2.1.5. IE(Industrial Engineering:経営工学)分析手法

<< 2.1.4. ゲーム理論

1. 概要

 IE(Industrial Engineering:経営工学)分析手法は、作業や生産活動の効率化を科学的に追求するための手法群です。製造業を中心に発展してきたこれらの手法は、作業時間の測定、動作の分析、工程の改善など、様々な観点から業務の最適化を図ります。代表的な手法として、作業時間分析法、PTS(Predetermined Time Standard:既定時間標準)法、ワークサンプリング法などがあり、それぞれ異なる特徴と適用場面を持っています。これらの手法を適切に活用することで、生産性の向上、コストの削減、品質の安定化を実現できます。現代では、製造業だけでなくサービス業やIT業界でも応用され、業務プロセスの改善や標準化に貢献しています。

2. 詳細説明

2.1 作業時間分析法

 作業時間分析法は、実際の作業を観測し、その所要時間を測定・分析する手法です。ストップウォッチを用いて作業者の動作を計測し、標準時間を設定します。この手法では、作業を要素作業に分解し、それぞれの時間を測定することで、作業全体の時間構成を明らかにします。測定結果には、作業者の習熟度や疲労度を考慮したレイティング係数と、休憩時間などを含む余裕率を適用して、標準時間を算出します。

graph TD
    A[作業観測開始] --> B[要素作業への分解]
    B --> C[各要素作業の時間測定]
    C --> D[測定データの収集]
    D --> E{測定回数は十分か?}
    E -->|いいえ| C
    E -->|はい| F[平均時間の算出]
    F --> G[レイティング係数の評価]
    G --> H[正味時間の計算
正味時間 = 観測時間 × レイティング係数] H --> I[余裕率の設定] I --> J[標準時間の算出
標準時間 = 正味時間 × (1 + 余裕率)] J --> K[標準時間の設定完了]

2.2 PTS法(既定時間標準法)

 PTS法は、人間の基本動作を事前に定められた時間値で評価する手法です。代表的なものにMTM(Methods-Time Measurement)法やWF(Work Factor)法があります。MTM法では、「手を伸ばす」「つかむ」「運ぶ」「位置決めする」「放す」などの基本動作を、距離や難易度に応じて時間値が設定されています。この手法の利点は、実際の作業を行わなくても、設計段階で作業時間を予測できることです。また、作業方法の標準化や改善案の評価にも活用できます。

2.3 ワークサンプリング法

 ワークサンプリング法は、作業者の稼働状況を統計的にサンプリング調査する手法です。一定の時間間隔でランダムに観測を行い、作業の種類や状態を記録します。長期間にわたって多数の観測を行うことで、作業の構成比率や稼働率を把握できます。この手法は、複数の作業者や機械を同時に観測でき、連続的な時間測定が困難な場合に有効です。観測回数は、必要な精度と信頼度から統計的に決定されます。

graph TD
    A[負荷時間
100%] --> B[時間稼働率] A --> C[停止ロス] B --> D[稼働時間] C --> C1[故障] C --> C2[段取り・調整] D --> E[性能稼働率] D --> F[性能ロス] E --> G[正味稼働時間] F --> F1[チョコ停] F --> F2[速度低下] G --> H[良品率] G --> I[不良ロス] H --> J[価値稼働時間] I --> I1[不良・手直し] K[設備総合効率_OEE] --> L[時間稼働率_×_性能稼働率_×_良品率] style A fill:#f9f,stroke:#333,stroke-width:2px style K fill:#9f9,stroke:#333,stroke-width:2px style L fill:#9f9,stroke:#333,stroke-width:2px

ワークサンプリング観測記録表の例

観測時刻、作業者ID、作業内容(主作業/段取り/待機/休憩等)、稼働/非稼働の区分を記録する表形式のサンプル

観測番号 観測時刻 作業者ID 作業内容 稼働/非稼働
1 09:15 A-001 主作業 稼働
2 09:45 A-001 段取り 稼働
3 10:20 A-001 主作業 稼働
4 10:50 A-001 休憩 非稼働
5 11:25 A-001 主作業 稼働
6 11:55 A-001 待機 非稼働
7 13:10 A-001 主作業 稼働
8 13:40 A-001 段取り 稼働
9 14:15 A-001 主作業 稼働
10 14:45 A-001 主作業 稼働

3. 実装方法と応用例

3.1 製造業での実装

 製造業では、これらのIE分析手法を組み合わせて活用しています。例えば、新製品の生産ライン設計時には、PTS法を用いて作業時間を予測し、ライン編成を計画します。生産開始後は、作業時間分析法で実際の作業時間を測定し、標準時間の妥当性を検証します。さらに、ワークサンプリング法で設備や作業者の稼働率を定期的に調査し、ボトルネック工程の発見や改善機会の特定を行います。

