2.1.1. ネットワークトポロジ

1. 概要

 ネットワークトポロジとは、コンピュータネットワークにおける物理的または論理的な接続形態を指します。ネットワークの設計、性能、信頼性、拡張性に大きな影響を与える重要な概念です。例えば、企業が効率的な通信やデータの可用性を確保するためには、適切なネットワークトポロジの選定が欠かせません。応用情報処理技術者として、各トポロジの特徴や利点、欠点を理解することは、効率的で信頼性の高いネットワークシステムを構築・運用する上で不可欠です。

2. 詳細説明

2.1. 主要なネットワークトポロジ

2.1.1. ポイントツーポイント(2地点間接続)

 2つのノード間を直接接続する最も基本的なトポロジです。「ピア・ツー・ピア」とも呼ばれ、シンプルな構成が特徴です。

  • 特徴:シンプルで信頼性が高い
  • 適用例:専用線によるオフィス間接続

2.1.2. ツリー型

 階層構造を持ち、一つの親ノードに複数の子ノードが接続される形態です。階層が深くなることで、ネットワークの全体像が複雑になることもありますが、横方向への拡張が容易です。

  • 特徴:拡張性が高く、管理が容易
  • 適用例:企業の組織構造に似た形のネットワーク

2.1.3. バス型

 1本の主要な伝送路(バス)に複数のノードが接続される形態です。ノード同士が同じ伝送路を共有するため、コストが低く、構築が容易です。

  • 特徴:構築が容易、コストが低い
  • 適用例:小規模なオフィスLAN

2.1.4. スター型

 中央の制御機器(ハブやスイッチ)に全てのノードが接続される形態です。個々のノードの障害は全体に影響しないため、管理が容易で、障害の影響を局所化しやすいです。

  • 特徴:管理が容易、障害の影響を局所化しやすい
  • 適用例:一般的なオフィスLAN

2.1.5. リング型

 各ノードが隣接する2つのノードと接続され、全体で輪を形成する形態です。データは一方向または双方向に流れ、トークンリングといったプロトコルでも使用されていました。

  • 特徴:データの送受信が平等、高速な通信が可能
  • 適用例:大規模なネットワーク、光ファイバーリング

2.2. ネットワーク構成図の作成方法

  1. ネットワークの目的と要件を明確にする
  2. 使用する機器やノードを特定する
  3. 適切なトポロジを選択する
  4. 各機器の接続関係を図示する
  5. IPアドレスなどの必要な情報を追記する

2.3. 各構成における信頼性と障害時の動作

  • ポイントツーポイント:障害時に完全に通信不能になるリスクがある
  • ツリー型:上位のノードが障害を起こすと、下位の全ノードに影響が及ぶ
  • バス型:バスに障害が発生すると全体に影響する
  • スター型:中央の制御機器に障害が発生すると全体に影響するが、個々のノードの障害は局所的
  • リング型:1箇所の障害でも迂回路を使用して通信可能だが、複数箇所の障害で全体に影響する

3. 応用例

3.1. 企業ネットワーク

 多くの企業では、スター型とツリー型を組み合わせたハイブリッドトポロジを採用しています。各フロアや部門でスター型を使用し、それらをツリー型で接続することで、管理のしやすさと拡張性を両立しています。これにより、ネットワークの拡張や障害時の対応が容易になります。

3.2. データセンター

 大規模なデータセンターでは、高可用性と高速通信を実現するために、複数のリング型ネットワークを相互接続した構成が使われることがあります。これにより、障害が発生しても通信が途切れないよう冗長性が確保されます。

3.3. 広域ネットワーク(WAN)

 地理的に離れた拠点を接続する場合、ポイントツーポイント接続を基本として、それらを組み合わせたメッシュ型のトポロジが採用されることがあります。これにより、経路の冗長性と高い信頼性を確保しています。例えば、MPLSやSD-WANなどの技術が用いられています。

4. 例題

例題1

問題:以下のネットワークトポロジのうち、中央の制御機器に障害が発生した場合、全てのノードの通信に影響が出るものはどれか。

a) バス型
b) リング型
c) スター型
d) ポイントツーポイント

回答例:c) スター型

解説:スター型トポロジでは、全てのノードが中央の制御機器(ハブやスイッチ)に接続されているため、この制御機器に障害が発生すると、全てのノード間の通信が不可能になります。

例題2

問題:ネットワークの拡張性が高く、新しいノードの追加が容易なトポロジはどれか。

a) リング型
b) ツリー型
c) バス型
d) ポイントツーポイント

回答例:b) ツリー型

解説:ツリー型トポロジは階層構造を持ち、新しいノードや支線を追加することが容易です。これにより、ネットワークの段階的な拡張が可能となり、高い拡張性を実現しています。

5. まとめ

 ネットワークトポロジは、ネットワークの物理的または論理的な接続形態を表す重要な概念です。主要なトポロジとして、ポイントツーポイント、ツリー型、バス型、スター型、リング型があり、それぞれに特徴や適用場面があります。適切なトポロジの選択は、ネットワークの性能、信頼性、拡張性、管理のしやすさに大きく影響します。

 各トポロジの特徴を理解し、ネットワーク構成図を適切に作成できること、さらに各構成における信頼性や障害時の動作の違いを把握していることが重要です。これらの知識は、効率的で信頼性の高いネットワークシステムの設計・構築・運用に不可欠です。また、近年ではソフトウェア定義ネットワーク(SDN)や仮想化技術の進展により、新たなトポロジの採用が進んでいます。これらのトレンドも視野に入れて、常に最新の知識を学び続けることが求められます。