2.1.2. 在庫問題

<< 2.1.1. 線形計画法

1. 概要

 在庫管理は企業活動において重要な経営課題の一つです。適切な在庫量を維持することで、顧客への安定的な商品供給と過剰在庫による資金の固定化を防ぐことができます。在庫管理の基本的な考え方として、需要と供給のバランスを取りながら、在庫保有コストと品切れによる機会損失を最小化することが求められます。

 在庫管理の代表的な手法として、定量発注方式と定期発注方式があります。定量発注方式は在庫量が一定の水準(発注点)に達したときに、あらかじめ決められた一定量を発注する方式です。一方、定期発注方式は一定の期間ごとに在庫量を確認し、目標在庫量に達するまでの数量を発注する方式です。これらの方式は、取り扱う商品の特性や需要パターン、調達リードタイムなどを考慮して選択されます。

2. 詳細説明

2.1 在庫管理の基本概念

 在庫管理における重要な概念として、安全在庫、発注点、経済的発注量(EOQ)があります。安全在庫は需要の変動や調達の遅延に備えて保有する在庫量で、サービスレベルと在庫保有コストのトレードオフを考慮して設定されます。発注点は新たに発注を行うタイミングを決める在庫水準で、平均需要量とリードタイム、安全在庫から算出されます。

 経済的発注量(EOQ)は、発注コストと在庫保有コストの合計を最小化する最適な発注量を求める手法です。EOQの計算式は、年間需要量をD、1回あたりの発注コストをS、単位あたりの在庫保有コストをHとすると、EOQ = √(2DS/H)で表されます。

在庫管理の基本概念図

時間 在庫量

発注点

安全在庫

リードタイム

リードタイム

リードタイム

発注 入荷 発注 入荷 発注 入荷

凡例 在庫推移 発注点 安全在庫

2.2 定量発注方式の仕組み

 定量発注方式は、在庫量が発注点に達したときに一定量を発注する方式です。発注点は、リードタイム中の平均需要量に安全在庫を加えた値として設定されます。例えば、1日あたりの平均需要が10個、リードタイムが5日、安全在庫が20個の場合、発注点は10×5+20=70個となります。

 この方式のメリットは、発注業務が定型化され管理が簡単なこと、在庫量の監視が比較的容易なことです。一方、デメリットとして、需要が大きく変動する商品には適さないこと、常に在庫量を監視する必要があることが挙げられます。

2.3 定期発注方式の仕組み

 定期発注方式は、あらかじめ決められた周期(発注間隔)で在庫量を確認し、目標在庫量までの不足分を発注する方式です。発注量は、「発注量 = 目標在庫量 – 現在庫量 – 発注残」の式で計算されます。目標在庫量は、発注間隔とリードタイム期間中の需要量に安全在庫を加えた値として設定されます。

 この方式のメリットは、発注作業が定期的で計画的な業務遂行が可能なこと、複数品目をまとめて発注できることです。デメリットとして、発注間隔が固定されているため急激な需要変動への対応が遅れる可能性があること、在庫量が多くなりがちなことが挙げられます。

3. 実装方法と応用例

3.1 現代の在庫管理システム

 現代の企業では、ERPシステムや専用の在庫管理システムを活用して、リアルタイムでの在庫管理を実現しています。バーコードやRFIDタグを用いた自動認識技術により、入出庫の記録が自動化され、在庫の可視化が進んでいます。また、AIや機械学習を活用した需要予測により、より精度の高い発注点や安全在庫の設定が可能となっています。

graph TB
    subgraph 在庫管理システムの構成
        POS[POSシステム]
        INV[在庫管理システム]
        ORD[発注システム]
        
        POS -->|売上データ| INV
        INV -->|在庫情報| POS
        INV -->|発注依頼| ORD
        ORD -->|発注確認| INV
        
        subgraph 在庫管理システム内部
            DB[(在庫DB)]
            CALC[在庫計算エンジン]
            ALERT[アラート機能]
            
            DB <--> CALC
            CALC --> ALERT
        end
        
        INV <--> DB
        INV <--> CALC
        
        SUPP[サプライヤー]
        ORD -->|発注情報| SUPP
        SUPP -->|納品情報| ORD
    end

発注費用と在庫費用のトレードオフ

発注量 費用

EOQ

凡例 発注費用 在庫費用 総費用

0 Q1 Q2 Q3 Q4

3.2 業界別の応用例

 小売業では、POSデータと連携した自動発注システムが導入されています。コンビニエンスストアでは、商品ごとの売上データ、天候、イベント情報などを考慮して、AIが最適な発注量を提案するシステムが活用されています。