サーブリックの18種類の基本動作要素

番号 記号 基本動作 説明
1 Sh 探す (Search) 目的物を目で探す動作
2 St 選ぶ (Select) 複数の中から必要なものを選択する動作
3 G つかむ (Grasp) 手で物をつかむ動作
4 TL 運ぶ (Transport Loaded) 物を持って移動する動作
5 H 保持する (Hold) 物を一定位置に保持する動作
6 RL 放す (Release Load) つかんでいた物を放す動作
7 P 位置決めする (Position) 物を正確な位置に合わせる動作
8 A 組み立てる (Assemble) 部品を組み合わせる動作
9 U 使う (Use) 工具や機械を使用する動作
10 DA 分解する (Disassemble) 組み立てられたものを分解する動作
11 I 検査する (Inspect) 品質や状態を確認する動作
12 PP 予備動作 (Pre-position) 次の動作のための準備動作
13 UD 不可避な遅れ (Unavoidable Delay) 作業上避けられない待ち時間
14 AD 避けられる遅れ (Avoidable Delay) 改善により削減可能な待ち時間
15 Pn 計画する (Plan) 次の作業を考える動作
16 R 休む (Rest) 疲労回復のための休憩
17 TE 空運搬 (Transport Empty) 何も持たずに移動する動作
18 Bd 平衡失調 (Balancing Delay) ライン作業での待ち時間

3.2 サービス業・IT業界での応用

 近年では、サービス業やIT業界でもIE分析手法が応用されています。コールセンターでは、ワークサンプリング法を用いてオペレーターの稼働状況を分析し、適切な人員配置を実現しています。ソフトウェア開発においては、作業時間分析法の考え方を応用し、開発タスクの工数見積もりや生産性測定に活用されています。また、物流センターでは、PTS法を基にしたピッキング作業の標準化と効率化が進められています。

標準時間算出の概念図

観測時間 48秒

正味時間 52.8秒

標準時間 60.7秒

レイティング適用 ×110%

余裕率適用 ×(1+15%)

計算式: 1. 正味時間 = 観測時間 × レイティング係数 = 48秒 × 1.10 = 52.8秒 2. 標準時間 = 正味時間 × (1 + 余裕率) = 52.8秒 × 1.15 = 60.72秒 ≈ 60.7秒

ガントチャートによる作業スケジューリング例

工程A 工程B 工程C 工程D 工程E 工程F

0 2 4 6 8 10 12 時間(時)

3.0h

4.0h

2.0h

3.0h

5.0h

2.0h

標準時間: 工程A: 3.0h 工程B: 4.0h 工程C: 2.0h 工程D: 3.0h 工程E: 5.0h 工程F: 2.0h

4. 例題と解説

問題
 ある製造ラインで、作業者Aの組立作業を10回測定したところ、平均作業時間が48秒でした。作業者Aのレイティング係数を110%、余裕率を15%とした場合、この作業の標準時間はいくらになりますか。

選択肢

  • ア:52.8秒
  • イ:55.2秒
  • ウ:57.6秒
  • エ:60.7秒

解説
 標準時間の計算は以下の手順で行います。

  1. 正味時間 = 観測時間 × レイティング係数

正味時間 = 48秒 × 1.10 = 52.8秒

  1. 標準時間 = 正味時間 × (1 + 余裕率)

標準時間 = 52.8秒 × (1 + 0.15) = 52.8秒 × 1.15 = 60.72秒

 したがって、正解はエ:60.7秒です。

標準時間算出の概念図

観測時間 48秒

正味時間 52.8秒

標準時間 60.7秒

レイティング適用 ×110%

余裕率適用 ×(1+15%)

計算式: 1. 正味時間 = 観測時間 × レイティング係数 = 48秒 × 1.10 = 52.8秒 2. 標準時間 = 正味時間 × (1 + 余裕率) = 52.8秒 × 1.15 = 60.72秒 ≈ 60.7秒

(標準時間算出の概念図の再掲)

 この問題では、作業時間分析法における標準時間の算出方法を理解しているかが問われています。レイティング係数は標準的な作業者を100%とした場合の評価値で、110%は標準より10%速い作業者を意味します。余裕率は、疲労回復や用達などに必要な時間の割合を示しています。

5. まとめ

 IE分析手法は、業務の効率化と標準化を実現するための重要なツールです。作業時間分析法は実測に基づく正確な時間把握、PTS法は設計段階での時間予測、ワークサンプリング法は全体的な稼働状況の把握にそれぞれ優れています。これらの手法を適切に選択・組み合わせることで、様々な業種・業態において生産性向上を実現できます。応用情報技術者試験では、各手法の特徴と適用場面を理解し、標準時間の算出方法などの実践的な知識も身につけることが重要です。

2.1.6. 検査手法 >>

ご利用上のご注意

 このコンテンツの一部は、生成AIによるコンテンツ自動生成・投稿システムをもちいて作成し、人間がチェックをおこなった上で公開しています。チェックは十分に実施していますが、誤謬・誤解などが含まれる場合が想定されます。お気づきの点がございましたらご連絡いただけましたら幸甚です。