4.1. 伝送路

1. 伝送路とは

 伝送路は、データ通信において重要な役割を果たす概念であり、データが送信元から受信先までどのように伝送されるかを決定します。現代の情報社会では、インターネットや電話、テレビなど、さまざまなメディアでデータが伝送されています。これらのメディアはすべて、データを効果的に送受信するために適切な伝送路を必要とします。伝送路には、有線や無線などの物理的な媒体や、これをサポートするプロトコルなどが含まれ、信号の劣化やノイズなどの課題に対処するための工夫がなされています。

2. 詳細説明

 伝送路には、主に以下の3つのモードがあります。

  1. 単方向 (Simplex):
  • 単方向の伝送路は、一方通行でデータを送信する方式です。送信者がデータを送り、受信者はそれを受け取るだけで、逆方向の通信は行われません。例としては、テレビ放送やラジオ放送が挙げられます。受信者は送られてきた信号を受信するのみで、送信者に対して応答することはありません。
  1. 半二重 (Half-Duplex):
  • 半二重の伝送路では、データは双方向に送信可能ですが、同時には行えません。つまり、送信と受信は交互に行われ、片方が送信している間は、もう片方は受信のみが可能です。トランシーバーや無線機の通信などがこれに該当します。半二重モードでは、通信の同期と衝突回避のためにプロトコルが使用されることが一般的です。
  1. 全二重 (Full-Duplex):
  • 全二重の伝送路では、データの送信と受信が同時に行われます。電話の通話やインターネット接続がその代表例です。これにより、リアルタイムでの双方向通信が可能となり、効率的なデータ交換が実現します。全二重モードでは、送信と受信が同時に可能であるため、高速でスムーズな通信が行えます。

3. 応用例

 伝送路の各モードは、さまざまな業界や技術に応用されています。

  • 単方向通信:
  • テレビ放送やラジオ放送では、情報は送信者から一方的に視聴者や聴取者に届けられます。送信者は大量のデータを一度に広範囲に送信できるため、多くの人々に情報を一斉に伝えることが可能です。
  • 半二重通信:
  • トランシーバーは、工事現場や軍事通信などで多く利用されています。あるユーザーが話すと、他のユーザーは聞くだけとなり、双方が交互に通信を行います。これにより、チームメンバー間で迅速な情報交換が可能です。
  • 全二重通信:
  • インターネット通話やビデオ会議では、全二重通信が不可欠です。これにより、同時に話したり、ファイルを送受信したりすることが可能となり、効率的なコミュニケーションが実現します。

4. 練習問題

問題 1:

 単方向、半二重、全二重の違いを説明し、それぞれのモードが適している応用例を挙げてください。

回答例 1:

単方向は一方通行の通信で、テレビ放送に適しています。半二重は交互に通信を行うモードで、トランシーバーに適しています。全二重は同時に送受信が可能なモードで、電話通話に適しています。


問題 2:

 あるプロジェクトで、チームメンバーがトランシーバーを使用してコミュニケーションを行う必要があります。この場合、どの伝送路モードが使用され、なぜそれが適しているのかを説明してください。

回答例 2:

半二重モードが使用されます。トランシーバーは交互に送信と受信を行うため、半二重モードが適しています。

5. まとめ

 伝送路は、データ通信における重要な要素であり、データがどのように伝送されるかに影響を与えます。単方向、半二重、全二重の各モードは、それぞれ異なる用途に適しており、適切に選択することで、効率的な通信が可能となります。これらの概念を理解することで、情報技術の基盤となる通信の仕組みをより深く理解することができます。