3.3. バスの制御方式

1. 概要

 コンピュータシステムにおいて、バスは複数の装置間でデータを転送するための共有通信路です。しかし、複数の装置が同時にバスを使用しようとすると競合が発生します。この問題を解決するために、バスの制御方式が重要な役割を果たします。

 バスの制御方式は、どの装置がバスを使用するかを決定し、データ転送を円滑に行うための仕組みです。この制御方式を理解することは、コンピュータシステムの効率的な動作を把握する上で非常に重要です。

2. 詳細説明

2.1. バスアービタ

 バスアービタは、複数の装置からのバス使用要求を調整し、バスの使用権を付与する役割を持つハードウェアまたはソフトウェアコンポーネントです。バスアービタは以下の主な機能を持ちます:

  1. バス要求の受け付け
  2. 優先順位の決定
  3. バス使用権の割り当て

2.2. バスマスター

 バスマスターは、バス上でデータ転送を開始し制御する能力を持つ装置です。典型的なバスマスターには以下のようなものがあります:

  1. CPU
  2. DMA(Direct Memory Access)コントローラ
  3. 高性能なI/Oデバイス

2.3. 制御方式の種類

2.3.1. 集中制御方式

 集中制御方式は、単一のバスアービタがすべてのバス要求を管理し、使用権を割り当てる方式です。この方式の特徴は以下の通りです:

  • 簡単な実装
  • 全体の制御が容易
  • 単一障害点のリスク

2.3.2. 割込み方式

 割込み方式は、デバイスがCPUに対して割り込み信号を送ることでバス使用を要求する方式です。主な特徴は以下の通りです:

  • リアルタイム性が高い
  • CPU負荷が比較的低い
  • 優先順位の設定が可能

2.3.3. ポーリング方式

 ポーリング方式は、CPUが定期的に各デバイスの状態を確認し、バス使用の必要性を判断する方式です。以下のような特徴があります:

  • 実装が簡単
  • デバイスの優先順位を柔軟に変更可能
  • CPU負荷が高くなる可能性がある

3. 応用例

 バスの制御方式は、様々な場面で応用されています。以下にいくつかの例を挙げます:

  1. パーソナルコンピュータ:
    PCIバスやUSBバスなどで、複数のデバイス間の通信を制御します。
  2. スマートフォン:
    内部バスを使用して、CPUとメモリ、カメラモジュール、ディスプレイなどのコンポーネント間のデータ転送を管理します。
  3. 自動車のECU(Electronic Control Unit):
    CAN(Controller Area Network)バスなどを使用して、エンジン制御、ブレーキ制御、エアバッグシステムなどの通信を制御します。
  4. 産業用制御システム:
    PLCバス(Programmable Logic Controller Bus)を使用して、センサーやアクチュエータとの通信を管理します。

4. 例題

例題1

Q: バスアービタの主な役割は何ですか?

A: バスアービタの主な役割は以下の通りです:

  1. 複数の装置からのバス使用要求を受け付ける
  2. バス使用の優先順位を決定する
  3. バスの使用権を適切な装置に割り当てる

例題2

Q: 次のうち、典型的なバスマスターではないものはどれですか?

a) CPU
b) DMAコントローラ
c) メインメモリ
d) 高性能なI/Oデバイス

A: 正解は c) メインメモリ です。
メインメモリは通常、バスマスターではなく、バススレーブとして機能します。CPUやDMAコントローラからの読み書き要求に応じてデータを提供しますが、自らバス上でデータ転送を開始することはありません。

例題3

Q: ポーリング方式の長所と短所を1つずつ挙げてください。

A:
長所:デバイスの優先順位を柔軟に変更可能
短所:CPU負荷が高くなる可能性がある

5. まとめ

 バスの制御方式は、コンピュータシステムにおいて複数の装置がバスを共有する際に、効率的にデータ転送を行うための重要な仕組みです。主な制御方式には、集中制御方式、割込み方式、ポーリング方式があり、それぞれに長所と短所があります。

 バスアービタはバスの使用権を管理し、バスマスターはデータ転送を主導します。これらの概念を理解し、適切な制御方式を選択することで、システム全体のパフォーマンスと信頼性を向上させることができます。