すること。

 これにより、システムの導入効果を最大化し、組織全体の生産性向上に寄与します。