 製造業では、ジャストインタイム(JIT)方式と組み合わせた在庫管理が行われています。部品の在庫を最小限に抑えながら、生産ラインを止めることなく運用するため、サプライヤーとの綿密な連携が重要となります。また、VMI(ベンダー管理在庫)方式により、サプライヤーが顧客の在庫を管理し、適切なタイミングで補充を行う取り組みも広がっています。

ABC分析による在庫分類

A品目 B品目 C品目

20% 20% 60%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

累積売上高(%) 累積品目数(%)

分類基準と管理方法

A品目:売上高70%、品目数20% – 重点管理、在庫を最小限に

B品目:売上高20%、品目数20% – 定期的な管理、適正在庫維持

C品目:売上高10%、品目数60% – 簡易管理、まとめ発注

季節変動パターンと在庫管理

数量

0 50 100 150 200

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

需要変動

発注量

在庫量

※ 春・秋に需要増、夏・冬に需要減の季節変動パターンを示す

4. 例題と解説

例題1:定量発注方式に関する問題

ある商品の1日あたりの平均需要量が50個、リードタイムが3日、安全在庫が100個、経済的発注量が500個である。定量発注方式を採用する場合、発注点として適切な在庫量はどれか。

ア. 150個
イ. 250個
ウ. 350個
エ. 500個

解答:イ

発注点 = リードタイム中の平均需要量 + 安全在庫
    = 50個/日 × 3日 + 100個
    = 150個 + 100個
    = 250個

例題2:定期発注方式に関する問題

定期発注方式で在庫管理を行っている商品がある。発注間隔は7日、リードタイムは2日、1日あたりの平均需要量は20個、安全在庫は50個である。現在の在庫量が100個、発注残が0個のとき、発注すべき数量はどれか。

ア. 130個
イ. 180個
ウ. 230個
エ. 280個

解答:ウ

目標在庫量 = (発注間隔 + リードタイム) × 平均需要量 + 安全在庫
      = (7日 + 2日) × 20個/日 + 50個
      = 9日 × 20個/日 + 50個
      = 180個 + 50個
      = 230個

発注量 = 目標在庫量 – 現在庫量 – 発注残
    = 230個 – 100個 – 0個
    = 130個

定量発注方式と定期発注方式の比較

両方式の特徴、メリット・デメリット、適用場面を比較する表形式の図

比較項目 定量発注方式 定期発注方式
基本的な仕組み 在庫量が発注点に達したときに、あらかじめ決められた一定量を発注 一定の期間ごとに在庫量を確認し、目標在庫量までの不足分を発注
発注タイミング 不定期(在庫量が発注点に達したとき) 定期的(固定された発注間隔)
発注量 固定(経済的発注量など) 変動(目標在庫量 – 現在庫量 – 発注残)
メリット
  • 発注業務が定型化され管理が簡単
  • 在庫量の監視が比較的容易
  • 必要最小限の在庫で運用可能
  • 発注作業が定期的で計画的な業務遂行が可能
  • 複数品目をまとめて発注できる
  • 発注業務の負荷が平準化される
デメリット
  • 需要が大きく変動する商品には不適
  • 常に在庫量を監視する必要がある
  • 発注タイミングが不規則
  • 急激な需要変動への対応が遅れる可能性
  • 在庫量が多くなりがち
  • 在庫保有コストが高くなる傾向
適用場面
  • 需要が比較的安定している商品
  • 単価が高い商品
  • 在庫スペースに制約がある場合
  • 需要変動がある程度予測可能な商品
  • 複数商品を同一仕入先から調達する場合
  • 発注業務の効率化を重視する場合
計算式 発注点 = リードタイム中の平均需要量 + 安全在庫
EOQ = √(2DS/H)
目標在庫量 = (発注間隔 + リードタイム) × 平均需要量 + 安全在庫
発注量 = 目標在庫量 – 現在庫量 – 発注残

5. まとめ

 在庫管理は、顧客サービスレベルの維持と在庫コストの最小化という相反する目標のバランスを取ることが重要です。定量発注方式は管理が簡単で定型化しやすい反面、需要変動への対応に課題があります。定期発注方式は計画的な発注が可能ですが、在庫量が多くなる傾向があります。企業は商品特性、需要パターン、調達条件などを総合的に判断して、適切な発注方式を選択する必要があります。現代では、情報技術の活用により、より精緻な在庫管理が可能となっており、サプライチェーン全体での最適化が進んでいます。

2.1.3. 日程計画 >>

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