1. 概要
RASISは、システムの信頼性を評価する際に用いられる5つの重要な指標の頭文字を組み合わせた用語です。具体的には、Reliability(信頼性)、Availability(可用性)、Serviceability(保守性)、Integrity(完全性)、Security(安全性)を指します。これらの指標は、システムの品質と性能を包括的に評価するために不可欠であり、特に大規模なシステムや重要なビジネスプロセスを支えるシステムの設計、運用、保守において重要な役割を果たします。
2. 詳細説明
2.1. Reliability(信頼性)
信頼性とは、システムが定められた期間、指定された条件下で、要求される機能を正確に遂行する能力を指します。
指標:
- MTBF(Mean Time Between Failures):平均故障間隔
- MTTF(Mean Time To Failure):平均故障時間
2.2. Availability(可用性)
可用性は、システムが必要なときに正常に稼働している確率を表します。
指標:
- 稼働率 = (総稼働時間 – 総停止時間) / 総稼働時間 × 100%
2.3. Serviceability(保守性)
保守性は、システムの保守や修理の容易さを示す指標です。
指標:
- MTTR(Mean Time To Repair):平均修復時間
2.4. Integrity(完全性)
完全性は、システムのデータや処理が正確で一貫性を保っている度合いを表します。
指標:
- データの一貫性チェック回数
- エラー検出率
2.5. Security(安全性)
安全性は、システムが不正アクセスや攻撃から保護されている度合いを示します。
指標:
- セキュリティインシデントの発生回数
- 脆弱性の検出数と修正時間
3. 応用例
3.1. 銀行システム
銀行のオンラインバンキングシステムでは、RASISの各要素が以下のように適用されます:
- Reliability:24時間365日の安定稼働
- Availability:99.99%以上の高可用性
- Serviceability:迅速なメンテナンス対応
- Integrity:取引データの正確性確保
- Security:厳重な暗号化と認証システム
3.2. 航空管制システム
航空管制システムにおけるRASISの適用:
- Reliability:極めて高い信頼性要求(99.9999%以上)
- Availability:ほぼ100%の可用性
- Serviceability:冗長システムによる無停止メンテナンス
- Integrity:リアルタイムデータの正確性保証
- Security:サイバー攻撃からの強固な防御
4. 例題
問題1
あるシステムの1年間の運用データが以下の通りだった場合、このシステムの年間稼働率を計算せよ。
- 総稼働時間:8760時間(1年間)
- 計画停止時間:24時間
- 障害による停止時間:12時間
回答例:
年間稼働率 = (総稼働時間 – 総停止時間) / 総稼働時間 × 100%
= (8760 – (24 + 12)) / 8760 × 100%
= 8724 / 8760 × 100%
≈ 99.59%
問題2
MTBFが1000時間、MTTRが2時間のシステムの可用性を計算せよ。
回答例:
可用性 = MTBF / (MTBF + MTTR)
= 1000 / (1000 + 2)
≈ 0.998 (99.8%)
5. まとめ
RASISは、システムの総合的な品質と性能を評価するための重要な指標群です。これらの指標を適切に理解し、測定・分析することで、システムの弱点を特定し、改善点を見出すことができます。RASISの各要素を考慮したシステム設計・運用・評価を行うことが、高品質で信頼性の高いシステムを実現する上で不可欠です。
実務においては、これらの指標をバランス良く考慮し、システムの目的や要件に応じて適切に重み付けを行うことが重要です。また、継続的なモニタリングと改善のサイクルを通じて、システムの信頼性と性能を向上させていくことが求められます。