<< 2.1.3. CX(Customer Experience:顧客体験)デザイン
図5:サービスデザインとITシステム開発の統合プロセス
4. 例題と解説
例題1:基本的な理解を問う問題
サービスデザインの6原則のうち、「ホリスティック(全体的)な視点」が意味するものとして最も適切なものはどれか。
- 顧客の感情的な側面に焦点を当てること
- サービスの断片ではなく、関連するすべての要素や環境を包括的に捉えること
- ITシステムの統合性を優先すること
- 短期的な成果よりも長期的な顧客関係を重視すること
解答と解説
【解答】b
【解説】サービスデザインにおける「ホリスティック(全体的)な視点」とは、サービスの一部分だけでなく、サービスに関わるすべての要素(人、モノ、環境、組織、プロセスなど)を包括的に捉えてデザインすることを意味します。これにより、サービスの断片的な最適化ではなく、全体として一貫性のある優れた顧客体験を実現することができます。
例題2:応用的な考え方を問う問題
ある企業がITシステムの刷新を検討している。プロジェクトマネージャーは、サービスデザインの考え方を取り入れ、顧客体験の向上とバックオフィス業務の効率化を同時に実現したいと考えている。次のうち、このプロジェクトの初期段階で最も優先して実施すべき活動はどれか。
- 既存システムの機能要件を洗い出し、新システムに必要な機能を特定する
- 複数のペルソナを作成し、カスタマージャーニーマップで現状の課題を可視化する
- 社内の各部門の業務プロセスを分析し、効率化可能な領域を特定する
- 最新のIT技術トレンドを調査し、導入可能なソリューションを検討する
解答と解説
【解答】b
【解説】サービスデザインでは「人間中心」の原則に基づき、まず顧客体験の理解から始めることが重要です。ペルソナとカスタマージャーニーマップの作成により、現状のサービスにおける顧客の体験や課題点を包括的に把握できます。これにより、真に価値を生み出すITシステムの要件を特定できます。機能要件の洗い出し(選択肢a)や業務プロセスの分析(選択肢c)、技術トレンドの調査(選択肢d)はいずれも重要ですが、顧客ニーズの理解なしに行うと、真の価値創出につながらない可能性があります。特に初期段階では、ホリスティックな視点で顧客体験を理解することが最優先です。
5. まとめ
サービスデザインは単なる見た目や使いやすさのデザインではなく、人間中心設計に基づき、顧客体験を中心に据え、それを実現するための組織や仕組みまでを包括的にデザインするアプローチです。6つの原則(人間中心、共働的、反復的、連続的、リアル、ホリスティック)を基盤とし、ペルソナ、カスタマージャーニーマップ、サービスブループリントなどのツールと参加型デザインの手法を活用して実践されます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈では、技術導入自体が目的ではなく、顧客価値の創出と業務変革を一体的に実現するためのアプローチとしてサービスデザインが重要な役割を果たします。IT技術者にとっては、技術的な実装能力だけでなく、顧客体験とビジネスプロセスを包括的に捉え、サービス全体をデザインする視点が求められています。
応用情報技術者試験では、サービスデザインの基本概念とツールの理解に加え、IT分野における実践方法や、ビジネス価値創出との関連性についても問われる可能性があります。特に、サービス・ドミナント・ロジックや共創の概念を含む最新のサービスデザイン理論の動向も押さえておくことが試験対策のポイントとなります。